(写真:アフロ)
「羽生くんのお母さんがユーミンのファンだそうで、そんな話も聞けるのではないかと今から楽しみにしています」(羽生のファン)
7月のプロ転向会見以降も、ファンを飽きさせない羽生結弦(27)。12月23日放送の『松任谷由実のオールナイトニッポンGOLD』(ニッポン放送)にゲスト出演することが発表されるなど、年内もギリギリまで楽しませてくれるようだ。
「11月に横浜で開幕したプロ初のショー『プロローグ』は、12月2日から青森県八戸市に場所を移し、計3公演が開催されます。そのチケット争奪戦はすさまじく、当選発表の際はツイッター上の“#八戸全滅”という落選者の嘆きの言葉がトレンド入りするほどでした」(スポーツ紙記者)
ただ、こんな衰え知らずの羽生人気の裏で、羽生なき“アマチュア競技”としての日本フィギュアスケート界からは悲鳴が聞こえてくるーー。あるフィギュアスケートファンは、こう証言する。
「11月18日から札幌でNHK杯が開催されました。例年、満席で会場には熱気がこもっていましたが、今年は空席が目立っていましたね。男子シングルでは宇野昌磨選手(24)が優勝するなど日本選手たちが結果を残していたのにもかかわらず、会場はちょっと寂しい雰囲気で残念でした」
主催の日本スケート連盟の発表では、今年のNHK杯の入場者数は全3日間で合計約1万2千人(1日目3799人、2日目5272人、3日目3005人)。
同会場で行われて羽生が優勝した、’19年のNHK杯は合計約1万8千人(1日目5976人、2日目5986人、3日目5848人)だったから、今年は約3割も減っていることになる。
「3日目のエキシビションの日に限れば、3年前と比べて半減してしまいます。また、テレビ放送の平均世帯視聴率も’19年は13〜16%台だったのに対して、今年は8%前後とこちらも半分ほどに。羽生さんのプロ転向の余波は想定していましたが、まさかここまで顕著に表れるとは……」(スポーツライター)
本誌試算では、今回の入場者数減で、’19年よりも入場料収入は5千万円ほど減るとみられる。
■羽生の活躍した11年間で連盟は20億円以上も“蓄え”増
このような、羽生のプロ転向による日本スケート連盟の収入減が、“競技の衰退”を招くのではないかと懸念するスケート関係者の声もある。
「日本スケート連盟はフィギュアスケート、スピードスケート、ショートトラックのアマチュア競技を統括する団体です。
選手の強化育成や各競技の普及に予算を使うわけですが、その財源は、各種補助金などのほかは、これまでフィギュアスケート関連の利益に頼るところが大きかったのです。具体的にはスポンサーからの協賛金や、大会の入場料収入、テレビの放映料といったものです。
フィギュアスケート人気が低迷すればこれらの収入が減る可能性が高いです。視聴率が見込めないからと放映料も下がるかもしれませんし、“協賛金を払う価値を感じなくなった”というスポンサーも出てくるかもしれません。
収入減により財源が縮小すれば、各競技の強化費を縮小する必要も出てきます。そのために競技力が弱まれば、人気がもっと衰えて、さらなる収入減となり……という悪循環に陥ることも考えられます」
これまで連盟の財務状態は、きわめて良好だった。
「羽生さんがシニアデビューした’10年度時点の日本スケート連盟の正味財産、いわば“蓄え”は、約11億円でした。それが羽生さんの五輪2連覇などに伴って収入が膨らんだことで黒字を積み重ねていき、最新の’21年度の決算では、正味財産は34億円超と発表されています。つまり連盟は、羽生さんの活躍した11年間で20億円以上も“貯金”を増やすことができたのです」(フィギュア関係者)
羽生がプロ転向した今後、連盟はこの“ゆづ貯金20億円”を食い潰していくことになりそうだ。
「各種収入が減ることは必至。“蓄え”がありますから当面は困らないでしょうが、支出を減らすことなどを考える必要が出てくるのではないでしょうか。たとえば大規模な会場での大会開催は控えることになるかもしれません」(前出・フィギュア関係者)
■国別対抗戦の会場変更は羽生のプロ転向の影響か
実は、すでにそうした動きがみられるという。
「連盟は9月に、来年4月に開催される国別対抗戦の会場を、有明アリーナ(収容人数1万5千人規模)から東京体育館(収容人数1万人規模)に変更することを発表しています。連盟は『設営プランの変更に伴って』と説明していますが、これは7月の羽生さんのプロ転向を受けて、観客が減ることを見越し、急きょ、会場規模を縮小したのではないかと見る向きもあります」(前出・スポーツ紙記者)
フィギュアスケート評論家の佐野稔さんは、こうしたフィギュア界の“危機”をどう見ているのか。
「羽生結弦というスターを失ったのは、どうしようもないことです。どんな名選手もいつかは自分の道を選んでいくのですから。いまが転換期ということでしょう。
フィギュアスケートの人気がここまで高まった功績は、長い時間をかけてみんなで作ってきたものだと思っています。しかしやはり浅田真央さん(32)が引っ張って、その後、羽生さんがさらに盛り上げてくれたという部分は確実にあるでしょう。
業界全体で人気を保てるようにやっていかないといけないところではありますが、宇野昌磨選手や鍵山優真選手(19)ら、現在の選手たちに頑張っていただいて、今後もいい成績を残してもらうしかないですね。
あとは、この先どのような選手が生まれてくるのか、羽生選手のような“100年に1人”と言えるほどの選手が台頭するのか、それは神のみぞ知る、といったところでしょうか」
“ゆづ貯金20億円”が使い尽くされて消えるまでに、日本フィギュアスケート界に、新しいスターは現れるだろうかーー。