シートベルトを正しく装着できない小さな子どもをクルマに乗せる際、チャイルドシートは安全性を高める装備として役立ちます。チャイルドシートは1963年にドイツで、乗用車や旅客機のシートを製造する業者が、世界で初めて販売したとされています。
日本では2000年より、6歳未満の子どもを乗せる場合はチャイルドシートの使用が義務となり、違反した場合は運転手に違反点数1点が加算されますが、いまだ使用率100%には至っていません。もし、チャイルドシートを装着せず子供を乗せ、事故にあってしまったらどれほど危険なのでしょうか。
チャイルドシート未使用!? 子どもに襲いかかる危険とは
2019年6月にJAFと警察庁が合同でおこなったチャイルドシート使用状況の調査では、6歳未満の使用率は70.5%となっています。2009年は54.8%であり、10年間で約15%増加していますが、いまだ8割さえも超えていない状況です。
1歳未満の赤ちゃんをクルマに乗せる場合、母親が抱っこしながら後部座席に乗っているのを見かけます。事故が起きない前提であれば手間がかからず簡単な乗車方法ですが、事故が起きた場合、母親の腕だけでは事故の衝撃から赤ちゃんを守ることが難しいとされています。
警視庁によると、6歳未満の子どもがチャイルドシート未使用で事故にあった場合の致死率は、使用した場合と比べて約11倍も高くなるとのことです。
生まれて間もない赤ちゃんは首が据わっておらず、チャイルドシートを使用していかに頭と首を固定するかが重要になってきます。その際に呼吸のしやすい正しい体勢を取ることが大切ですが、気を使いすぎてユルユル状態の間違った使用をしているケースもあります。
このような状態で事故が起きてしまった場合、小さくて軟らかい赤ちゃんはチャイルドシートからするりと抜け、放り出されてしまいます。放り出された赤ちゃんは天井や座席に叩きつけられる可能性が高くなり、大ケガや死亡事故へと繋がってしまいます。
チャイルドシートの使用は義務! 何歳まで?
日本では、6歳未満の子どもはチャイルドシートの使用が義務となっています。これは、子どもの発達や成長とは関係なしに年齢で決められています。
子供の体格に関わらず、6歳まではチャイルドシートの使用が義務付けられる
しかし、5歳頃になると両親の判断によってそのまま座席に座らせるケースが増えています。JAFと警察庁のデータを見ても、5歳になると使用率は48.0%にまで落ちています。
成長した子どもでも大人と比べれば体重や筋力がまったく違うため、事故にあわなくとも急ブレーキだけで吹き飛ばされてしまう可能性もあります。
一般的な大人用のシートベルトは、身長約135cmから140cm以上の人間に対し安全効果が発揮されるよう作られているとされていますが、身長が足りているから安全ともいい切れません。どんなに子どもが嫌がろうとも「6歳まで」はチャイルドシートを使用しましょう。
ちなみに、チャイルドシートの使用義務が免除されるケースには、どういったものがあるのでしょうか。
道路交通法第七十一条の三項では、「(一部抜粋)疾病のため幼児用補助装置を使用させることが療養上適当でない幼児を乗車させるとき、その他政令で定めるやむを得ない理由があるときは、この限りでない」と規定されています。
具体的に免除される「やむを得ない場合」としては、道路交通法施行令第二十六条の三の二の三項に、8つが記されています。
●座席が構造上チャイルドシートを固定できないとき
●座席数以上の人数を乗せるため(乗車人数の制限内で)、乗車する幼児の数と同数のチャイルドシートが固定できないとき
●負傷や障害により、チャイルドシートの使用が健康保持上適当でないとされる幼児を乗せるとき
●肥満等、身体的な理由によりチャイルドシートの着用が困難なとき
●運転者以外の乗員が、授乳やその他の日常生活の世話を行っている幼児を乗車させるとき
●タクシーやバスなどの旅客として幼児を乗車させるとき
●特定非営利活動や公共の福祉を確保するためなど、やむを得ない場合に幼児を運送するとき
●応急救護のため、医療機関や官公署などに緊急に搬送の必要がある幼児を乗車させるとき
要約するとこれらの場合がやむを得ない場合に当てはまり、チャイルドシートの使用義務が免除されます。
知っておきたいチャイルドシートの正しい装着方法とは
チャイルドシートを装着していても、間違った取り付け方法をしている車両が6割近いという実態も明らかになっています。事故にあわずとも急ブレーキにより簡単にケガをしてしまうケースも発生しているので、正しくチャイルドシートを使用するのが望ましいです。
正しいチャイルドシートの装着方法とは(写真はイメージ)
チャイルドシートの取り付け方法には「ISOFIX(アイソフィックス)固定タイプ」と「シートベルト固定タイプ」があります。
ISOFIX固定タイプは、車両側のバーにコネクターで簡単かつ確実に固定できる方法です。2012年7月以降に販売されたすべての新車にはISOFIXタイプの設置が義務となっています。
シートベルト固定タイプは従来の方法で、シートベルトを利用して固定します。しかし、車種やチャイルドシートの形状によって固定が甘くなったり取り付けにくかったりと間違った取り付け方法で取り付けられていることもあり、事故につながることが多いといわれています。
チャイルドシートを選ぶときは、車種や子どもの年齢によって使い分けることが重要です。
「ベッド型」のタイプは赤ちゃんに使用することが多く、首の据わらない赤ちゃんを横向きで乗せることができるのが特徴です。また、軽自動車などの狭い車内でも無理なく乗せることができます。
「イス型」のタイプは1歳から6歳までの幅広い年齢で使用されています。足が上がりすぎない自然な体勢でゆったりできる形状となっています。
イス型は「前向き」と「後ろ向き」に分れますが、体重が10kgまでの子どもは、事故時の衝撃を背中全体で分散させることができるため、後ろ向きでの使用が推奨されています。
また、助手席で使用する場合は、エアバッグが飛び出して子どもに直接のダメージを与えるため推奨されていません。
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チャイルドシートは使用の義務があるものの、未だに3割以上が未使用となっています。スピードを出していないから大丈夫、ウチの子は身体が大きいから大丈夫、と油断して子どもを大人用の座席に座らせてしまうのは大変危険です。
一瞬の手間を惜しんで一生の後悔をしないよう、6歳までの子どもには、使用が免除されるケースを除いて、確実に正しくチャイルドシートを装着しましょう。
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