市販車の中で最も私たちをエキサイトさせるのが、レースにインスパイアされた流麗なるエアロダイナミクスが施されたモデルです。ちなみにエアロダイナミクスとは、「空気力学」のこと。走行速度に応じてクルマには抵抗力が働き、燃費の悪化や車体が浮かび上がるなどの影響を受けます。走行中の気流をコントロールすることで、走行性能を高めることができるというわけです。
かつては、ほとんどのロードカーのスポイラーは単なる装飾のためだけのもの…と言って過言ではありませんでした。ですが今では、革新的な方法で本物のダウンフォースを発生させるクルマも登場しています。
ここでは、最もクールなレーシングカーにインスパイアされた、最高にカッコいいエアロダイナミクスを備えた市販車とその技術をご紹介します。
ゴードン・マレー「T.50」:ファン
ゴードン・マレー待望の次世代スーパーカー「T.50」には、なんとエキゾーストの間のリアに巨大なファンが搭載されています。
同じファンカー(Fan car)として知られる1978年型のF1マシン、ブラバム「BT46B」と同様にダウンフォースを発生させるため。
ちなみに「BT46B」は、後部に取り付けられた巨大なファンを回転させることで、床下の空気を強制的に排出させることで強大なダウンフォースを発生させるという鬼才ゴードン・マーレイの独創的アイデアでした。デビュー戦となった1978年第8戦スウェーデンGPで、ニキ・ラウダのドライブによって優勝を果たしています。
ブガッティ「ヴェイロン・スーパースポーツ」:NACA ダクトインテーク
ブガッティ「ヴェイロン・スーパースポーツ」は、空気抵抗を生み出すトップマウントのスクープからエンジンに空気を送り込む代わりに、NACAダクトインテークを採用。
そのおかげでフロントの表面積を少なくし、全体的な空気抵抗を低く抑えることに成功しています。
マクラーレン「エルバ」:アクティブエアマネジメントシステム
マクラーレンの最新スーパーカー、804馬力のオープントップモデル「エルバ」にはフロントガラスがありません。
マクラーレンはキャビンに風が当たるのを防ぐために、この写真のシミュレーションのように空気を使ってキャビンの周りに“空気の泡”をつくる、「見えないフロントガラス」を開発。天才的な発想です。
ロータス「エビージャ」:エアトンネル
ロータスの新電気自動車「エビージャ」は、中央部からリアエンドにかけて渦流を生み出す巨大なトンネルのような構造になっています。こちらの写真のように真後ろから見ると、かなりのインパクトです…。
この革新的なつくりによって、空気がクルマの周りを回るのではなく、クルマの中を貫通するような気流が生まれます。これによって、2000馬力のドライブトレインを誇るこのクルマの空気抵抗をよりスムーズなものとします。
アストンマーティン「ヴァルキリー」:アンダーボディーチャンネル
他の多くのクルマのように車体上部からダウンフォースを生み出す代わりに、アストンマーティンはボディーの下側からダウンフォースを生み出そうとしました。
基本的に車体下部はくぼんでいて、空気の流れを生み出すための構造となっています。それにより、路面に吸いつくような走りを実現しています。
マクラーレン「セナ」:リアデックリッド
789馬力を誇る「セナ」のルックスは、好きか嫌いかで意見が大きく分かれるかもしれません(私は好きです)。クルマ全体のデザインはダウンフォースを最大化しながらも、可能な限り効率的に空気を切り割くようにデザインされ、非常に興味深いスタイリングとなっています。
巨大なウイングと巨大なディフューザーに加え、空気をスムーズに流すための無数のクレバス(割れ目のようなデザイン)がボディー全体に設けられています。
プリマス「スーパーバード」:リアウイング
「スーパーバード」に付けられた、あの巨大なリアウイングは見せびらかすためではありません…。れっきとした理由があります。これ以上車体を低くしてしまうと、クルマの屋根に空気抵抗が生じ、快適な走行を妨げてしまうのです。
シボレー「コルベットZ06」:アジャスタブルプラスチックウイング
「コルベットZ06」のリアウイングに搭載されているセンターピースは、高強度のプラスチック製で高さ調整が可能です。半透明になっており、リアウインドウからも透けて見えるつくりとなっています。
ダッジ「バイパー ACR」:エクストリームエアロパッケージ
ダッジ「バイパー ACR」に搭載されている巨大ウイングやフロントスプリッター、ダイブプレーンは、今回ご紹介するリストの中で最も“エアロダイナミクスを取り入れたクルマらしいデザイン”かもしれません。実際、最も大きな効果も生み出しています。
オプションのエクストリームエアロパッケージを装着すれば、レーシングカー並みのダウンフォースを発生させることができます。
フェラーリ「488 GTB」:アクティブディフューザーフラップ
「F50」は、大きなデックリッドウイングを採用した最後のフェラーリでしたが、だからと言って、この跳ね馬がエアロダイナミクスを無視しているわけではありません。
それどころか、フェラーリはクルマを取り囲む空気をスムーズに流すために、さまざまな見えざるソリューションを開発しているのです。
フェラーリは「488 GTB」と「スパイダー」でアクティブフラップを採用しており、高速走行時に開くことで空気抵抗を低減しています。
フォード「GT」:フライングバットレス
フライングバットレスは今大流行していますが、フォード「GT」ほど多用しているクルマはないでしょう。
このクルマは、アクティブリアウイングを下げた場合でも、ボディー、パッセンジャールーム、リアウイングに渦流をつくり出し、ダウンフォースを発生させています。
フェラーリ「599」:フライングバットレス
確かにフォード「GT」は、フライングバットレスを多用したロードカーとして有名かもしれません。ですが、フェラーリ「599」についても言及するのがフェアというものでしょう。
なぜなら、このモデルこそフライングバットレスを搭載した初めての量産車で、そのデザイントレンドの先駆者(先駆車?)だったのですから…。
ケーニグセグ「One:1」:トップマウントウイング
ケーニグセグの「One:1」は、スウェーデンの小さな自動車メーカーのクルマと言うよりも、SFファンタジーの何かに似ています…。
その翼はトップマウントで可動式となっており、翼の前の乱流を減少させるとのことです。こちらでクリスチャン・フォン・ケーニグセグCEOが、その仕組みを説明する様子をご覧ください。
アストンマーティン「DB11」:エアロブレード
他のハイエンドパフォーマンスカー同様、当然アストンマーティン「DB11」もダウンフォースを発生させる必要があります。ですが、高級グランドツアラーである以上、レーシングカー然とした奇抜なカーデザインにすることなく、ダウンフォースを発生させなければなりません。
そこで考え出されたのが、Cピラーのオープンボディーワークから空気を取り込み、リアデッキリッドの小さな開口部から空気を排出するという、“それなりに”エレガントな解決策でした。
これはフォード「GT」のフライングバットレスにも似たコンセプトですが、より目立たないようになっています。
マクラーレン「12C」「650」「675LT」「720S」「765LT」:エアブレーキ
マクラーレンがスーパーシリーズカー(「12C」「650」「675LT」「720S」「765LT」)に採用しているのが、エアブレーキです。初期設定は32度ですが最大69度まで上昇し、急激なブレーキに対しても大きな制動力を発揮します。
その作動方法もユニークで、小さな油圧シリンダーが翼の一部を持ち上げ、残りは空気圧で作動します。
パガーニ「ウアイラBC」
もしかしたら少し言い過ぎかもしれませんが、現代の市販車で使われているエアロダイナミクスには、大きく分けて2つのアプローチがあります。
1つがフェラーリ「488」に代表されるような上品さで、あまり目につかないエアロダイナミクス。もう1つは、見るからにエアロダイナミクスを重視したクルマとわかるような、オールドスクールでより野性的な印象を与えるエアロダイナミクスです。先にご紹介したダッジ「バイパーACR」は、その最たる例となります。
興味深いことに、こちらのパガーニ「ウアイラBC」はド派手な巨大リアウイングとダイブプレーンを備えた両方を使用していますが、クルマの前後にあまり目に付かないように、さり気なくフラップを備えています。
ポルシェ「911 GT3 RS」:フロントホイールエアアウトレット
ポルシェ「911 GT3 RS」は、大きなリアウイングがカッコいいのですが、このさりげないエアアウトレットも効いています。
カーボンファイバー製で、タイヤの回転によって発生する高圧が引き起こす揚力を軽減するために設計されています。
一般的な市販車では、極めて珍しい仕様です。
マクラーレン「P1」:マニュアルドラッグリダクションシステム
現代のF1マシンは空気抵抗を減らすために、スポイラーを下げて空力的に最も効率的な位置に配置する「ドラッグ・リダクション・システム(DRS)」を採用しています。
市販車の中にはフェラーリ「488」のように、自動制御のロードカーもありますが、マクラーレン「P1」はステアリングホイールに大きなボタンがあり、ドライバーがマニュアルで行うことができます。
フェラーリ「458」:フロントウイングレット
フェラーリは新型「488」で、この機能を取り止めたようです。が、「458」のフロントウイングレットは実に優れたものでした。
この写真のフロントバンパーのエアインレットにある灰色のホッケー棒のようなカタチをしたものをご覧ください。これはゴムのような素材でできていて、クルマが速くなるにつれて変形し、速度が上がるにつれて抵抗を軽減します。
ブガッティ、「シロン・ピュアスポーツ」を発表。価格は…約3.5億円
カスタムされたポルシェ「911 ターボS」の爆発的な速さを動画で!【0-60がわずか1.9秒!】
Source / Road & TrackTranslate / Esquire JP
この翻訳は抄訳です。