2020年度から小学校で英語とプログラミングが導入されます。そもそもなぜ英語とプログラミングが必須になるのでしょうか。自身が経営する学習塾で、プログラミングと英語教育に以前から力を入れてきた株式会社スタディラボ地福武史(会員制難関受験専門塾エリオ代表)さんと、子どもの塾選びをサポートするサイト「塾シル」代表の古岡秀士さんとの対談を通して、私たち親は子どもをどうサポートしたらいいのか考えます。
参考:政府広報オンライン|2020年度、子供の学びが進化します!新しい学習指導要領、スタート!
英語とプログラミングが小学校で本格導入。子どもの興味をどう引き出す?
古岡秀士さん(以下、古岡):2020年度から小学校ではプログラミングや英語が導入されます。なぜ英語とプログラミングが子どもたちの将来に必要なのでしょうか?
地福武史さん(以下、地福):社会的な要請ですね。これから先の未来の社会を予測したとき、必要になってくるのが英語とプログラミングの能力です。プログラミングの構成要素は英語です。そういう意味で英語とプログラミングというのは密接に繋がっています。プログラミングは社会の需要が高まっているため、英語はグローバルスタンダードのため必要です。英語に関していえば、世界中の大学に進学する際に、また企業などに就職する際にも必要な能力です。
古岡:英語とプログラミングを始めるにあたり、注意することはありますか?
地福:子どもたちの好奇心を引き出せるかが一番大切なことです。というのも、親がやらせたいことと子どもたちがやりたいことは必ずしも一致しません。ただお母さん方の中には、自分の子どものテストの点数や成績が母親自身の評価だと考えてしまう方もいます。これが一番良くないパターンです。そうではなくて、どんなに小さな子でも一人の人間です。子どもの意志を尊重しつつ、これから重要になってくる英語とプログラミングに興味を持たせることが大切です。
古岡:子どもが自らやりたいと思わせるために親は何をしたらいいですか?
地福:プログラミングを楽しんでいる親の姿勢を見せることです。子どもたちは本物を見ることによって刺激されることがあるはずです。私は学習塾業界でも古くからロボットプログラミングを導入して、ロボット大会を行っていました。そこに参加した子どもたちは目をキラキラさせながら見てくれていました。ロボットを動かすためにはプログラミングが必要なんだとわかり、子どもたちはプログラミングに興味を持ち始めたのです。
いかに子どもの好奇心を引き出せるかが重要
古岡:英語に関していえば親はどうしたらいいでしょうか。
地福:英語であれば、英語を使って話す機会を作ることです。英語で話ができればさらに新しいことを知ることができる。多種多様な人からたくさんのことを学ぶことができる。子ども自身にそう実感させてあげることが重要です。
「将来、受験のために必要だから」なんて言っても子どもには伝わりません。プログラミングも英語も、いかに子どもの好奇心を引き出せるかが大切なのです。
古岡:英語もプログラミングも学校の授業で導入された際に、学校だけでことたりますか?
地福:現在の教育は官民一体になっています。学校だけに頼るのではなく、塾や習い事など民間の活動などでも補えると理想的ではないでしょうか。以前は、学校は文部科学省、塾などは経済産業省の管轄と分かれていましたが、今経産省と文科省が連携して動く機会も増えています。そのため民間企業の事業を公的教育に導入することが加速しています。学校も民間教育も重要で、この2つが重なると非常にいい教育ができます。
親に求められるのは正しい情報を選び取ること
古岡:これからの子どもの教育を考えていく上で、家庭でもできることはありますか?
地福:正しい情報の取捨選択を行うことです。現在、情報があふれかえっていて、どれが本当に正しい情報なのかということが判別しにくくなっています。たとえば、学校選び1つをとっても、学校でさえ公立や私立で分かれていますね。塾なんてさらにさまざまな種類に分かれています。
親は、我が子にいい教育を受けさせたいと思うあまり、塾も習い事もいろいろ詰め込みすぎて、結果として子どもはスケジュール過多で疲れてしまっている場合もあります。
教育に関する正しい情報をどのように集めて、どう判断するかという能力が親に問われているのです。
次に、これが正しい情報だと仮説をおいた場合、自分の子どものどんな能力を伸ばしていくかを考えることです。いきあたりばったりであれこれやらせても、子どもの能力を引き出すことはできません。それどころか親の偏った思い込みで子どもにあれこれやらせすぎて、子どもを疲れさせてしまうことにもなりかねません。
子どもの能力を7つに分類して考える
古岡:地福さんがやっている「会員制難関受験専門塾エリオ」では、どうやって子どもの能力を見極めているのでしょうか。
地福:僕の塾の場合は、「7つの能力」を定義しています。言語能力、論理数学的能力、空間認識能力、音感能力、身体能力、対人関係能力、自己観察能力の7つです。この「7つの能力」をもとに、それぞれの子どもの能力に合わせてどこを伸ばすべきか決めていきます。子どもたちの能力をチャートにすることで、どこが苦手で、得意かをきちんと見分けることが大切です。多くの親は平均的なチャートを望みます。たまにスポーツなど1点だけ飛び抜けた能力を期待する親もいますが、そういう場合は両親ともにオリンピック選手で子どもも同じように育てたいという場合です。
僕だったら人間関係能力は最高値に置きながら、どの習い事でどう適切に他の力を伸ばしていくのかを、科学的な判断をもってします。まずは親が数ある情報の中から正しい情報を選び取ること。そしてその情報をもとに、子どもの能力をどのように伸ばしてくのかを決めること。その際に、親同士の口コミだけを信用するのではなく、教育の専門家など正しい情報を定期的に収集して、勉強していく場を持つことが必要です。
取材、文・間野由利子 編集・山内ウェンディ