80年代に『イヤー・オブ・ザ・ドラゴン』、『ナインハーフ』、『エンゼル・ハート』等の話題作で主演を務め、その時代の映画史に名を刻み、さらに90年代のファッションを牽引していた俳優、ミッキー・ロークのスタイリングをここで振り返りましょう。
90年代のトップスターともなると、24時間ニュース体制の確立した貪欲な報道によって、その落とし穴に引き寄せられた第一世代とも言えるでしょう。どん底に沈んだまま二度と帰ってこなかったスターもいれば、見事に表舞台へとカムバックをはたしたスターもいます。ミッキー・ロークは、まさに後者と言えるでしょう。
ミッキー・ロークに関しては、映画『レスラー』(2008年)や『シン・シティ』(2005年)での俳優としての復活(と現在のライオンヘアスタイル)ばかりが取り上げられ、彼がハリウッドの王道俳優であったことは忘れられがちです。しかし、彼はかつてレッドカーペットを支配し、華やかな交友関係を持ち、映画のプレミアイベントを賑やかしていたことは事実。そして今や、トレンドとしてリバイバルしているあの…「いかつい」90年代ファッションを着こなしていたフロントロウの男だったのです。
当時のミッキー・ロークのファッションは、どこをとってもビッグシルエットのゆったりした…いわゆる日本語で言う「親分スタイル」のようないで立ちでした。典型的な特徴としては、すれ違う人とぶつかるのではないかというくらい広い肩幅と、草刈り鎌のようにシャープなラペル。映画『ウォール街』(1987年)の成功や、実際のウォール街の活況の影響で荒稼ぎするトレーダーのようなスタイルが流行した時代でした。ミッキー・ロークも、ニューヨーク証券取引所のトレーダーのようなパワースーツスタイルを世間に広めた人物の1人だったのです。
彼は5番街のような高級ショッピング街からファッションショーに至るまで、そのスタイルを貫き、自在に着崩してみせていました。オスカー・デ・ラ・レンタのニューヨークコレクションでは、極端にブカブカしたシルエットの「ズートスーツ」を着用。インナーにシャツを着ないで胸を見せるスタイルで、マッチョなマフィア的イメージを演出していました。煙草の煙を他人に吹きかけても、文句を言わせないようなボスキャラが似合うロークだったわけです。
しかもこのスタイルは、現在のスターのスタイルを先取りしていたのです。
2018年9月13日に行われた、リアーナ主催のチャリティーイベント「ダイヤモンドボール」に登場した俳優ドナルド・グローバーは、スーツのインナーを着ていませんでした。ブロードウェイのオープニングに現れたジェイク・ギレンホールは、ややコンサバ寄りですが、インナーにTシャツを選んでいました。これは間違いなく、ミッキー・ロークのニューヨーク・マフィアスタイルを受け継ぐ流れと言えるのではないでしょうか。
もちろんこのスタイルは、ミッキー・ロークの専売特許ではありません。彼はかつて、そして今も、デザイナーやトレンド、時代の先駆者の影響を受けているのは間違いありません。
しかし、栄光を味わっては失い、そして復活を遂げた数少ないスターの一人として、「スターの浮き沈みが激しく、スーツはかつてないほどオーバーサイズだった90年代」を振り返るのに、66歳となったミッキー・ロークを忘れるわけにはいかないでしょう。
From Esquire UK
Translation / Keiko Tanaka
※この翻訳は抄訳です。
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