白カブとは異なり、外皮が鮮やかな赤色・赤紫色をしている赤カブ。色味が鮮やかであることから、漬物やサラダなどにして食べられることが多い。今回はそんな赤カブの基本・品種・栄養素などを解説する。また、選び方のポイントや美味しい使い道などについても詳しく紹介する。
1. 赤カブとは?
赤カブ(赤紫カブ/紅カブ)とは、アブラナ科アブラナ属の植物であるカブの一種である。白カブといわれる外皮が白色をしているカブと異なり、外皮が赤色であることが特徴。また、品種によっては果肉が赤色のものがある。形には球形・扁球形が多いが、円錐形や勾玉状のものがある。品種により味わいは異なるが、基本的にはみずみずしくて、シャキシャキとした食感を楽しむことができる。
赤カブの旬と収穫時期
赤カブの旬(収穫時期)は、一般的に10~12月頃となっている。外皮が白色をしている白カブの場合は1年に二回、「春頃(3~5月頃)」と「秋頃(10~12月頃)」に収穫される。一方、赤カブは8~9月頃に種まきをして、10~12月頃に収穫・出荷をすることが多くなっている。赤カブは品種にもよるが、通常は種まきから60~70日程度で収穫時期を迎えるようだ。
赤カブの主な種類
日本には在来種や品種改良された赤カブが数多くある。主な赤カブには以下のようなものがある。
- 大野紅カブ(北海道):扁球形で直径10cmほど。外皮と葉柄は濃い赤色をしている
- 万木カブ(滋賀県):球形で直径10cmほど。鮮やかな赤紫色で、果肉も少し赤みがある
- 長崎赤カブ(長崎県):扁球形で直径10cmほど。根の上部は赤紫色で下部は白色をしている
- 飛騨紅カブ(岐阜県):扁球形で直径12 cm~14 cm。外皮は赤色で、果肉は白色である
- 河内赤カブ(福井県):扁球形で直径8cm程度。外皮は赤色で、果肉にも朱色が入っている
- 温海カブ(山形県):扁球形で直径10cmほど。外皮は赤紫色で、果肉は白色をしている
ビーツやラディッシュとの違い
形や色味が似ていることから、ビーツ(ビート)やラディッシュも「赤カブ」と間違われることがある。しかし、ビーツはヒユ科の植物であり、赤カブとは異なる。また、ラディッシュはアブラナ科の植物であるがダイコンの仲間であり、こちらも赤カブとは異なる野菜となっている。
2. 赤カブの主な栄養素と機能性成分
文部科学省の「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」には赤カブの栄養価は収録されていない(※1)。しかし一般的には、白カブと同じようにビタミンC・葉酸・カリウム・食物繊維などを多く含んでいるとされている(※2)。また、カブにはデンプン消化酵素である「ジアスターゼ(アミラーゼ)」を含んでおり、赤カブはポリフェノールの一種である「アントシアニン」も含んでいる。
消化酵素「ジアスターゼ」を含む
カブはデンプン消化酵素である「ジアスターゼ(アミラーゼ)」を含んでいる(※2)。ジアスターゼは熱に弱いため、加熱調理すると働きが悪くなってしまうという。そのため、ジアスターゼを効率よく摂るなら、サラダやすりおろしなど生のままたべるのがよい。生のまま食べることでデンプン(炭水化物)の消化・吸収を効率よく行うことができる。
辛味成分「イソチオシアネート」を含む
赤カブのようなアブラナ科の植物は、辛味成分である「イソチオシアネート」を含む。イソチオシアネートは、アブラナ科の植物の組織が壊れることで生成される。要するに赤カブをすりおろしたりして、ドレッシングなどに混ぜると多く摂ることができる。近年はイソチオシアネートに含まれる機能性に注目が集まっているようだ(※3)。
天然色素「アントシアニン」を含む
赤カブの色味は、ポリフェノールの一種であり天然色素の一種である「アントシアニン」によるものだ。アントシアニンは体内の活性酸素の働きを抑えたり、取り除いたりする「抗酸化物質」として知られている(※4)。なお、水溶性の成分なので、水に長くつけると流出してしまう可能性がある。
3. 美味しい赤カブの見分け方
赤カブは外皮こそ赤色・赤紫色をしているが、基本的な選び方は白カブのときと同じだ。以下に紹介している色味・形・重み・葉の状態などを確認して、新鮮で美味しい赤カブを選ぶようにしよう。なお、傷があるものや色味が悪いものは鮮度が落ちている可能性があるので避けるほうがよい。
- 色味:鮮やかな赤色・赤紫色をしている
- 形:球形の品種はキレイな丸みがある
- 重み:持ったときに見た目以上の重みがある
- 葉:鮮やかな緑色で、みずみずしさがある
4. 赤カブの美味しい食べ方3選
赤カブは鮮やかな色味とシャキシャキとした歯ごたえが特徴であり、その特徴を活かして漬物やサラダなどに使われることが多い。一方、煮物などに使うと、色味が煮汁に移ってしまい見た目が悪くなる。美味しい赤カブを手に入れたら、以下のような方法で美味しく調理するとよいだろう。
食べ方1.赤カブのお漬物
赤カブは浅漬け・甘酢漬け・ぬか漬けなど漬物にするのが最も一般的である。漬け込むことによって果肉の中まで鮮やかな紅色に染まり、彩りがいっそうよくなる。キレイに洗った赤カブを皮ごとイチョウ切りに薄くスライスしてから、お好みの方法で漬けるようにしよう。
食べ方2.赤カブのサラダ
赤カブは生のままサラダにするのもおすすめだ。シンプルな作り方は水菜などの葉野菜と一緒に和えるというものだが、カルパッチョ風のサラダにしても美味しい。赤カブのみずみずしさとほんのりとした甘みが美味しいだけでなく、赤カブに含まれる栄養素・成分を逃がさずに摂ることができる。
食べ方3.赤カブのドレッシング
赤カブをすりおろしてドレッシングとして使うのもよい。すりおろした赤カブ・オリーブオイル・砂糖・塩などと合わせれば簡単に作ることができる。また、トマトも一緒にすりつぶすと、より鮮やかなピンク色のドレッシングが完成する。お好みでグリーンサラダなどにかけて食べるようにしよう。
5. 赤カブの美味しい保存方法
赤カブは、葉の部分と根の部分を別々に保存するのが基本だ。葉が付いたまま保存してしまうと、歯から水分が抜けてしまう。また、保存する際は乾燥を防ぐためにそれぞれラップなどに包むとよい。野菜室で保管すれば根の部分は5日程度、葉の部分は2日程度保存することが可能だ。
結論
白カブと異なり色味がキレイな赤カブは、漬物やサラダなどにするのがおすすめだ。また、このように火を通さない食べ方なら、赤カブに含まれる栄養素・成分を逃がさずに済む。特に冬の時期に多く流通するため、寒い季節にスーパーや八百屋などで見つけたら購入してみよう。【参考文献】
- ※1:文部科学省「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」 https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/1365419.htm
- ※2:JAグループ「春・冬の旬野菜カブ」 https://life.ja-group.jp/food/shun/detail?id=35
- ※3:環境変異原研究「イソチオシアネートによるがん予防の可能性」 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jems/26/3/26_3_253/_pdf/-char/ja
- ※4:厚生労働省e-ヘルスネット「抗酸化物質」 https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-009.html