ジャケットの襟に花びらがあしらわれたご成婚時のローブ・デコルテ /(C)JMPA
ファッションデザイナーの森英恵さんが8月11日に亡くなった。96歳だった。
自身の名前を冠したブランド“ハナエモリ”は65年に初めてニューヨークで個展を開催。77年には日本人として初めてフランス・パリのオートクチュール組合に加入するなど、名実ともに日本を代表するファッションデザイナーとして活躍した。
さらに美空ひばりさんのコンサート衣装や、バルセロナ五輪日本選手団の公式ユニフォームなど、数々の作品を残した森さん。93年には、雅子さまがご成婚当日にお召しになったローブ・デコルテも手掛けた。
森さんは同年、本誌のインタビューにローブ・デコルテの制作秘話を明かしている。
「雅子さまは以前から私のブティックにもときどきいらしていたそうですが、私自身は面識はございませんでした。もっとも、お父さまとは会合やパーティでお目にかかっていましたし、お母さまもお店のお客さまとして存じ上げていました。
それで、『ご両親もとても素敵な方だから、さぞかし雅子さまも……』と想像していたんです。実際にお目にかかると、ほんとうに素敵な方でしたね」(以下、カッコ内は当時の森さんの発言)
ローブ・デコルテ用の生地を受け取ったのは、納采の儀の翌日。美智子さまから、わからないことは三笠宮妃の百合子さまに伺うよう伝えられ、日本でのローブ・デコルテの細かい決まりについて教わった。1週間ほど生地を机の上に置いて眺め、アイディアを膨らませていき、最終的に3点くらいのスケッチを用意したという。
そうしてデザインされたローブ・デコルテは、襟に花びらがあしらわれたジャケットが印象的だった。
「襟に花びらをつけましたのは、雅子さまはバラの花のような方だと感じました。華やかで匂い立つような白いバラはほかの色のバラよりも匂いがさわやかです。それで、あれを思いつきましたの」
製作中は、社内でも極秘だったそう。6人くらいのチームで、アトリエに鍵をかけて作業にあたった。
「ご成婚が近づくにつれ、雅子さまは、お体がだんだんほっそりとされて。仮縫いでいらっしゃるたびに寸法をお詰めしました。
雅子さまは洋服がお似合いになるプロポーションです。背も高いし、歩き方も自然だし、ウエストラインはキュッと締まっていらっしゃる。特に、肩が安定していらっしゃったので、肩パッドで加減する必要はありませんでした。シルエットがきれいにきまっているんです。理想的な体形ですね」
歴史に残る作品を手がけた森英恵さん。これからもその美しいデザインは人々の記憶に残り続ける――。