みずみずしい緑が目にもまぶしい笹巻き。島根県の出雲地方に伝わる笹巻きは、月遅れの端午の節句のために作られてきた郷土料理である。また、近年ではこの郷土食を食育のために活用する動きも出ている。島根県が誇る笹巻きについて、今回は詳細をみてみよう。
1. 島根県の笹巻きの歴史
鮮やかな緑が初夏の喜びを伝えてくれる笹巻き。島根県の出雲地方では古くから愛されてきた郷土料理である。家族の絆の象徴でもあった笹巻きについて、その歴史や由来をさぐってみよう。
熊笹の殺菌力にちなんで
笹巻きは、実は日本各地にある食文化である。その理由のひとつに、熊笹の殺菌作用があげられる。切り傷などの治療にも用いられた熊笹を使用する笹巻きは、島根県では子どもたちの健康と長寿を祝うまじないとなったわけである。
旧暦の端午の節句に祝いとして食べるだけではなく、田植え作業中のひとやすみ、また田植えが終わったあとの宴にも登場する郷土料理であった。さらに、暦の上では半夏となる7月2日は農休日であり、この日にも笹巻きを食べる風習がある。
雲南市の給食センターでは、6月になると山へ熊笹を採りに繰り出す。その笹で笹巻きを作り、子どもたちに郷土の味を提供するのである。
2. 笹巻きのカロリーは?
笹巻きは、非常にシンプルな材料を使って作られている。大きさや食べるときにどんな味付けをするかで異なるが、笹巻きを50gと想定するとカロリーはおよそ80kcal弱となる。つまり、カロリーはそれほど低いとはいえないだろう。
しかし、縁起物として食べる笹巻きであるから、家族で集う機会に美味しく食べたいものである。笹巻きは冷凍保存も可能であり、食べる際にはお湯で茹でれば餅の柔らかさが戻る。小腹が空いたときや、子どもたちのおやつにも最適といったところだろう。
3. 笹巻きの食習
島根県の出雲地方では、端午の節句を月遅れで祝う。この祝いに欠かせなかったのが、笹巻きなのである。
伝統的に、父親が粉をこね、長子がだんごを作り、母や祖母がハカマをはかせるという手順で作られてきた。一家総出の作業となる笹巻き作りは、こうしてそれぞれの家庭の味や技が次の世代に伝承されてきたのである。娯楽が少なかった時代、家族で行う笹巻き作りは楽しい行事として出雲地方の初夏を彩ってきた。
4. 笹巻きの作り方
笹巻きと聞いても、それを包む熊笹は想像できても中身までは思いつかない人も多いのではないだろうか。
笹巻きの作り方を紹介する。
笹巻きの作り方
それでは、伝統的に出雲ではどのように笹巻きが作られてきたのであろうか。
材料となるのは、もち米粉、うるち米粉、砂糖、しょうゆ、そして包む笹や紐となるイグサである。もち米粉とうるち米粉の割合は、各家庭で独自のレシピがある。
笹巻きは、中のだんごよりも笹の巻き方に技術を要する。中身のだんごは、もち米粉とうるち米粉をぬるま湯で混ぜ、笹の葉にくっついてしまわないように時間をかけてよくこねる。
できあがっただんごに芯棒となる熊笹の軸をさし、笹でだんごを左右からくるんでいく。これを5個ずつ束ねて、茹でるのである。茹でる際に水分がだんごに触れないように巻くには、経験が必要となる。
笹の香りを生かすには、砂糖醤油やきな粉が理想的である。最近では、バターやチーズとともに食べるのも話題になっている。
5. 笹巻きの食ベ方
笹巻きは、笹にくるまれただんごである。茹でる時に内部に水が入らないようにくるむ工夫が施されている。このだんごは、当然のことながら笹の香りが漂う風雅なものである。
茹でた後は、このだんごに砂糖醤油やはちみつ醤油、きな粉をつけて食べるのである。
また、笹野殺菌力を活かした保存食の役割もあったという。出雲市では美しい笹の緑、その香り、だんごの柔らかさと味わい、笹のかさかさという音など、五感で愉しめる郷土料理とうたっている。
結論
島根県の出雲に伝わる郷土料理笹巻きは、伝統的に家族総出で作る。そのため、各々の家庭の味が自然な形で伝承されてきた。殺菌作用があるとされる熊笹に包まれた笹巻きは、端午の節句の風物詩でもある。素朴ながら懐かしい味わいは、時期になると日本全国から注文が殺到する人気を誇るのである。ぜひ、家族で集う機会に美味しく食べてほしい。(写真出展)
農林水産省 うちの郷土料理 笹巻き
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