編集部/試合は全部観たかと思いますが、全体を通してどんな大会でしたか?
天野さん/はい、試合はほとんど観ましたが、すべてが面白い試合でした。退屈な試合が1つもないと言っていいほどです。
数多くの試合で感動しましたが、一番の感動は言うまでもなくスコットランド戦です。自国開催で日本代表が初の予選通過…ベスト8を決めたのですから。もちろん、2019年のシックス・ネーションズ(欧州6カ国対抗)の覇者であるアイルランドに勝ったときも感動しました。正直、「あり得ないでしょ」と不思議な気持ちにもなりましたね。個人的にはエディー贔屓(びいき)もあるので、イングランド対ニュージーランドも面白かったです。
編集部/私もそうです。アイランドには勝てると思ってはなくて、2位で予選を通過すると思っていました。
天野さん/そうですよね。アイルランド戦ではホームのパワーを授かった日本代表に対して、「完全に受け身に回ってしまったな…」って感じましたね。それに加えて9月28日の開催ですから、その時期はまだ湿度も高かったじゃないですか。
たぶんですが、日本がまだジメジメしてた時期だったのもあって、コンディションづくりでアイルランドは苦労しているのでは?って思いましたね。彼らの体の動きもあまりよくなかったですから。キレていませんでしたね。
それに加えて日本代表側では、しっかり走りきることのできるプレイヤーや、体を張ってディフェンスをこなす選手など、アイルランドの選手に対して対等以上の仕事がこなせるキーマンが要所要所にそろってたのは、とても大きかったと思いますね。
編集部/オールドファンからすれば、ここまで世界のトップクラスと対等に戦える日が来るとは、思ってもいなかったのではないでしょうか?
天野さん/僕の現役時代は当然ですが、エディHC以前の日本代表では、ベスト8の話ができるなんて一切想像していませんでしたね。そもそも、(世界の強豪とは)違う場所にいるような感じでしたから…。さらに言えば、ラグビーのワールドワールドカップ自体、注目されてなかったですからね。開催されていることも知らなかった人ばかりでしたでしょうね。まさに、「ラ」の字も話題にならない大会でした。
こうしてエディーからジェイミーへと見事なバトンタッチがなされ、ベスト8という素晴らしい時代となりましたが、これを今後、さらに強化していくか、そしてこの人気を維持しながら、さらなるファンを獲得していけるかがラグビー界の大きな課題と挑戦になるでしょうね。
編集部/ではズバリ、ワールドカップ2019日本大会後の日本ラグビーに、これ以上の人気や発展を求めることは難しいとお考えですか?
天野さん/はい、「この大会を機に、ますますラグビーの人気は上がっていきます!」なんて、そう簡単には言えませんよね。今回、「にわかファン」と自ら名乗ってくださった方々が今後、ラグビーというスポーツ自体を今後好きになってくれるか?と言えば、難しいところではないですか。
「このラグビーワールドカップで盛り上がった、日本代表の選手たちが好き」っていう方が大半のようにも思えるので…。これでラグビー自体をを本当に好きになってくれて、ラグビーが文化として大きく発展してくれることを強く願っているのですが、現実は難しいような気がしますね。
選手が「犠牲をどれだけ払ってきたか…」と言ったいたように、相当の犠牲の上に勝ち得たこの勝利を、世の中の人々は次回からは「ベスト8」になることが当たり前のように試合を観ることになると思います。その期待に応え続ける日本代表になることができるか? それがラグビー文化を日本に定着させることができる最大の鍵となるのだと感じています。
ジェイミーとトニー・ブラウン(サンウルブズ)の両監督、そしてコーチが次のW杯まで契約が延期できたことをプラスにとって、代表の継続的な強化とともに日本国内のリーグをどのように「コンテンツとして」魅力あるものに仕上げていくのかが、大変楽しみです。
そして、現状のファンの方々がすべて、自然と「次のワールドカップ2023フランス大会でも、日本代表を応援しよう!」って思ってくれているファンであり、高校から大学、そして社会人まで含めて、「ラグビーを全体を応援していこう!」という状態にまでならないと、これ以上の発展・成長はなかなか難しいのではないでしょうか。
そのためにも、全国で今増えている熱きファンの方々の要望を、いち早くカタチに変えていける組織があると良いですよね。僕もいちファンとして、昔はあった高校ラグビーのテレビ番組を高校野球の甲子園やサッカーの高校大会のように盛り上げて欲しいと思っています。そして、大学ラグビーの放送も増やして…。トップリーグは各地区、地方毎に協議して、さらにチームも地方自治体ともにコミュニケーションを取ったり、企業とコラボレーションをしたりして、地方局でも毎週放映するようなコンテンツになって欲しいと思います。