屋台やキッチンカーなどで見かけることの多いケバブとは、どんな意味で何の肉が使われているのか気になる方も多いだろう。どんな料理のことをケバブと呼ぶのかといった基礎知識から、豚肉を使わない理由やケバブの種類、歴史の話しなども解説していく。
1. ケバブとはトルコ料理のひとつ
ドネルケバブやシシケバブなどさまざまな種類があるケバブは、フランス料理や中華料理と並び「世界三大料理」といわれるトルコ料理のひとつだ。中近東全般をはじめ、アメリカやヨーロッパ、日本でも多くの人に食されている。どんな料理なのか解説しよう。
ケバブは焼肉料理の総称
ケバブとは焼いた肉料理の総称であり「ケバブ」という食材があるわけではない。トルコ料理であることからも分かるように、語源はトルコ語である。
巨大な肉塊の正体は?
ケバブといえば、店先でゆっくり回転している巨大な肉塊の印象が強いだろう。動物1頭を丸ごと焼いているのでは?と思った方も多いのではないだろうか。だが実はそうではない。あの肉塊は、味付けされた薄切り肉を重ねて作られているものである。
なお詳しくは後述するが、串に刺して炙り焼きにするだけがケバブではない。種類がたくさんあり、何肉で作っても美味といわれている。どの肉がよいか選べない方は、いろいろな肉が混ざった「ミックスケバブ」を食べてみるものよいだろう。
2. ケバブに使われるのは何肉?
「何肉で作っても美味」とお伝えしたが、実際のところケバブには何の肉が使われているのだろうか?もともとはラム肉を使った料理のことをケバブと呼んでいたようだが、時代の流れとともに変わってきたようだ。
現在ではいろいろな肉が使われている
ケバブを提供している飲食店のメニューをチェックすると、鶏肉を使用したチキンシシケバブや、鶏肉・ラム肉・牛肉の3種類の肉を一度に楽しめるミックスケバブなどがある。ほかの店を調べてみると、ラムひき肉&ビーフひき肉をあわせたクビデケバブ、鶏肉を串焼きにしたジュージェケバブ、子羊のヒレ肉を味わうチェンジェケバブなどが提供されている。
このことから、ケバブには鶏肉・羊肉・牛肉などいろいろな肉が使われていることが分かる。ただし豚肉を使ったケバブだけは見当たらない。
豚肉がNGなのは宗教上の理由から
ケバブの本場トルコには、イスラム教徒の方々が数多く暮らしているが、そのイスラム教では豚肉を食すことが禁じられている。豚肉を食べることは不浄(清浄ではない、けがれているといった意味)であると教えられているのだ。そのため、ケバブでは豚肉が使われない。日本の飲食店でも、豚肉のケバブを提供しているところはめずらしいようだ。とはいえ、もちろん自分でケバブを作るときはお好みの肉を使ってかまわない。
3. ケバブの種類
続いて、ケバブの種類について学んでいこう。お伝えしたようにケバブとは焼肉料理の総称で、本場のトルコはもちろん日本でもさまざまな肉で調理されている。串に刺して焼く以外に、煮込んだり揚げたりする料理もケバブと呼ぶことがある。改めてケバブの種類を紹介しよう。
シシケバブ
シシケバブの「シシ」は串を意味する。したがって、串に刺して焼く肉料理のことをシシケバブという。スパイス・オイル・ハーブでマリネした肉を串刺しにし、炭火でじっくり焼いていくという、ケバブの典型的な調理方法で作られる。
ドネルケバブ
ドネルは「回転」を意味する。すなわちドネルケバブは、スライスした肉をヨーグルトや香辛料で下味をつけてから積み重ねて塊にし、中心に刺した串を軸にして回転させながら焼くというものだ。
イスケンデルケバブ
ドネルケバブをひと口サイズに切り、ヨーグルトとトマトソースを添えたひと品をイスケンデルケバブという。ピデと呼ばれる薄焼きのパンにのせるという食べ方もある。
パトゥルジャンケバブ
「パトゥルジャン」はトルコ語でナスの意味であり、夏から秋にかけての時期が旬である。ナスをやや太めの輪切りにし、スパイシーな味付けした肉団子と交互に串に刺して焼く。ナスをくり抜き、肉詰めにして食べる方法もあるようだ。
4. ケバブの歴史を学ぶ
最後に、ケバブの歴史についても知っておこう。トルコ人はもともと遊牧民であったため羊やヤギを食しており、次第に串に刺して食べるシシケバブに発展したというのが通説だ。ドネルケバブを焼く回転型の焼き器は、トルコの小アジアともいわれるアナトリアでは伝統的な器具である。
そのドネルケバブが考案された歴史を振り返ってみよう。1930年代後半、トルコの都市でありカスタモヌ県の県都であるカスタモヌで、薄くスライスした肉を積み重ねて串に巻き、焼いて食べたのが始まりという説がある。もともとケバブに使用されていた肉はラムやマトンだったが、少しずつ子牛・七面鳥・牛肉・鶏肉が使われるようになったという。
さらに、ドネルケバブと野菜をピタパンにサンドして食べるケバブサンドも、世界中に知れ渡り現在に至っている。日本でもかなり以前から流行しているが、ケバブはそれよりも遥かに長い歴史を積み重ねてきた食べ物といえよう。
結論
ケバブとは焼肉料理の総称である。原則として豚肉は使われないが、それは宗教上の理由でありご家庭で作る際などは好きな肉でケバブを楽しんでかまわない。いろいろな肉をひとつずつ試すもよし、ミックスさせて楽しむもよしと、アイデア次第でいろいろな楽しみ方ができるのもケバブが愛される理由のひとつだろう。