新型コロナウイルスへの対策に日夜追われている日本政府。しかし、その対応に疑問符がつくことも少なくない。4月1日、感染予防策として安倍晋三首相は1世帯あたり2枚の布マスクを配布すると発表。「ありがたい」「マスク買えないから助かる」といった感謝の声があがるいっぽうで、「なぜ2枚?」「マスクの前に経済対策すべき」といった怒りの声がネット上で相次いだ。
また4月8日に政府は、コロナ禍により収入が減った世帯に条件付きで30万円の現金給付を行う緊急経済対策を発表。しかし、“世帯主の収入がコロナ感染症発生前と比較して半減以上した場合”といった適用条件が厳しくごく一部の人にしか給付されない懸念から「なぜ一律給付にしない!」「意地でも国民にお金は払いたくないんですね」といった批判が巻き起こっていた。
こうした人々の相次ぐ政府批判に対して、声を上げたのは第一線で活躍する各界の著名人たちだ。
4月8日、お笑いコンビ・サンドイッチマンの伊達みきお(45)は自身のブログで「文句が止まらない方は、落ち着いたら選挙に立候補して国会議員になって総理大臣になればいい。家で、関連の番組見てると文句ばかりが目立つ。今は、まず一致団結してコロナウイルスをやっつける事で同じ方向を見ないと乗り越えられないですからね」と批判を諌め、人々の団結を呼びかけた。
ミュージシャンの山下達郎(67)は、12日放送のラジオ番組『サンデー・ソングブック』(TOKYO FM)でこう語っていた。
「いま、いちばん必要なのは政治的なものを乗り越えて、団結ではないかと思います。政治的対立を一時休戦して、いかにこのウイルスと戦うかを、国民のみんなで、また世界中のみんなで助け合って考えなければならないときです。なんでも反対、プロパガンダはお休みになりませんか。責任の追及、糾弾は、このウイルスが終息してからいくらでもすればいいと思います。冷静さと寛容さが何よりも大事です。正確な判断は冷静さでしか生まれません。我々は我々ができることをしましょう」
また、コピーライターとして知られる糸井重里氏(71)も4月9日にTwitterで《わかったことがある。新型コロナウイルスのことばかり聞いているのがつらいのではなかった。ずっと、誰ががが誰かを責め立てている。これを感じるのがつらいのだ》と綴り、連日ネット上を中心に展開される“批判合戦”を憂いていた。
こうした著名人による一連の“批判をやめよう”喚起を称賛する声がSNS上では見られた。
《伊達さんに同感です。また、文句だけしか言わない世間代表の顔したタレントコメンテーターは当面は表に出てほしくないですね》
《冷静さと寛容さ…こんな今だからこそ、心に響く。奥様のまりやさんも素晴らしいミュージシャンですが、 旦那さんの達郎さんも素晴らしいミュージシャンだと思います。心から納得もしたし感動しました》
そのいっぽうで、批判を諌める姿勢に疑問を呈する声も少なくなかった。
《「批判」は「表現の自由」の「表現」の本質でもある。 優れた表現者である山下達郎さんがそれを理解していないというガッカリ感が半端ない》
《サンド伊達さんのように一体感が大好きな人って、なんで政府を責めるなの方向で一体化したがるんだろう。政府を責める方向で一体化したっていいのに。結局はオレの方向に合わせろオマエラっていうメッセージでしかないよね。知らんがな》
《批判やめよう、一致団結しようみたいな人って、それ言ってんのは気持ちいいんだろうけど311の時とか絆、絆って感動ハラスメントの裏で何が起きてたかとかは考えもしないんだろうな。見たくないもんは見ないし考えないんだろうな》
前述した“30万円給付策”は、高まる批判の声を受けて16日に“国民全員への現金10万円一律給付”へと変更された。終息の兆しも見えず、大きな経済的損失を招いたコロナ禍。多くの人々が不安を抱くなかで、声をあげることは果たして”控えるべき”なのだろうか――。