私を受け入れて優しく見守ってくれているこの地になにか恩返しがしたい――。
そんな思いを胸に秘めて自身のYouTubeチャンネルで発信を続けるYouTuberがいる。北海道東部、釧路市の北西に位置する鶴居村在住のりんさんだ。
家賃7000円/月の古民家に住み、畑を作り、海や川で魚を釣り......。
自身が運営するYouTubeチャンネル「りんの田舎暮らし」で日々、村での暮らしの様子を投稿しているりんさん。動画は多くのネットユーザーに支持され、2021年11月23日夜時点でチャンネル登録者数18万5000人を超える人気YouTubeチャンネルとして注目されている。
どこかミステリアスな雰囲気を纏う彼女の動画は、切り取られた風景の美しさ、BGM、ナレーションが見事にマッチし、なんだか海外ドラマのようだ。
一体、彼女はいかにして人気YouTuberとなったのだろう。Jタウンネット記者はりんさんに話を聞いた。
どこか遠くへ行ってしまいたい
「初めて(YouTubeに)投稿した時はまだまだ心がしんどかった時でした」
YouTubeでの発信を始めた当時についてそう振り返るりんさん。最初の動画「22歳で倒産!貧困家なし生活をしていた私が移住するまでの1か月」を投稿した2020年12月は、起業した会社の倒産を経験したばかりで、失意の中にいたという。
大学在学中から起業を志し、「女性が幸せに生きられるお手伝いがしたい」という思いで20年、大学卒業と同時に美容系のお店をオープン予定だった。コスト削減のため、店舗としてお風呂とトイレ付きの住める物件を契約。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言の下、店の運営は困難を極めた。期待していた持続化給付金も対象外となり、ついに20年夏、倒産という苦渋の決断を強いられ、住む場所さえなくした。
「自分のお城も夢も全てがなくなってどこか遠くへ行ってしまいたい」
そんな思いに駆られ、移住を考え始めたりんさん。行き先の候補の一つだった北海道で活躍しているYouTuberに連絡してみたところ、縁がつながり当時住んでいた名古屋から北海道に移り住むことを決意。この出会いをきっかけに、YouTubeを始めた。
「幸い時間は沢山あったのでかなり作り込むことができましたが、途中何度も辛くなり、どうしてこんなことやっているんだろう、本当だったら自分のお城で楽しく仕事してたのに、とか色々考えてしまっていました」(りんさん)
動画の撮影や編集は基本的に一人でできる範囲で行っている。三脚を使ったり、自撮りしたりを繰り返し、一台のカメラで何度もアングルを変えて撮影しているため、かなりの時間がかかるという。釣り堀やオホーツク海でのアキアジ(鮭)釣りなどの動画撮影の場合は、別途カメラマンに撮影を依頼し、動画を作っているそうだ。
「編集は学生時代から趣味でやっていたので結構マニアックな映像作りになっていると思います。見るたびに新しい発見があるような動画になっていたら嬉しいです」(りんさん)
「形は違えど誰かの役に立てる存在になれているんだ」
自身の動画投稿について、「実際目にしたり体で感じないと分からない北海道の姿をお伝えできれば」と語るりんさん。投稿を始めた頃はこれほど多くの人に見られるようになると思ってもみなかったそうで、視聴者には感謝しかないという。
「視聴者様からりんさんの動画で元気が出ました、北海道の景色を見て嫌なことを忘れましたとコメントをいただいたとき、形は違えど誰かの役に立てる存在になれているんだと思えて少し救われました」(りんさん)
りんさんは今後も活動を通して、移住の地・北海道を盛り上げていくことに意欲を燃やす。社会の荒波の中で傷ついたりんさんが北海道の地でいかに再生し、この地にどんな風を巻き起こしていくのか。今後も目が離せない。