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フラワースタイリストの平井かずみさんが、各地に暮らす心惹かれる家族に出会う旅。
初回は、「ずっと会いたかった」という、根本きこさん一家。昨春オープンした沖縄のカフェ「波羅蜜」を訪ねました。
「もう一度、人が集える場所を。それが、森から引っ越しをした私たちができる、そして、やってみたいと思ったことでした」(きこ)
森で暮らした5年間を経てたどり着いた、今の答え
“平井かずみさんにとって、根本きこさんは“いつか会いたい人”でした。共通の友人も多い二人。「そのうちに、きっと会える」。……そう考えているうちに、根本さんは沖縄へ拠点を移し、二人の距離はいつしか、また、遠のいてしまったのです。”
平井 ようやく、ここにたどり着けました。いつか、いつかと思っているうちに、こんなに時間がたってしまって。逗子で、きこさん夫婦がやってらしたカフェ「coya」の前は幾度も通っていたんですが、なぜか入りそびれていて。
きこ やっと訪ねてきてくださることになったら、こんなに遠くなっちゃって! 空港から、かなり距離があったでしょう?
平井 空港の周りは、とても都会的で、「正直、東京と変わらない」なんて感じたんです。でも、このお店……「波羅蜜」に近づくにつれて、どんどん緑が深くなっていくのがわかって。植物の力が、ほかの場所とはまったく違う。色濃くて、何より強さを感じます。
きこ 確かに沖縄の、特にこのやんばる地方の自然は強いですね。大好きなクチナシも自生しているし、しかも花が年に2回咲くの。
“きこさんが、夫の潤士さんとお子さん二人を連れて、沖縄の地を踏んだのは約8年前。3年前には次女の縫衣ちゃんが誕生。5年間をやんばるの高江地区の森で過ごした後、ここ今帰仁(なきじん)へ。昨春に再び、カフェをオープンしました。”
Paramita/波羅蜜
沖縄の食材を使った料理や、季節スイーツを味わえる。開放的な店内はDIYによるもの。大きな本棚には夫婦のセレクトした、ジャンルを問わないたくさんの本があり、のんびり読書を楽しむのもおすすめ。店内には、きこさんが選んだ雑貨類も
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区切りのない広々した空間と天井の高さは、元木工所ゆえ。1年ほどかけてリノベーション
沖縄県国頭郡今帰仁村仲宗根278の3/営業時間:10時~17時 休:火~木曜
平井 カフェをやりたいと考えたのは、やはりきこさんから?
きこ ううん、夫から。5年間、サバイバル生活みたいな森での暮らしをしてきて、潤士さんは畑仕事から家づくりまでを無我夢中でやってくれて。そんな暮らしを経て、彼から出た言葉が……あとは、自分で言ってください(笑)。
潤士 「もう一度、店をやりたい」だったんです。逗子から、何も持たずにやってきて、森の中で必死に暮らして、自分で繰り返し問い直して、出た答えが、「もう一度、店をやる」だったんです。地元の人も観光客も、みんなが来てくれる、そんなオープンな店を。
平井 まさにお店の第一印象は、「なんてオープンな空間!」でした。先ほどからずっと、お客さんが入れ替わり立ち替わり、お二人と楽しそうにおしゃべりしていますものね。8年近く暮らして、すっかり地元に根づいた感じ?
きこ 子どもがいますから、その関係ですごくよくしていただいて、私たちも友人として仲よくさせてもらっている方は多いですね。
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ランチは限定20食。この日のメニューは自家製ベーコンのシーザーサラダや、車海老とカリフラワーのフリッター、自家栽培ごはんなど盛りだくさん
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カウンターから奥をのぞけば、厨房で真剣に食材に向かうきこさんの姿が。手際のよさは相変わらず
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(左)味わい深いコーヒーなら、潤士さんにおまかせ
(右)大きな本棚ももちろんDIY。地元の人には、貸し出しもしているという、小さな図書館のような存在
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本誌に掲載できなかった写真をこちらで!
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自家製ジンジャーエール、生の柑橘を絞ったシトロンソーダ、沖縄の梅を使った梅ソーダなど、ドリンクもいろいろ。マグカップ入りの豆乳ラッシーは、ピリピリと炭酸のように発酵していてクセになるおいしさ!
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お菓子作りが得意なスタッフの石原さんは、沖縄に移住して20年。豆腐のガトーショコラは絶品
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夕方になって、お客さまも一段落。牧場から帰ってきた子どもたちとの穏やかなひととき
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次女の縫衣ちゃんは沖縄生まれ。こんなに大きくなりました!陣痛から80分後にするりと誕生。助産師さんが間に合わないほどの安産だったとか
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「波羅蜜」の一角には、きこさんがセレクトした雑貨や服、書籍も
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地元の人々も気軽にやってきて、カウンターできこさんや潤士さんとおしゃべりを楽しみます。イラストレーターのMITSUさんは、できたばかりの作品を持って
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「波羅蜜」前では猫ものんびり、おなか丸出しでくつろぎ中
「ここでは、馬が先生。ただ触れているだけで、多くを教えてくれる」(きこ)
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馬は、乗っているだけで自分のダメなところを指摘してくれる。ネガティブな気持ちだと、動いてくれないんです
深い森の中で、馬や草花から、教わること
潤士 子どもの影響といえば、馬にも乗り始めたんですよ。
きこ 楽しいですよ、馬。子どもたちが、牧場の学校に通っていてね。ずっと見ているだけだったんだけど、1年半くらい前にふと、私も乗ってみようかな、と思って。
平井 これ、というきっかけは特になく、乗りたくなったの?
きこ そう。自分と馬の間にずっと距離があって、それが同じ空間にいることで少しずつ埋まっていって、ある日、「乗ってみよう」って、ひらめいた感じ。私、近眼がひどくてメガネが手放せないんだけれど、馬に乗るときは裸眼でいいの。細かい情報は必要なくて、もっとこう、大きなものっていうのかな、感覚が大切で。乗り物と違って、馬は生きているから、彼らの感情も考えもある。こっちが勝手に、「行くよ!」と引っ張っていこうとしても、動いてはくれない。私の気持ちと、馬の気持ち。それに伴う私の体の動きと、それにこたえる馬の動き。そのすべてがぴったり合致する瞬間があってようやく、馬と私が一緒に動けるの。
平井 そうね、その話を聞いていると、花も同じだな、と思います。こちらがどうしようというのではなくて、その花がありたいように、その声に耳を傾けて、こちらはそこに気持ちを寄り添わせていくだけ。そこで、ぴたりと決まる瞬間がある、というね。……そして驚いたのは、先ほど、お店に来ている方とお話しさせてもらったんだけれど、皆さん、本当に植物に詳しいですよね。シークワーサーみたいな実があって、でもみかんみたいな黄色なの。不思議に思って尋ねたら、「クガニ」だっておっしゃる。シークワーサーが熟して黄金色になると、「クガニ(コガネ)」になる、って教えてくれました。「沖縄には“クガノハ”という神聖な植物がある」という話もしてくださって。ここでは、人と自然がより密接なんですね。
きこ 特に、沖縄北部のやんばるは、そうだと思います。もちろん、海もあるけれど、森の中で生きているという感覚があるから。
平井 都会で暮らしていると、足元に花があっても気づかないで見過ごしてしまう。実は、どんなビルばかりの場所でも、目を配れば植物は生きているのに。それに比べて、ここで暮らす人たちはその小さな存在に気がつく細やかさを持っているのでしょうね。だから、「この植物には神様が宿っている」なんていうことを、さらりと言うことができる。そして、私たちもごく自然に、そんなおとぎ話みたいな言葉を受け入れられる。ある種の不思議な空気が、このやんばる、そして、潤士さんときこさんがつくりあげた、「波羅蜜」という空間には漂っている気がします。
Michikusa-bokujo/みちくさ牧場
馬との暮らし、その命を通して、さまざまなことをともに学ぶ牧場。子ども園、フリースクールとしての役割のほか、初心者向けの乗馬体験や乗馬教室なども開催している。また、馬の力を借りて、心と体を元気にする手助けをするホースセラピーにも力を入れている
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(右)牧場長の根岸理穂子さん「人間以外の動物と、言葉ではない方法で接することで、学べることはとても多いです。弱いものに寄り添う、そんな気持ちを子どもたちが自然と身につけられたら」
沖縄県国頭郡東村慶佐次718の28/営業時間:9時~17時 休:月曜
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(左)長男の哩来くんに、グルーミングの方法や乗り方を教えてもらう平井さん。「動物の目って、種を問わずどれもやさしい」
(右)牧場に来たら、まずは掃除。長女の多実ちゃんは兄妹じゅうで一番の動物好き
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馬のグルーミングと乗馬を終えたら、子どもたちは自由に牧場内で遊び回る
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みちくさ牧場の魅力をもっと!
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「やさしくお世話をして、まずは心を通じあわせる努力をしてから、乗せてもらうんです」ときこさん。平井さんも、馬に語りかけながら一緒にグルーミング
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小さい子どもたちも協力しあって、牧場のお掃除。「一緒にやろう~!」と声をかけられて、さっそくお手伝い。「あの奥にある草をちゃんと取ってね」……かわいく指示を出されて、テキパキ働く平井さん
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平井さんが乗せてもらったのは、傷ついた人の心を癒すセラピーホースとして活動する「ビアンコ」。視線の先には深い緑。リズムに乗りながら、心がほぐれていきます
「同居から、早くも1年。母がムードメーカーです」(きこ)
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昨年から、きこさんのご両親が栃木から沖縄に移住し、3世代での暮らしがスタート。お母さんの手料理と、明るい笑い声があふれる食卓
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昔から、おいしいコーヒーをいれるのは潤士さんの仕事。カウンターでは地元の人がおしゃべりを楽しみ、ホッとひと息。牧場の学校から帰った哩来くんと多実ちゃんも、真っ先にここでおしゃべり
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この建物に偶然出会ったことが、もう一度、カフェを営むひとつのきっかけに。屋上に見えるのはご両親の部屋
平井かずみ Kazumi Hirai
草花をより身近に感じられるような「日常花」を提案。
自由が丘のカフェ「ikanika」を拠点に「花の会」などを開催。旅好きとして知られ、各地の草花と触れ合うのをライフワークとしている。
根本きこ Kico Nemoto
神奈川県逗子で人気のカフェ「coya」を営み、レシピ本をはじめとする著書を多く出版。2011年に沖縄県に移住。5年ほどを沖縄北部のジャングルで過ごし、昨春、沖縄・今帰仁にてカフェ「波羅蜜」をオープン。3児の母。