中絶トラブルが報じられた坂本勇人選手(写真:時事通信)
9月10日に文春オンラインで報じられた、巨人・坂本勇人選手(33)による交際女性との中絶トラブル。
記事ではLINEの内容とともに、女性へのぞんざいな扱いの数々が生々しく書かれている。
女性にアフターピルを飲むよう要求し、自身は避妊をせず行為に及んでいたこと。また女性が妊娠してしまったことを告げると、中絶を求めていたこと。そうした所業が報じられると、批判の声が殺到した。
すでに双方が代理人弁護士を立て、示談は成立しているという。芸能界であれば“即追放”モノの事案だが、巨人は今日まで坂本への処分を行っていない。坂本自身、試合にも普段と変わりなく出場し続けている。
また17日には、文春オンラインが続報を掲載した。内容は、ワイドショーのスタッフがグループチャットに《文春に出てた巨人坂本選手のネタ、取り扱いNGです。巨人からこれを扱ったら、長嶋さん関連の情報を渡さないとなっているそうです…》というメッセージを送っていたというもの。実際にスポーツ紙やテレビ局は現在に至るまで騒動をスルーし続けている状況だが、記事のなかで巨人はメディアへのニュース抑制の事実について否定している。
同意の上での関係であり、すでに示談が成立しているとのこと。だがモラルやコンプライアンスが叫ばれる今のご時世において、お咎めなしの対応は時代錯誤だとの指摘も後を絶たない。
そんななか、コラムニストのおおしまりえさんは「長い目で見ると、業界への不信感の火種になりかねない」と話す。以下、その危険性について語ってもらったーー。
■「ただの男女トラブル」と片付けていいのか
スポーツ選手の男女トラブルは、近年のスクープ合戦も相まって私たちの目により入ってくるようになりました。
昨年には、元千葉ロッテマリーンズの清田育宏選手(36)に不倫報道。先日も、横浜DeNAベイスターズの田中健二朗投手(32)の不倫DV報道が出たばかりです。ちなみに清田選手は契約解除されたものの、後に「処分は違法で無効」として球団を提訴。いっぽう、田中投手は「処分は検討していない」と球団からコメントが出ています。
坂本選手のおこないも現時点では「お咎めなし」とのことですが、それに対して批判の声が多数あがっています。
一昔前なら、今回の話もイチ選手の男女トラブルで片付けられていたでしょう。しかし近年は性加害やDV、モラハラといった行為への危機感も高まり、こうしたトラブルに世間は敏感です。
坂本選手の行いは、法的に違法性がないのかもしれません。ただ女性側の好意を利用した無茶な要求は、見方を変えれば“優位的な立場を利用した性的DV”とも言えなくはありません。
示談がすでに成立しているからお咎めなしでコメントもなしというのは、結果だけを見れば正当性があるように感じます。しかしやり取りの内容を見るに、ただの男女トラブルで済ませるには行き過ぎている気がしてなりません。
球団側の対応とあわせて、今回のスクープには野球界の社会的規範性が問われているように思います。
■無視することで、今後どのような影響があるのか
「スポーツ選手は結果で見返せば良い」
これは今でも一定の認識としてあることです。過去にはスクープ後に結果を残し、好感度を回復させた選手もいます。
坂本選手は名実ともにスター選手であり、巨人のみならずプロ野球界にはなくてはならない存在といえるのかもしれません。それは認めるとしても、今回の件はただのトラブルで済ませてしまうには社会的な問題をはらんでいます。また、世間への誤った認知をすすめる可能性も秘めています。
具体的には軽々しく中絶を口にしていたことや、アフターピルを正しくない方法で使用していたやり取りなどです。本記事をきっかけに、世間一般への良くない知識の流布へ繋がることも考えられます。
さらには分別のわかる大人なら、こうした問題も割り切って受け止めるのかもしれません。しかし野球というスポーツを愛し、これから志す若い世代への影響も気になります。
「違法性はないが、良くないこと」を力のある側が封じるというスタンスは、ネットという自由な情報発信の場ではもはや封じきることができないものです。今回もワイドショーでの取り扱いNGについての報道がでています。そういう状況で逆にほとぼりが冷めるのを待ちながら結果で返そうとする今回の選択は、果たして正しいといえるのでしょうか。
(文:おおしまりえ)