おや、東俊希が楽しそうに、笑っている。
トレーニング再開初日の19日、オフ明けの重さがチームに漂うなか、彼の明るさに目を惹かれた。
声をかけた。やはり、笑顔。6月には見られなかった心からの明るさ。
「あの時は確かに、自信を失っていました」
実直に、20歳の若者は語った。
開幕からサイドバックとしてレギュラーを張っていた東だったが、試合を重ねるごとにプレーに精彩を欠くようになった。要因は、彼にもわからない。ただ事実として、5月26日の対浦和戦を最後に、東はポジションを失った。プレーの不調がメンタルにも影響し、チャレンジ精神も見失った。
負のスパイラルにはまった若者。自分自身を救うためには、練習に打ちこむしかない。
「いいボールだね」
クロス練習に夢中で取り組んでいた東に、佐々木翔が声をかけた。
「でも、調子が悪くて」
東が応える。その言葉に主将は鋭く反応した。
「何本失敗しても次の1本で結果を出せばいい。そういうメンタルを持っているのがシュンキだと思っていたけどな」
ハッとした。
そうなんだ。もっと楽観的でいいんだ。自分で自分を責めすぎていたんだ。
「それがいつの練習だったかは忘れちゃいましたが(苦笑)、それ以降は気持ちが楽になった」
ゴール不足に悩む広島だが、「シュンキはクロスに飛び込める選手。彼をシャドーで使うプランはある」と城福浩監督は期待を込める。森島司も「あいつはゴール前でいいポジションがとれる。シュートを決め始めたら、えぐいことになる」と潜在能力を評価する。
誰もが認める才能は、確かに足踏みをしていた。だが、今は違う。
「ワクワクしてサッカーができている。絶対に、やってやる」
広島の反撃は、28日に21歳になる東俊希から始まる。そう信じている。
東俊希(ひがし・しゅんき)
2000年7月28日生まれ。愛媛県出身。広島ユース3年時の天皇杯(2018年8月22日・対名古屋戦)で公式戦デビュー。強烈な左足と高い戦術理解、ダイナミックな攻守、ワイドでもシャドーでも高質なプレーができる多様性が魅力。今年から始めた趣味のゴルフも成長し、ベストスコアは98と100を切った。
【中野和也の「熱闘サンフレッチェ日誌」】