英国のサッカー界で言えば、王者デヴィッド・ベッカムが君臨しています。ですがそんな中、UK版は中田氏のファッションセンスに対し、ベッカムに肉迫するほどのレベルと絶賛。いやいや超えているのでは⁉という声も…。
サッカー選手は「Eurotrash(ダサい欧州人)」と、かつては言われたものです…。が、このような概念はいまなくなりつつあります。
このことに関しては、デヴィッド・ベッカム氏の功績は大きいと言えるでしょう。
英国ブランド「ケント・アンド・カーウェン」は、デヴィッド・ベッカム氏がイメージキャラクターに起用していますが、ベッカム氏同様に同じブランドの服を着こなしていても、ウェットなヘアジェル、ラインストーン付きデニムなど…キラキラした装飾が手放せない…そんな方たちもいるわけですから。ここであえて名前は言いませんが…。
このような罪深い人々には、ぜひベッカムそしてそれに代わる人物として、中田英寿氏のファッションを参考に、ぜひとも「贖罪(しょくざい)」してほしいところです。
日本サッカー界最高とも称された元日本代表MFの中田氏は、抑え目ながら、人目を引かずにはおかないファッションスタイルを一貫して好んできました。
イタリア人写真家のアンドレア・テネラーニさんは2004年、「インターナショナル・ヘラルド・トリビューン」紙のインタビューで、中田について「モデルのように完璧、かつファッションコンシャス」と評しました。また、カルバン・クラインの当時のメンズウエア担当クリエイティブディレクターのイタロ・ズッケーリ氏は、2006年に掲載された「ニューヨークタイムズ」紙の記事で、「遊び心あるファッションながら、他の多くの人たちよりもずっとシックで洗練されている」とコメントしています。
そして何より、かつてはASローマの選手だった彼と、ルイ・ヴィトンとの長い関係性についても忘れてはいけません。
毎シーズンのコレクションでは必ずフロントロウに着席していた彼は、シーズンごとに自身の洗練の度合いを高めてきました。19年秋冬コレクションでの姿も、やはり例外ではありません。
とすれば、彼に注目しないわけにはいかないでしょう。
彼の人となりは、サッカー界でもあまり良く知られているわけではありません。これまでは、関係者のみが彼のファッションを称賛していました…しかし、今後はきっと変わることでしょう。
他のサッカー選手らが自己主張の強い着こなしを好む中で中田氏は、1つのスタイルを頑なに貫き続けています。そのスタイルとは、デンマークの建築家のように、かっちりと構築されたミニマリズムとリーガ・エスパニョーラの鮮やかなユニフォームとは似ても似つかぬほどの色合いになります。
ジャンバティスタ・ヴァリの17年秋冬コレクションに姿を見せた彼の、控えめながらもきりっとしたネイビーで統一した装いを確認してください。ベテランバイヤーかファッションエディターと見まごうほどでした。
この優れたスタイルは、パリで行われたルイ・ヴィトンのショーでも変わらず…。中田氏は流麗な仕立てのスーツのうえに、シャープな印象のコートをはおっていました。
彼のスタイルは、実に一貫しています。
2006年、シャネルのショーに招待された列席者たちは、モノトーンのクラシックな革ジャンスタイルにこだわった中田氏のファッションを目にしたことでしょう。ややその時代のファッション風ですが、彼の同業者が身に着けているもの(ヘッドバンドやパーマヘア、デニムジャケットといった夜遊びスタイル)と比べればどうでしょう? どちらが優雅に年齢を重ねているかを考えれば、勝者は明らかに中田氏のほうです。
「つまらない」などと批判するなかれ。画一的な安全第一主義の防具にばかり頼っていては、デザイナーブランドと長きにわたる関係は築けません。中田は清々しく、永続性があり、ダークカラーでまとめるテクニックという自身のシグネチャーとなるものを見つけているのです。
これぞまさに、「スタイル」と呼ぶべきものなのです。
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