広島が「堅守」と言われると、いささかの違和感を覚える。
トレーニング中も厳しい声が飛び交う。その中心には佐々木翔主将がいる(6月27日撮影)
確かに、今の広島は平均失点0.94とリーグ3位の失点だ。特に5月7日の対鹿島戦以降の7試合では5失点。直近のG大阪戦以外、1度も複数失点を喫していない。
ミニゲームで見事なパスカットを見せた佐々木に「ナイス」「ブラボー」の称賛(6月27日撮影)
ただ、「堅守」という表現は、どうしても「ゴールを守るために、後ろで人数をかける守備」のイメージが強い。広島の守備はあくまでボールを奪うことが前提の攻撃的守備で、リスク承知のやり方。違和感の正体はそこにある。
佐々木翔も「今シーズンの失点が少ないことには、想いが向かない。実際、最近も失点しているから」と言う。
パスをカットしてもすぐに切り替え、相手に圧力をかける佐々木(6月28日撮影)
「むしろ、自分たちからアクションを起こして攻守に闘えていることが、勝利に繋がっている。その方が、僕にとっては重要です」
事実、福岡戦では86分、1点リードという局面で佐々木は一気に相手PA内に侵入し、PKを獲得。セットプレーからの流れもあり、相手陣内に位置取っていたとはいえ、普通ならCBがリスクを冒す局面ではない。
「あの時間帯で点がとれたら、楽になる」
佐々木の言う通りだ。だが、チームとして攻撃にベクトルが向いていないと、この判断にはならない。
1つの練習セッションが終わり、さすがの佐々木もほっと一息。連戦中とはいえ、トレーニングの強度を落とさないのがスキッベ監督の流儀だ(6月27日撮影)
では、そんな攻撃的な広島が、なぜ守れているのか。
「前線からの全員守備が利いているから」とスキッベ監督は語った上で、こうも分析する。
「最終ラインのクオリティが高いことも要因の1つだ」
長谷部茂利監督(福岡)も対広島戦後に「キャプテン(佐々木)を筆頭に(広島の)CBは非常に堅い」と評価している。広島の「リスク上等」のプレスは、佐々木・荒木隼人・塩谷司、そして野上結貴らが控えている「CB王国」だからこそ可能。数的同数や不利でも何とかしてしまうハイレベルな選手がそろっているからだ。
練習のミニゲームで勝利し、ガッツポーズを見せて佐々木は喜ぶ。どんな時も負けたくない。その想いが成長に繋がっていく(6月27日撮影)
「このチームはもっと良くなる。失点をさらに減らして、今のアクションサッカーを突き詰められる」
キャプテンの自信。タイトル争いに向けて、これほど頼もしいものはない。
佐々木翔(ささき・しょう)
1989年10月2日生まれ。神奈川県出身。イギリス人で元サッカー選手の父を持ち、小学校の頃から横浜FMの育成組織でサッカーを学び、水沼宏太(横浜FM)はジュニアユース時代の同期。神奈川県立城山高から神奈川大を経て、2012年に甲府加入。2015年から広島に移籍し、優勝に大きく貢献。野津田岳人は「シオ(塩谷司)くんと(佐々木)ショウくん、ウチにはモンスターが2人いる」と、その能力の凄まじさに敬意を表している。
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