竹の皮に包まれたちまきのようなお菓子「あくまき」は、鹿児島の郷土料理である。全国的な知名度は低いが、鹿児島では端午の節句に欠かせない食べ物だという。あくまきとはどのような食べ物なのか徹底解説していく。
1. あくまきの特徴、歴史や由来
あくまきの竹の皮をむくと中に入っているのは、半透明で茶色い餅のようなものである。しかし、餅よりも粘り気は少ない。このあくまきの正体はもち米で、漢字で書くと「灰汁巻き」となる。木や竹を燃やした灰の灰汁でもち米を炊いて作るため、このような名前がついたのだ。
薩摩藩から伝わる保存食
灰汁でもち米を炊くという変わった調理法のあくまきだが、灰汁で炊くと、アルカリ性物質の働きによってもち米が柔らかくなり雑菌の繁殖も防ぐことができる。あくまきの誕生説については、薩摩藩の島津義弘が関ヶ原の戦いの際に日持ちする食糧として持参したというのが有力だ。高温多湿な鹿児島県でも腐りにくく腹持ちのよい保存食として重宝されてきたのである。
2. あくまきの主な使用食材、カロリー、栄養
あくまきはもち米のみから作られ、砂糖などの調味料も使用されていない。あくまき自体は無味で、食べるときに好みの味付けをするのだ。
1本あたり約400kcal
あくまきは、平たい棒のような形状であることが多い。1本(300g)あたりのカロリーは396kcalであり、1人前(100g)あたりでは132kcalである。
炭水化物が多い
あくまきの材料はもち米のみのため、栄養素に関しては炭水化物が圧倒的に多い。1本(300g)あたりに含まれる栄養素は、たんぱく質が6.9g、脂質が5.4gであるのに対し炭水化物が77.1g、そのうち糖質量は76.5gとなっている。糖質制限中の人は食べ過ぎ厳禁な食べ物だ。ちなみにビタミン・ミネラル類ではカリウムが多く、これは灰汁由来の成分と考えられる。
3. あくまきの食習の機会や時季
あくまきは、鹿児島県ならではの歴史ある餅菓子だが、この歴史が現在の食習にも結びついている。
端午の節句で食べられる
西郷隆盛も愛食されたといわれ、薩摩藩における戦陣食として歴史を重ねてきたあくまきは、現在は端午の節句(5月5日)に男子が強くたくましく育つよう願うために欠かせないお菓子として位置付けられている。4月中旬頃より鹿児島県内の和菓子屋をはじめスーパーや土産物屋にあくまきが並ぶようになるほか、もち米や灰汁、竹皮などの材料も売り出される。
土産物として
主に端午の節句で用いられるあくまきは、鹿児島名物の土産品としても取り扱われている。あくまきが最も多く出回るのは4月中旬から5月5日にかけてだが、土産物屋など一年中購入することのできる店もある。
4. 本場のあくまきの作り方
鹿児島県ではもち米だけでなく灰汁や竹の皮が販売されているため、気軽にあく巻きを作ることができる。基本的な作り方は次の通りだ。もち米を灰汁に一晩浸ける。ざるにあげて水をきったもち米を竹の皮に詰めて袋状に包んで縛る。水で薄めた灰汁で3時間以上煮込む。3時間ほど煮込むんでもち米の粒がべっこう色に変わり艶が出てきたら完成だ。灰汁から取り出して粗熱を取っておこう。
5. あくまきの基本の食べ方、アレンジした食べ方
あくまきには味がついていないため、自分で好みの味付けをして食べる。竹の皮を剥がして包丁で食べやすい大きさに切り分け、皿に盛ってから味付けをしよう。
基本の食べ方
一般的には、きなこや黒糖、白砂糖などをまぶして食べる。また、黒蜜や蜂蜜、砂糖しょうゆなどをかけることもある。
アレンジした食べ方
わさびじょうゆや大根おろしなどをかけて、甘くないあくまきを楽しむ人もいる。また、ココアパウダーをかけてチョコ味にする人も。あくまき自体が無味のため味付けにはかなりのバリエーションがありそうだ。さらに、焼く・天ぷらにするなどの変わった食べ方も。端午の節句で用意したあくまきが余ったら、さまざまなアレンジを加えても楽しい。(写真出展)
農林水産省 うちの郷土料理 あくまき
https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/akumaki_kagoshima.html
結論
あくまきは変わった作り方の食べ物で、郷土料理としてもあまり有名ではない。しかし、保存食の役割ももつなど鹿児島の人の知恵が詰まった歴史ある餅菓子だ。端午の節句では、いつもの柏餅やちまきに加えて、あくまきを試してみるのもよいかもしれない。