「なかなか母親の写真が飾れなくて。飾りたいんだけど、自分がどう反応するかわかんなくて怖くて。でも7年くらいたってやっと飾るようになったら、子供も『ばあちゃんかわいい』とか話しかけるようになって……。私の中で母親との関係が変わったの」
6月26日、インスタライブでこう語ったのは、宇多田ヒカル(38)。母・藤圭子さん(享年62)が自宅マンションから衝撃的な自死を遂げたのは’13年8月だった。
「圭子さんは18歳、ヒカルさんも15歳でデビューしてトップ歌手にのぼり詰めた“似たもの母子”でした。晩年の圭子さんはギャンブルのため世界を放浪するような生活を送るように。ヒカルさんは“反面教師”として見ていたなかで突然亡くなってしまったのです」(音楽関係者)
死後は藤さんの希望どおり散骨。お墓はないため、遺灰をペンダントとして身に着けているという。母の死から3年後の’16年9月の『SONGS』(NHK)で宇多田は母についてこう語っていた。
「あらゆる現象に母が見えてしまった時期があったんです。い、嫌だなって最初は思っていたんですけど、結局誰しも原点はあって、その原点は母だったと……」
それから5年、冒頭のインスタで“昨年になって、ようやく母の写真を見られるようになった”とこれまでの苦悶を告白したのだ。
「喪失感を断ち切るのではなく、大事に抱えて生きていこうと思った瞬間に初めて自分がちょっと自由になった気がして、母親も自由にしてあげられた気がして……」
■「写真を飾らない選択肢は自己防衛の意味が」
母娘関係改善カウンセラーの横山真香さんは、彼女の変化をこう推察する。
「普通は大部分の人が故人の写真を飾ります。それが癒しになり悲しみを和らげることにもなります。しかし、心の準備もなく突然亡くなった場合、残された人は罪悪感を感じることが多いです。故人の写真を見て“助けられたかもしれない”と感じ負の意識が増殖してしまう。写真が自分の心理状態を映す“鏡”となってしまうのです。宇多田さんのように母への愛憎が強ければなおさらです。写真を飾らないという選択肢は自己防衛の意味があったのかもしれません」
宇多田は’15年7月に長男を出産してから、母との記憶を振り返ることが多くなったという。
「子育てしていくなかで出てきた数々の疑問を『こんなとき、お母さん、どうしてた?』と心の中で問いかけることが増えたといいます。疑問が解決したら“お母さんのおかげ”と感謝できるようになったそうです」(音楽関係者)
前出の横山さんも言う。
「宇多田さん親子のように、故人の写真を見て親子や友人で話すことが心の回復のプロセスとなり、心の安穏にもつながるのです」
母の写真を眺めながら長男と交わす会話は、宇多田にとってかけがえのない時間となっているーー。