【全米Jr.テニス】急造ぺアがベスト8へと躍進! 齋藤咲良と里菜央が生むケミカルの訳
ポイント間に話しあう時、二人の口元からいつも大きな笑みがこぼれる。
ポイントを決めれば跳ねながら二人でパチンと手を合わせ、落とした時は……やはり跳ねるように、やや控え目に手を合わせる。
少し背が高いのが、シングルス第4シードの齋藤咲良。その実力を発揮しベスト8に進出中。
もう一人は、里菜央(さと・ななか)。予選のワイルドカードから勝ち上がり、本戦でも初戦を勝った。
二人は今回の全米オープンジュニア部門でダブルスを組み、ベスト8に勝ち上がっている。
試合中のあまりに楽しそうな笑顔からは意外だが、ペア結成は今回が初。つい最近まで挨拶すらしたことが無かった、急造ペアだという。
もっともそれも、無理もない。生まれ年こそ同じだが、早くから国際大会を転戦している齋藤に対し、里は国内の高校テニスが中心。コロナ禍の影響もあり、今回が人生で初の海外経験だという。
そんな二人がダブルスを組んだのも、偶然の産物だ。齋藤は当初はクロスリー真優と組む予定だったが、クロスリーが練習中のケガのために直前で棄権。
「サインインの4時間くらい前に、私から里さんに連絡してみました」と齋藤が明かす。
一方の里は、本戦出場が決まってから慌ててパートナーを探すも、見つからず途方に暮れていた折り。
「私にとっては高嶺の花。あのキラキラしている齋藤咲良さん!」からのお誘いに、即効でOKを返したという。
サーブを打つのが里。二人が縦に並ぶ”アイフォーメーション”から、里が針の穴を通すようなコントロールでクロスを決める
コーチ曰く「お互いにシャイ」で、歩んだキャリアも異なる二人。ところが、ぶっつけ本番で試合に挑むと、対比が見事なケミカルを生む。
海外遠征慣れしている齋藤は、大柄な欧米勢にも打ち負けぬストロークの持ち主。対して団体戦が主戦場の里は、ダブルスの経験豊富で、負けぬテニスを知っている。
「里さんはダブルスがすごく上手。ループで相手を崩したり、ロブでペースを落としたり。私も普段はあまり使わないアイフォーメーションを使ったりして、新しいことだらけです」
齋藤がそう笑えば、里は「齋藤さんはストロークが良いので、『大事な時にそこに打つ⁉』って感じで」と目を丸くする。
「めちゃめちゃエグい球を打つので……もう、ありがとうございますって感じです」
そう言い隣の斎藤に、ペコリと小さく頭を下げた。
豪快かつ安定のストロークで相手の壁を打ち破る齋藤
異なる持ち味が相乗効果を生み、1+1が3にも4にもなる二人。
次はどんな化学反応が生まれるか? "お楽しみ急増”ペアである。
齋藤咲良(さいとう・さら)
2006年10月3日生まれ、群馬県出身。2019年エディ・ハー国際ジュニア選手権14歳以下で単複準優勝。今年5月に世界ジュニアランキング2位を記録。
里菜央(さと・ななか)
2006年3月15日生まれ。相生学院高校3年生。今年3月の高校選抜個人戦を制し、全米ジュニア予選のワイルドカードを獲得。そのチャンスを生かし単複本戦で勝ち星を挙げた。
【内田暁「それぞれのセンターコート」】