選挙カーは道交法の適用外?
2021年10月31日に投票がおこなわれる第49回衆議院総選挙が近づいてきました。
日本全国、津々浦々まで選挙カーが走り回っていますが、これらの選挙カーに掛かる費用は選挙運動用のポスターやチラシ作成費用などとともに、公費で負担されています。
一方で、選挙カーを使うことは義務ではないため、自転車や徒歩で街頭演説などをおこなう候補者もいますが、選挙カーを使わない場合は公費を受け取ることはできません。
実際は全体の9割強が選挙カーでの選挙活動をおこなっており、また選挙区が広い場合などはクルマで回るのが効率的でしょう。
そうしたなかで、SNSでは選挙カーのマナートラブルなどを疑問視する声もあがっていますが、選挙カーのマナーはどうなっているのでしょうか。
実は選挙期間中の選挙カーには「道路交通法」が適用されないという
SNSでは、「コンビニ入口に駐車した選挙カー」や「駐車禁止場所で選挙カーをとめて演説」などの行為を問題視している投稿が見受けられます。
この選挙カーは、選挙活動期間中に使用する場合のみ「治外法権」といってもいいほどの数々の「優遇」が公職選挙法で定められています。
実際の優遇について、「選挙立候補.com」を運営している、株式会社プットアップ・スタイルの担当者に聞いてみました。
――選挙カーは駐禁場所への駐車も問題ないのですか?
選挙カーの道路交通法の規制対象外は、すべての項目で対象外になるわけではなく、「通行禁止規制」と「駐車禁止の規制」の対象から一部除外されるということです。
なお、「一方通行の逆走も問題ない」という話は、この業界で昔からいわれてきており、ネット記事などでも逆走OKとの記載が多いですが、これはいわゆる都市伝説で、指定方向外の通行は禁止されております。今までそのようなことをする候補者がいなかったため、間違った認識が伝わっていたのだと思います。
また、通行禁止除外は、「指定車・許可車を除く車両の進入禁止の除外」です。つまり、すべての車両の通行が禁止されている道路に対しては、選挙カーも進入禁止となります。
――道路運送車両法についてはいかがでしょうか?
車両法は設備の問題になるので、普通の制限がかかります。しかし、制限外の申請をすれば一定のルールのなかで許可される場合もあります。
例えば、選挙カーに設置する看板については、あくまでも公選法の規定内の看板で、車両法の規定外の大きさであっても、積載外積載許可申請し許可されれば、車両法的には問題ないです。
少し前までは、選挙カーに関しては警察で検査がおこなわれていました。
決められた期間のなかで指定された警察署に選挙カーを持ち込んで、サイズや看板に記載されている内容についても検査がおこなわれていましたが、2019年3月以降執行の選挙から持ち込み検査をしなくても良くなりました。
新人候補者など、初めて選挙カーを用意するのに不安がある場合は警察に持ち込んだら違法な部分がないかなど見てくれます。
※ ※ ※
では、新人候補者とベテラン候補者を比べて、選挙カーにはどんな違いがあるのでしょうか。前出の担当者は次のように話しています。
「クルマ自体に違いはありませんが、やはり選挙カーの運用の仕方は経験者が上手です。
運転手の配備から選挙カーで回る際のルート作成などベテランは経験値が積み重なっています。
また、期間中に何かあった場合のトラブル処理などもやはりベテラン候補者がスムーズで、新人候補者は目の前のトラブルに対応するのが難しいことがあるようです」
選挙カーの運用方法はどうなっている?
選挙運動費用に関する公費負担(選挙公営)制度と呼ばれるもので、国や地方公共団体が候補者の選挙運動の費用を負担する制度です。
選挙運動用自動車に掛かる費用のなかで公費負担される上限額は以下となります。
●ハイヤー契約の場合の上限額=1日あたり6万4500円
●レンタカー契約の場合の上限額
・自動車の借入(1日1台に限る) 上限額=1日あたり1万5800円
・運転手の雇用(1日1人に限る) 上限額=1日あたり1万2500円
・燃料代 上限額=7560円×選挙運動日数
などが定められており、「供託金」を没収された立候補者には公費負担もありません。
選挙は、未来を決める大切な選択肢のひとつ。最近では期日前投票をおこなう人も増えているという
供託金とは、立候補者に法律で決められた金額を一時的に法務局に預ける制度で、当選を争う意志がなく売名や動画サイトのアクセス数を稼ぐなど、「無責任な立候補」を防ぐことが目的です。
選挙の種類別にその額が決められており、衆議院小選挙区/参議院選挙区の場合は1名につき300万円です。
外部リンク