‘22年に家計を直撃した値上げの猛威は、どうやら年が明けても収まることはなさそう。さらなる負担が続々とのしかかってくる現実を前に、いまから十分な心の準備をしておくことが大切だ――。
“値上げ”という厄介なワードは、どうやら来年も、私たちの頭から離れてくれないようだ。
帝国データバンクの調査によると、‘23年に値上げが発表された食品はすでに4,425品目にのぼる。
「‘22年の1月から3月では値上げ品目が3,553と発表されていたので、すでに今年を上回る値上げ品目数といえるでしょう」(全国紙経済部記者)
さらに同調査によると、‘22年の食品値上げ率平均が14%だったのに対し、発表されている‘23年の値上げ率平均は17%。
さんざん値上がりした今年よりも3ポイント高い水準になっているのだ。
ここ1~2年、値上げが発表されるたびに家計管理に神経をとがらせてきた私たちにとって「まだ続くの?」とうんざりな値上げ通達。
市場の動向に詳しい経済評論家の加谷珪一さんが、止まらない値上げの構造をこう説明する。
「この数年の値上げは、石油・天然ガスの高騰を端緒に、小麦などの原材料費、輸送費、人件費と、全方位での価格上昇が要因。さらに、ロシア・ウクライナ戦争や欧米各国のインフレの影響が拍車をかけたのです」
そして’23年も「値上げは収束しそうもない」と加谷さんは言う。
「製造コストの高騰の幅からすれば、メーカー側は本来2~3割の値上げをしたいはず。
しかしいきなり20%値上げと発表すれば、消費者心理として“買い控え〟を招き、売り上げが減少してしまいます。
そこで1回の値上げ率を10~15%程度にとどめ、来年以降などにもう一度値上げを発表する企業も出てきているのです」(加谷さん・以下同)
では、来年の値上げによって、2人以上の世帯の家計負担はどれくらい増すのか
加谷さんに、総務省の家計調査をもとに予測してもらった。
「商品価格が上がれば、買うこと自体を控えるなどの消費者行動が現れます。家計調査はそういったものを含んだ消費結果を表す指標です。
しかし、『食料』『水道・光熱』『住居』の3項目は値上げされても生活を維持するために一定分は消費せざるをえず、値上げ分の負担が家計に大きく影響します」
「食料」「水道・光熱」「住居」は家計支出の大部分を占める3項目。
まずは最も支出額が大きい食料の負担増額について解説してもらった。
「来年も、菓子類、調味料、小麦製品など幅広い食品の値上げが発表されています。
それでも全商品が値上げされているわけではないので、来年の値上げ食品が平均17%上がるとすれば、‘23年は食費全体にならすと6%ほどの値上げ率になると予想されます。すると、月額では4,813円の支出増となってしまうのです」
そして水道・光熱費は、「ほかの品目よりも値上げしやすいジャンル」だと加谷さん。
■水道・光熱費が値上げされやすい理由とは?
「電気代やガス代は、原材料となる原油価格の上昇をそのまま反映しやすいもの。各電力会社の価格は値上げ幅の上限に達してしまっているため、さらなる値上げを経済産業省に申請中ですが、‘23年内に2~3割は上がると考えたほうがよさそうです」
ただし、節電を心がける人も増えており、プロパンなど都市ガスほど上がっていないガスの利用者も一定数いることを考慮すると、「最終的な支出は20%程度増え、月額5,099円の支出増となることが予想されます」
政府は電気代の支援政策を進めているが、これでは焼け石に水だ。
最後に住居費に関して。
ライフルホームズのデータによると、東京都の標準的な賃貸マンションの賃料が過去3年間で約2.23%上昇しているというが……。
「不動産会社などが公表している賃料は、あくまで表面的な金額であり、参考程度のため正確な数値とは言い切れません。しかしここ数年、住居費が徐々に上昇し続けているのは事実です。それらを総合的に判断すると ‘23年は、およそ10%程度の上昇幅が考えられ、月額1,937円の支出増となるでしょう」
これらの主要3項目を合算するだけでも‘23年の2人以上の世帯の支出では「月額11,849円の負担増となる」と加谷さんは導き出した。
年間では14万2,188円もの負担増になってしまうのだ。
ほかにも日用品、レジャー費の値上がりが予想され、これ以上の負担も十分考えられるという。
家計負担が拡大するなか、私たちができる対策とはいったい――。
「食費は家計支出の多くを占めるとはいえ、これを削るのは心身ともに健康的とは言えません。従来の支出から削るなら、車や家電といった大きな出費でしょう」
この冬、まさにライフラインとなる電気代も、「節約に縛られないほうがいい」と、加谷さんは次のアドバイスをくれた。
「もし、10万円程度の初期費用を投じる余裕があるのなら、家の窓を二重窓にプチ改装するだけで、その後に暖房にかかる電気代が劇的に安くなります。私も自宅を二重窓にしたら、室内の上下の気温差も大きく改善されました」
支出を“ケチる〟だけが節約ではないのだ。
‘23年の値上げ負担を事前に把握し、できる対策を、いまから打っていきたいところだ――。