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金正恩は、朝鮮中央通信が先ごろ掲載した写真のなかで、異常なほど太いズボンを履いていた。
金正恩
©Getty Images
北朝鮮の最高指導者である金正恩については、彼が写るあらゆる写真が、メディアに掲載される前に入念なチェックを受けているといっても過言ではない。
独裁体制を敷く金正恩を一般の有名人と同じように考えることはできない。あなたがほろ酔いで彼を待ち伏せ、スナップチャットで犬顔になるエフェクトをかけたような写真を撮ろうものなら、彼は撮影した携帯電話を叩き壊し、あなたは罰として犬の餌にでもされてしまうだろう。
金正恩は自分の見た目について敏感だというのがもっぱらの噂だ。
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このようなことを踏まえた上で、朝鮮中央通信が数日前に掲載した上の写真を見て欲しい。目が離せないことだろう。この写真は、一見すると普通のプロパガンダ写真のように思える。背筋を伸ばした金正恩は片足を前に出し、間違いなく全員の中心に立っている。また、彼の体は巨大な山を覆い隠しており、山の向こう側の韓国の人々を恐怖に震えさせるようだ。
金正恩の髪は完璧に整えられており、数本の髪の毛が風になびいている。また、手の中には金日成の時代からタフガイの象徴ともみなされてきたタバコが収まっている。周囲の複数の将軍やスーツに身を包んだ幹部は畏敬の念をもって頭を垂れており、差し出がましい男が金正恩の賢明な指示をメモに取っている。
そして、何より見てほしいのはこの驚くべきズボンだ。
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金正恩のスーツのズボンは、この写真に写る他のどんな男性のものに比べても、歴史上男性が着用してきたあらゆるズボンに比べても2倍は太い。
メンズファッションの世界では過去4~5年、太めのパンツが流行してきたことはみなさんもご存知の通りだ。ランウェイにおいても、一般の人々の間でも、太めのパンツのちょっとしたふくらみやその心地よさが再びトレンドになり、スキニースタイルに影響を与えたエディ・スリマンとディオールオムの亡霊はついに葬られることとなった。西欧に魅了されている指導者として、金正恩はもちろんこれを知っているだろう。
しかし、金正恩のズボンは、最新の秋冬コレクションを田舎の少年の格好のように思わせるほどの太さだ。高速道路のそばではためき、近くに洗車場があることを知らせる旗かと見紛うほどだ。また、彼の靴は完全にズボンに覆われており、短く、混乱に満ちた運命を送ったこの靴たちのいまわの際のうめき声が聞こえるようだ。そして、もっとも奇妙なのは、これほど太いズボンが彼の脚でパンパンになっているように見えることだ。
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これは次のようないくつかの可能性を示唆している。1つ目は、金正恩が暖かい空気を上に吹き出す通気口のそばに立っている可能性。2つ目は、このズボンの内部にワイヤーのようなものが入っている可能性。3つ目は、彼が脚に象皮病を患っている可能性だ。これらはある程度の説明にはなる。
もしくは、風変わりで子供じみた発想を持つ金正恩のことだ、過去もっとも太いパンツを男らしさや力強さの象徴とみなし、宿命の敵で同じようなゴロツキでもあるドナルド・トランプ米大統領を挑発することを意図しているのかもしれない。トランプがこの挑発に乗れば、ズボンを発端にした冷戦や国際的軍拡競争が始まるかもしれない。ドナルド・トランプ氏は次に金正恩を罵るときには、彼よりさらに太いズボンを履くこととなり、おそらくこれは、「グランドキャニオンよりも幅広い」と形容できそうな、古き良きアメリカンデニムになるだろう。このズボンはいつもトランプの演壇からはみ出て、忠実で無能な部下たちがこの裾を持つことになるだろう。また、この裾はメラニア・トランプのヒールに引っかかることにもなるだろう。
この戦争は絶え間なく続くことになる。この出し抜き合戦で、金正恩とドナルド・トランプのズボンはますます太くなり、アメリカと北朝鮮の最高の仕立て屋たちが地球の反対側との奇妙な争いに釘付けにされることになる。そして、最後には、誰も近づけないほどに広がったズボンを引きずり、クタクタになった二人のうち一人が、孤独に、生地のかたまりに倒れ込んで死ぬことになるであろう。
By Sam Parker on September 25, 2017
Photos by Getty Images
ESQUIRE UK 原文(English)
TRANSLATION BY Wataru Nakamura
※この翻訳は抄訳です。