総理大臣、選挙、憲法改正など話題の尽きない日本の政治。とはいえ、話が大きすぎてよく分からないという人も少なくないでしょう。そこで、カリスマ塾講師・馬屋原吉博さんの著書『今さら聞けない 政治のキホンが2時間で全部頭に入る』(すばる舎)から、「わかりやすい政治用語の基本」の一部を抜粋してお届け。基本を知ると、今の世の中がよくわかります。
行政を実際に担うのは各省庁の官僚たち
大臣が実務を行うのは不可能
「行政」という非常に複雑で人手がかかる仕事を、内閣の構成員である国務大臣が実際に行うのは物理的に不可能です。
「法律の執行」や「条約の締結」「予算の作成」といった内閣の仕事を実際に進めているのは、「財務省」や「外務省」といった省庁で働く国家公務員たちです。
国家公務員になるための試験は、2011年度までは「Ⅰ種」「Ⅱ種」「Ⅲ種」に分けられていましたが、現在では「総合職試験」「一般職試験」「専門職試験」「経験者採用試験」に分けられています。
日本が抱える問題に日々向き合う
その中でもとくに、「総合職試験」に合格し、中央省庁の本省に「事務官」として採用されたエリートたちは「(キャリア)官僚」と呼ばれ、日々、「経済成長」「外交」「少子高齢化対策」や「地方創生」といった、日本が抱える様々な課題と向き合っています。
内閣が国会に提出する法律案の多くも、官僚たちによって作られています。
戦前の日本では、帝国大学、とくに東京帝国大学法科を卒業した学生たちが、外務省や大蔵省、内務省などで「官吏」として働き、日本の近代化を進めていました。
戦前の官吏は、天皇に仕える「天皇の官吏」でしたが、戦後、主権が国民に移るに伴い、日本国憲法には「公務員はすべて国民全体の奉仕者」であると明記されました。
「天下り」=官僚が企業などへ再就職すること
官僚のトップ「事務次官」
省庁の役職は、主に下の図のようになっています。
「キャリア」であれば「課長補佐」か「課長」までは出世できますが、「ノンキャリア」であれば、そこまでいくのもかなり大変なことのようです。
上に目を向けると、「大臣」「副大臣」「大臣政務官」の3つの役職は国会議員が務めることが多く、その下の「事務次官」が、一般的に公務員試験で採用された公務員の最終役職・最高位となります。
事務次官になれるのは、同期入省組のうち1人だけであり、それまでに、その人と同期(以上)官僚は省庁を去らねばなりません。
官民の再就職「天下り」
省庁を去った官僚経験者たちは、多くの場合、民間企業や外郭団体に再就職します。
これを一般的に「天下り」と呼びます。
ちなみに、外郭団体とは、官公庁から出資・補助金を受けながら補完的な業務を行う団体を指します。
有名なものに、「日本郵政株式会社(郵便局)」や「日本放送協会(NHK)」、「日本年金機構」「東日本高速道路株式会社」などがあります。
官僚にとって、再就職先の確保は死活問題であるのもたしかですが、天下りは官民の癒着を助長する制度として批判の対象となることもあります。
退職した官僚が高額の退職金を受け取りながら、短期間で天下りをくり返す、「渡り」と呼ばれるケースも存在するようです。
全8章にわたってカリスマ塾講師が政治に関するさまざまな用語をわかりやすい図解で解説しています
馬屋原吉博(うまやはら・よしひろ)
中学受験専門・個別指導教室SS-1社会科教務主任。中学受験情報局「かしこい塾の使い方」主任相談員。大手予備校や進学塾で、大学・高校・中学受験の指導経験を積み、現在は完全1対1・常時保護者の見学可という環境で中学受験指導に専念。開成、灘、桜蔭、筑駒といった難関中学に、数多くの生徒を送り出す。著書に『CD2枚で古代から現代まで 聞くだけで一気にわかる日本史』(アスコム)などがある。