小林聡美さん ヘルシンキの知られざるカルチャースポットへ
北欧の美しき暮らしを訪ねて 第5回(全10回)私たち日本人のライフスタイルがドラスティックに変わろうとしている今、改めて北欧のスタイルに注目し、学ぶべきことがたくさんあるようです。第1部では小林聡美さんがフィンランドを訪問し、現地で出会った魅力的な人々を通じた素敵な暮らしや住まい、カルチャーをご紹介。第2部では、北欧の名品を日本の暮らしの中でセンスよく楽しむ術をユキ・パリスさんに教えていただきます。前回の記事はこちら>>
「伝統」と「進取」が大らかに融合する街 ヘルシンキ、知られざるカルチャースポットへ
2018年にオープンした商業複合施設「ラシパラッツィ」に隣接する広場。緩やかな曲線を描く丸屋根の下が美術館「アモス・レックス」。周辺にはヘルシンキ中央図書館「Oodi」をはじめ、フィンランドのさまざまな文化やアート、建築、歴史を堪能できる施設が集結する。
「ヘルシンキは訪ねるたびに観光客が増えて、初めて来たときに比べるとずいぶんと活気が増したように感じます」。
小林聡美さんがフィンランドを旅するのはおよそ3年ぶり。その間にヘルシンキ市内には美術館や図書館など新たな文化施設もお目見えし、その斬新な建築も話題になっています。
元老院広場とマーケット広場をつなぐソフィアン通りを散策する小林さん。大聖堂をはじめ、市庁舎、ヘルシンキ大学など、周辺に建つ19世紀のネオ・クラシック建築は、ドイツ人建築家・カール・ルードヴィッヒ・エンゲルの設計。改修されながら今も美しい姿で市民に愛されている。
「19世紀の古い建物が大切に残されている一方で、クールな現代建築も造られています。しかし、それらが素晴らしく調和しているのがこの国らしさ。自らを主張しすぎず、相手をきちんとリスペクトする。フィンランド人の寛容な気質が、街並みにも表れているように思います」
〔小林さん着用衣装〕ニット7万4000円 スカート8万1000円/ともにマルニ(マルニ 表参道) ピアス12万8000円/カオル(KAORU 伊勢丹新宿本店)
お芝居が大好きなフィンランド人。とっておきのシアターは満員御礼
「アモス・レックス」の上階にある映画館「ビオ・レックス」。オープンした1936年当時の内装を修復により再現する。幻となった40年ヘルシンキ五輪のために作られたネオンサインが灯る。
映画『かもめ食堂』の撮影時、小林さんはヘルシンキに1か月ほど暮らし、主人公のサチエを演じました。
俳優生活の中でもひときわ縁の深いフィンランド。この国の人々にとっても演劇はとても身近な娯楽です。
「国民1人あたりの年間の観劇回数は世界屈指。アマチュア劇団の活動も非常に盛んだそうです」と小林さん。
スウェーデン統治下の1748年、海上要塞が建設されたのが、この島の歴史の始まり。現在は観光地でありながら800人のヘルシンキ市民が暮らす。1991年ユネスコ世界遺産に登録。
個性的な劇場や映画館が多数ある中、白夜の季節は屋外劇場が大人気。その1つがスオメンリンナ島のサマーシアターです。
「城壁の中に劇場があるなんて想像もつきませんでした」という小林さんを、上演中の『オリエント急行殺人事件』の主演俳優、クリスト・サルミネンさんが場内へと誘います。
楽屋小屋前に停まる三輪トラックには、サルミネンさんが扮する“名探偵ポアロ”のポスターがラッピング。
オリエント急行のセットが組まれた舞台にて、サルミネンさんと小林さん。サルミネンさんはご両親、奥さまも俳優。
舞台の前後を客席が囲み、場面転換は暗転せずに行うなど、装置も演出も独特。
「毎回、実験的なことに挑戦できるのがこのサマーシアターの素晴らしいところ。世界遺産をこんなに自由に使わせていただけることに感謝をしながら舞台に立っています」。
サルミネンさんの言葉に耳を傾けながら「いつかこんな舞台に立てたら幸せですね」と小林さんも感慨深げです。
【美術館・映画館】
アモス・レックス
美術館「アモス・レックス」の館内。コンテンポラリーアートの企画展にも注目が集まる。
映画館も隠れた名所。
Amos Rex
住所:Mannerheimintie 22‒24,00100 Helsinki
TEL:+358-9-68444633(予約専用、月曜・水曜・金曜13時~16時)
開館時間:11時~18時(水曜・木曜 ~20時、土曜・日曜 ~17時、最終入館は閉館45分前)
休館日:火曜(ショップは無休)
URL:https://amosrex.fi/
※美術館は地下1階。写真の映画館「ビオ・レックス」は2階にある。
【屋外劇場】
スオメンリンナ島 サマーシアター
城壁が囲む劇場の外観。
Suomenlinnna open teatre
ヘルシンキのマーケット広場東端から出発するフェリーに乗船し、約15分。劇場へは港から徒歩15分程度。
6月~8月に開催し、演目は毎年変わる。
上演はフィンランド語のみ。
URL:https://www.suomenlinna.fi/ja/
〔特集〕愛されるデザインと心豊かな時間「北欧の美しき暮らしを訪ねて」(全10回)01 小林聡美さん「ヘルシンキから足を延ばして、自然豊かな古都へ」
02 小林聡美さん「古都・ポルヴォーで名品とともにある暮らし」
03 小林聡美さん「ルート・ブリュックの軌跡に触れる」
04 小林聡美さん「ブリュック作品に出会えるスポットへ」
05 小林聡美さん「ヘルシンキ、知られざるカルチャースポットへ」
表示価格はすべて税抜きです。
撮影/本誌・坂本正行 スタイリング/藤谷のりこ(小林さん) ヘア&メイク/北 一騎〈Permanent〉(小林さん)コーディネート/森下圭子 取材協力/フィンエアー、ホテル ヘイブン、ヘルシンキ・マーケティング、ヴィジット・ポルヴォー
※電話番号の358はフィンランドの国番号です。日本から電話する場合は最初に国際電話会社の番号、次に国際電話識別番号010(auからは不要)を加えてください。1ユーロ=121.80円(2019年7月11日現在)
※施設の最新情報は各HPを参照されるか、または直接各施設にお問い合わせください。
『家庭画報』2019年9月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。