「小栗旬さんと坂口健太郎さんが参加した先月の『鎌倉殿の13人 スペシャルトークin一宮市』には応募者が殺到し、倍率なんと71倍。今月7日には東京・NHKホールで小栗さんや新垣結衣さんたちが登場するファンミーティングがあり、最終回が放送される18日には鎌倉女子大学で小栗さん、坂口さんに小池栄子さん、宮沢りえさんら豪華キャストがそろうグランドフィナーレが行われます。
近年の大河ドラマで、これほど大掛かりなイベントが行われたことはありません。応募倍率は100倍以上でしょう」(NHK関係者)
最終回まで残り2回となった話題の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』。いよいよ尼将軍・北条政子の名演説で知られる承久の乱が描かれる。
「承久3年5月、後鳥羽上皇(尾上松也)が執権・義時(小栗)追放の官宣旨を出します。朝廷との戦いに動揺する御家人たちの目の前で政子は、夫・頼朝の恩義を説いて鎌倉の一致団結を呼びかけます。それが功を奏し、上皇は敗れ去るのです」(ドラマライター)
前出のNHK関係者は言う。
「クランクアップ直後、小池さんは『もう政子になれないのが悲しい』と言って号泣していました。スタッフも皆、もらい泣きしたほどです」
11月24日、小池は約1年半の撮影を振り返り、複数メディアのインタビューでこう語っている。
「自分が想像していたよりも北条政子という人物を愛してしまって、もう一回初めからやり直したいと思えるほど魅了されました(略)。課題もたくさん見つかりました。恥ずかしくて言えませんが、演出の方からたくさんダメ出しもいただきました。多くの先輩方とご一緒してやはり気持ちだけでは残れない仕事なんだということを痛感しました」
■三谷は《女性を描くのが下手な脚本家》と自虐を
いまや実力派女優の小池がこれほどダメ出しを受けることになった背景には、脚本家・三谷幸喜(61)の強いこだわりがあったという。
「歴史マニアの三谷さんは昔から鎌倉時代に興味があり、“日本三大悪女と称される北条政子は本当に悪女だったのか?”という疑問を常に感じていたそうです。三谷さんは18歳のとき、大河ドラマ『草燃える』の岩下志麻さん演じる北条政子を見て、“いつか政子を描きたい”と願っていたといいます」(前出・NHK関係者)
それから40年以上がたち、三谷はついに政子に挑む。だが、『鎌倉殿の13人 完結編』(NHK出版)でこんな本音を語っていた。
《僕は、女性を描くのが下手な脚本家として知られているので、今回こそは汚名返上したいと思い、女性スタッフの声を聞いて、『女性はこんなこと言わない』など、意見をなるべく取り入れさせてもらいました》
三谷が描いたのは、これまでの既成概念を覆す北条政子像だった。
「夫の源頼朝が死んだ後、弟・義時が闇落ちして独裁化。政子の長男・頼家が義時の刺客に暗殺され、次男・実朝も殺されるなど、愛する息子が次々に亡くなります。“冷徹な政子”を描くのが従来の演出法ですが、三谷さんは尼御台としての威厳を保ちながら母として抱えたであろう大きな苦しみを描く必要性があると考えたのです。そのため、感情的になりすぎず要所要所で怒りや悲しみ、葛藤をこらえる政子の姿を求めたといいます」(前出・NHK関係者)
小池は前出のインタビューで自身が受けた“ダメ出し”の一部についてこう語っている。 「今回ご一緒したチーフ演出の吉田(照幸)監督からも『ちょっとなー、今のつまんないなー』と言われることもありました。なかなかそう言ってくださる監督もいらっしゃらないので、吉田監督との出会いも私にとってすごく大きなものになりました」
制作関係者は言う。
「1年間、出演し続けた主要キャストは小栗さんと小池さん、あとは実衣役の宮澤エマさん、三浦義村役の山本耕史さんの4人です。なかでも三谷さんが強くこだわった政子を演じた小池さんには制作側が注文を出す回数が結果的に多くなってしまったんです。
基本的に三谷さんは現場に来ないので、台本を読んで迷ったら小栗さんも小池さんも三谷さんに直接メールして意見を聞いていました。小池さんは『緊張で眠れない』と三谷さんに悩みを打ち明けることもあったそうです」
■撮了後、三谷は「小池栄子さんの政子がいちばん本物に近い」
ダメ出しを受けた小池の反応はというと――。
「監督に意見する役者さんも少なからずいますが、小池さんの場合はすぐに『すいません』と頭を下げて毎回指示に従っていました。本心では思うところがあるのかもしれませんが、収録時間が押してほかの出演者やスタッフに迷惑をかけないよう、すぐ切り替えて撮影しています。その姿は本当にプロだと思います」(前出・NHK関係者)
小池を20代から知る舞台関係者は、こう語る。
「グラビアから女優に転身して間もないころ出演した舞台で、『お前の下手な演技のせいでチケットが売れない』と制作側に文句を言われ、“いつか役者として見返してやろうと思った”と話していました。小池さんは叱咤をバネにできる役者さん。『鎌倉殿』のスタッフの方々も彼女の気質を理解しているからこその“愛あるダメ出し”だったのだと思います」
本人が苦労してきたからだろう、小池は大河初出演の役者がクランクインすると、さりげなく近づき、緊張をほぐしていたという。
「新垣結衣さんや金子大地くんらに対してもそうでした。大勢の出演者やスタッフに囲まれてこわばる姿を見ると、『今日の屋台のカレーはおいしかったわよ~』などと明るい笑顔で話しかけていました」(前出・NHK関係者)
三谷はクランクアップ後、
「これまで描かれてきたどんな北条政子よりも、小池栄子さんの政子がいちばん本物に近いのではないかと僕は勝手に思っています」
と断言。ダメ出しを受け続けた“女王”小池のクライマックスの演技から目が離せそうにない。