普段あまり口にすることがない、コース仕立ての豪華な料理。出て来る順番や細かいマナーなど、自由に注文する料理とは趣が異なる。冠婚葬祭などで出される格式高い料理もフルコースが多く、季節によってはいただく機会が増えることになる。和洋それぞれの順番やマナーを知って、スマートにいただけるようになろう。
1. 和食なら「懐石」か「会席」
和食のコース料理といえば「かいせき」料理だ。漢字で書くと「懐石」と「会席」があり、実はそれぞれ意味と出される料理の種類、順番が違う。
懐石は茶道のおもてなし
懐石は茶懐石ともいい、茶道に由来する。お茶をいただく前に空腹を満たすため、お茶をより美味しくいただくために考えられた。侘び・寂びの概念のもと、旬の素材を使っておもてなしすることが目的だ。基本は一汁三菜で、量はごく少量。
- ご飯(一口ほど)
- 汁物(味噌汁)
- 向付(むこうつけ。刺身かなますが多い)
- 椀物(懐石のメインで、具沢山)
- 焼物(焼き魚。ここまでで止めることもある)
- 強肴(しいざかな。ちょっとした料理)
- 小吸物(箸を清め、口を漱ぐ意味で一口)
- 八寸(一辺八寸の器に海のものと山のものが盛り合わされる)
- 湯桶(ゆとう。おこげにお湯をかけたもの)
- 香物(漬物)
この後、主役である濃茶と主菓子、締めに薄茶と干菓子が出される。
会席は酒のための宴席
会席は結婚式などの祝いの席で、宴会するのが目的だ。細かい決まりは少なく、酒を飲むことが前提である。
- 先付(さきづけ。食前酒と供される)
- 吸物
- 向付(刺身)
- 煮物
- 焼物(この後口直しで酢の物が出ることも)
- 揚物、蒸物(順が前後することがある)
- ご飯、味噌汁、香物(これが出たら酒をストップ)
- 水物(季節の果物。水菓子ともいう)
2. 洋食などの「フルコース」
一般的に洋食でフルコースといえばフランス料理を指すが、イタリア料理のこともある。
品数の多いフランス料理
最も格式高いもので11品ある。欧州のテーブルマナー発祥はフランスなのだが、フルコース料理はイタリアが先に始めた形式だ。このため、イタリアに対抗して品数が多くなり、マナーも複雑化した。
- アミューズ(ちょっとした突き出し)
- オードブル(前菜)
- スープ(パンはこの後で食べるようにする)
- ポワソン(魚料理)
- ソルベ(このタイミングでシャーベット。口直しなのでごく少量)
- アントレ(肉料理。コースによっては魚か肉か選ぶ)
- サラダ
- チーズ
- アントルメ(甘い菓子)
- フルーツ
- カフェ・プティフール(コーヒーと焼き菓子)
元祖フルコースはイタリア料理
実はイタリアンがフルコースの元祖。品数が少ないため、メインが序盤から登場する。
- アンティパスト(前菜)
- プリモ・ピアット(第一メイン、パスタ)
- セコンド・ピアット(第二メイン、魚か肉)
- サラダまたは温野菜
- チーズ
- デザート
- コーヒー(エスプレッソが一般的。カプチーノはイタリアでは朝食に飲むもので、料理に対する不満の意味になるので選ばないこと)
3. 順番には意味やマナーがある
コース料理の順番には和洋ともに意味があり、その通りに食べればほぼ問題ない。
コースの目的に合った順番
和食なら懐石は茶、会席は酒を楽しむのが目的のため、米はまったく違うタイミングで出される。洋食のメインは、フランス料理では登場するまで段階を踏み、イタリア料理は豪快に序盤。サラダ、チーズが口を改める役割に当たる。
マナーにも順番がある
和食は下座側から着席し、大皿は上座側から回す。洋食は椅子の左側から着席し、ナプキンを広げるタイミングは料理が出てからだ。カトラリーは料理に合わせて外側から使っていこう。
結論
結婚式などでフルコースが供されても、慌てることはない。基本的に出された順からいただけば大丈夫だ。最低限のマナーと料理の順番を頭に入れておけば、余裕をもって美味しく料理を楽しめるだろう。