(写真提供:NHK)
2021年に放送された「第72回紅白歌合戦」の平均世帯視聴率は、午後9時から11時45分までの第2部が史上最低となる34.3%(関東地区、ビデオリサーチ調べ)だったと明らかになりました。
この数字は、過去最低だった2019年の37.3%を大きく下回る結果。関係者には衝撃が走っているといいます。
筆者は毎年紅白歌合戦を鑑賞し、そしてレビューを書かせていただいています。毎年とても楽しく見ていたのですが、昨年に関してはある違和感を抱きました。
それは、「どっちつかずで中途半端」というものです。
■テーマは「カラフル」でも、紅白歌合戦
2021年のテーマは「カラフル」。多様性が重んじられる今の時代を反映し、紅白という垣根を超え、誰もがその人の“カラー”で楽しめる歌謡番組を目指すというコンセプトです。
しかし、そのテーマのブレを前半に感じることとなります。それは例年と同じように「紅組が良かったと思う人〜白組が良かったと思う人〜」と、中間投票を当たり前のように始めたのです。
「紅白の垣根を超えた歌謡番組を作ろうがコンセプトなのに、紅白投票は普通にやるんだ……」という素朴な疑問。そしてこうした例年どおりの番組進行を見ていると”結局は多様性というテーマを番組としてクローズアップしただけ“という表面的な解釈すら感じて、個人的にはかなり萎えてしまったのです。
もちろん多様性は大切です。しかし本当に多様性を重んじる番組にするのであれば”カラフルの名前そのままに、紅白というくくりを投票も含めて今年は全部取っ払う“くらいの思い切りがあっても良かったのではないでしょうか。
■バラエティ番組なのか、歌謡番組なのか
そしてもう1つの違和感は、番組の構成がバラエティ番組なのか歌謡番組なのか分かりにくかった点にあります。
前回と比較して小ネタやトークといった部分を大幅に削り、また審査員の人数も6名と非常にコンパクトにして行われた2021年の紅白歌合戦。歌唱中の演出は例年どおり素晴らしいものでした。
とはいえ途中途中に「M-1グランプリ」の演出が入ってきたり、司会の大泉洋さん(48)のトークが昨年に引き続き炸裂したり、いきなり細川たかしさん(71)と歌いだしちゃったりなど、非常に面白さと合わせて混乱する部分もありました。
個人的にはこうした演出は好意的に受け止めるタイプなのです。とはいえスタンスとして1年の締めくくりとしての歌番組なのかバラエティ歌番組なのか分からず、見る側として温度感をどう保ったら良いのか分かりにくい部分があったように思います。
■全部風のように持っていった藤井風
筆者は普段あまりテレビを見ないのですが、1年のトレンドを追いかけるにあたって紅白歌合戦はとても大切な情報源の1つ。そのため、毎年視聴しています。
そんな今年も多くの時代を反映するアーティストが出演するなか、今年は藤井風さん(24)が風のようにすべてを持っていった感があるなと感じました。人気なのは知っていましたが、ここまでとは……。
まさかの隣で視聴していた母親(60代)まで「かっこいいわ」とつぶやいていたのですから。藤井風の魅力、恐るべし。
バズりネタがあったとはいえ、全体的に見るとこぢんまりとまとまり、視聴率も振るわなかった紅白歌合戦。2022年はそれを踏まえ、どういった演出に変わっていくのでしょう。抜本的な変化をするのか。もともとの形に戻すのか。1年後が今から楽しみです。
(文:おおしまりえ)