「今回の大河ドラマの脚本を務める三谷幸喜さんが小栗さんを主演に推したのは、『彼の演技は高倉健さんに通じる』と絶賛していたからなんです」(NHK関係者)
9日から始まる大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(NHK)。主演の小栗旬(39)は北条義時役を演じる。
「鎌倉幕府を作り上げた源頼朝のもとには、源氏の家人や京都から新天地を求めてきた貴族など、さまざまな人が集いました。彼らは自らの主という意味を込め、頼朝を『鎌倉殿』と呼びました。
頼朝の死後、継承した息子・頼家を支える存在として選ばれた重臣の一人が北条義時でした。義時は勢力争いの末、初代執権となった父・時政とも対立。姉・政子と一緒に幕府の実権を掌握して第2代執権にのぼりつめます」(地元紙記者)
昨年6月9日のクランクイン時に小栗は北条義時役について、こうコメントしている。
《「源氏とか平家とか、そういう人たちに気を遣いながら生きていきたくないんだ」という世の中を目指す義時の気持ちを、ブレずに持って演じていきます》
三谷が小栗と最初に仕事をともにしたのは今から12年前の3夜連続スペシャルドラマ『わが家の歴史』(フジテレビ系)だった。平均視聴率20.3%を記録した。三谷は20年1月8日の大河制作・主演発表会見で実際に当時の思い出をこう振り返っている。
「高倉健さんの若い頃を1シーンだけやっていただいたのですが、実際小栗さんは高倉健さんと似ても似つかないんだけども、映像を見たとき健さんにしか見えなくて。この人は本当に気持ちから入っていく人なんだ、物まねとかではなく、心から高倉健を演じたから高倉健に見えたんだと感じまして、この人と一緒にまた仕事したいなと思いました。(略)
この義時という人物はただ強く優しくかっこいいヒーローではなく、すごく人間的なずるい部分とか、酸いも甘いもかみ砕いた男なので、それを小栗さんにやっていただくのは楽しみです」
■高倉健さんは50代になって先祖が北條篤時だと知った
前出のNHK関係者は言う。
「実は三谷さんが今作に関して高倉健さんの名前を出したのは、誰もが知る国民的名優だからという理由だけではありませんでした。知る人ぞ知る話ですが、高倉さん自身が鎌倉幕府の歴代執権を務めた北条氏の末裔だからなのです。歴史に詳しい三谷さんが、その事実を知らないはずがありません。頭のどこかに北条氏=高倉健さんのイメージがあったのでしょう」
実は、私生活をほとんど明かさなかった高倉さんが還暦時に刊行したエッセイ『あなたに褒められたくて』(集英社)で、自らのルーツを明らかにしている一節がある。
「健さんは50代になって自分の先祖が北条篤時だと知ったというのです」(映画関係者)
北条篤時は小栗演じる北条義時のひ孫にあたる。
「1333年、篤時は鎌倉幕府滅亡の際、14代執権の高時とともに自害しました。篤時の子供たちは周防(現在の山口県)の大内氏に仕え、その子孫が北九州で両替商『小松屋』を営み財を成し、小田姓を名乗るようになったといいます。健さんの本名は小田剛一です。ちなみに篤時の父・実時が横浜市金沢区に設けた金沢文庫は歴史的に有名。健さんが読書家だったのもうなづけます」(地元紙記者)
鎌倉幕府隆盛の礎を築いた豪将・義時と、鎌倉幕府滅亡時に自害した悲劇の武将・篤時ーー。北条氏滅亡後、その霊を弔うため足利尊氏が歴代執権の屋敷跡に建立した宝戒寺の法要には高倉さんの名前でお供え物が贈られていた。
「鎌倉市にあるこの屋敷を建てたのが、小栗さん演じる義時だといわれています」(前出・地元紙記者)
また、同寺から歩いて数分には、3代執権・泰時が建立し、高時と篤時らが自害した“北条氏終焉の場所”という東勝寺跡の「腹切やぐら」があり、高倉さんの名が記された塔婆が立っていた。
■健さんが綴った《ぼくの血が平静ではいられなくなる》
生前、高倉さんは盟友の小林稔侍(80)とともに何度も現地を訪れたとエッセイに綴っている。
《宝戒寺は秋の白萩、また冬の椿が美しい寺だ。その花々にも北条一門の魂が宿っている気がする》
《何度訪ねても、そこではぼくの血が平静ではいられなくなるらしい》(『あなたに褒められたくて』)
地元関係者は言う。
「ご住職も『高倉さんはいつも背筋を伸ばして決して姿勢を崩さない、礼儀の正しいご立派な方』とお話されていました」
実は5年前、そこから車で10分ほどのお寺に、高倉健さんの慰霊碑も建立されていた。
「こちらのお寺も、北条氏が開祖です。高倉さんは浄土宗と深いかかわりがあり、北条氏が自分のルーツという強い自覚もあり、ご遺族が慰霊の墓碑として建てられたといいます。墓碑の高さは高倉さんと同じ180cm。ご本人の映画人生の節目となる年に段差が作られています。今も毎月のように、ご遺族やファンの方々が定期的に献花されています」(前出・地元関係者)
慰霊碑の建立と同じ年、高倉さんの魂を小栗が受け継ぐ一幕もあった。
「健さんの遺作『あなたへ』など、数多くの主演映画を手掛けた降旗康男監督が、“健さんに捧げる作品”として最後にメガホンをとった『追憶』(17年)にも小栗さんが起用されています」(映画関係者)
テレビウオッチャーの桧山珠美氏は小栗旬と高倉さんの共通項は「男気」「人望」だと断言する。
「健さんは演技力だけでなく、高級腕時計を贈ったり、達筆な手紙を送るなど、人柄でも多くの共演者やスタッフに慕われていました。一方の小栗旬も同じ事務所の田中圭はじめ、松本潤、生田斗真、尾上松也、藤原竜也など“小栗会”と呼ばれるほど人脈が広い。さらに健さんは『ブラックレイン』、小栗は『ゴジラvsコング』でハリウッド進出も果たしています」
北条氏末裔の高倉さんと700年を隔てて続く歴史的な縁。小栗がどんな北条義時を演じるのか期待大!