ものすごいプレッシャーも
「最初は本当に苦労しましたね」と笑いを浮かべる藤林さん。自身も野球は好きであったが、セ・リーグ球団のファンということもあり、ライオンズのことは全く知らなかった。

「選手の中身を紹介するわけじゃないですか。嘘はかけない。さらに、ファンの方のほうが僕よりも知識を持っている。その選手のことをライオンズに入る前、高校時代から知っている人もいるかもしれない。そんなこと知っているよと言われるかもしれない。そう思ったらすごいプレッシャーでしたね」と振り返る。
プロ野球を好きになってほしい
ポスターを制作するうえで、藤林さんは決めていることがある。それは、メインのコピーで専門用語を使わないことだ。
「野球をあまり知らない方にもすごさが分かってもらえるよう、野球の専門用語ではない言葉で表現するように心がけています」

「極論を言ってしまえば、他球団の選手を好きになってくれても良い。野球の面白さを、選手を使って表現している。ただ…」と藤林さんは続ける。「やっぱりライオンズだからこそ、それができると思う」と。
「でもやっぱりメットライフドームに来てほしいですね。今年の8月にポスターに登場した平井投手って、僕はブルペンからマウンドに向かうところがすごくかっこいいと思うんです。水をクイっと飲んで。そういうのって、現地じゃないとみられない。そういうのを球場で感じてほしいですね」
遠い親戚のおじさん、おばさんのような感覚で

このポスター、藤林さんはこんな風に見てほしいと話す。
「選手って、僕ら一般人からしたらテレビの向こうの人じゃないですか。でも、彼らにも自分たちと同じように少年時代があって、苦労して。そういうところを共感してもらえたら、試合で活躍してるのを見て、自分事としてとらえてもらえる。そうしたら、ファンの方って、その選手を応援し続ける。引退まで見守ってくれる。遠い親戚のような感覚で、頑張れって応援してもらえれば」
この景色を作るために
メットライフドームでの観戦後、電車が駅に停車していた時のこと。その時に掲出されていた秋山選手の「ダゲキング」のポスターについて話す親子がいた。

「お父さんと、娘さん。娘さんがポスターに書いてあることをお父さんに話す。そうするとお父さんが答える。今時、お父さんと娘さんが野球の話で盛り上がるなんてなかなかないんじゃないかと。すごくほほえましくて。この光景を作るためにやってきたんだな、と思いました。この親子はたぶん次のポスターでもこんな会話をしてくれると思うんです。薄れてきた光景をまざまざと見た感じがしましたね」と笑顔で振り返った。