美容家の佐伯チズさんが6月5日、ALS(筋萎縮性側索硬化症)のため76歳で逝去した。所属事務所が9日に公式サイトで発表した。
今年3月23日、ALSに罹患したことを公表していたチズさん。その際に公開された動画では、「半年ほど前から右脚に違和感を感じ、昨年末には思うように動かすことができなくなりました」と報告していた。
また視聴者「自分の健康・元気。これがあってこそのキレイだということを忘れないで」と呼びかけ、「それを実践してきたつもりだったんですよ。健康で元気だったんですけど、急に脚が動かなくなって、教えていただいたのがこの結果だったんですね」と心境を明かしていた。
だがチズさんは「夢は薬、諦めは毒/願えば叶う。決して諦めませんから」と病に立ち向かう姿を見せていた。
病気を公表してからわずか2カ月あまり。チズさんを追悼する声が溢れている。
《ALS闘病を発表されたばかりだったのに。早すぎます。たくさんの美容法を教えていただきました。ありがとうございました。心からお悔やみ申し上げます》
《美容のカリスマ、佐伯チズさんが...ご冥福をお祈りします。これまで沢山ステキな発信をありがとうございました》
美容家でタレントのIKKO(58)も、Twitterで《大先輩の美容家・佐伯チズ先生 数々の偉大なる功績は、私達、後輩の道標でありました》と深い敬意を表し、《今朝、訃報に触れ、ただただ驚きでしたが、天国で、ゆっくりお休みになってください。心からご冥福をお祈り申し上げます》と偲んでいた。
これまでチズさんは美容業界に数々の偉大な功績を残してきた。20歳で上京したチズさんは、「ゲラン」をはじめとするフランス化粧品メーカーで約35年勤務。その後、転職した「クリスチャン・ディオール」を03年に定年退職し、美容家として独立。エステティックサロン「サロンドール・マ・ボーテ」を開業し、現役エステティシャンとして活躍した。いっぽうで美肌塾も開講し、チズさんのノウハウを広く伝授することにも力を注いだ。
定年退職とほぼ同時に出版した初著書『佐伯チズの頼るな化粧品! 顔を洗うのをおやめなさい!』(講談社)は、ベストセラーに。現在40冊にものぼるチズさんの著書は、一貫して「お金をかけずにお肌も心もきれいに」がテーマだったという。
チズさんはテレビや雑誌でも引っ張りだことなり、“美容のカリスマ”とも呼ばれた。なかでもチズさんが提唱した、水で濡らしたコットンに化粧水を含ませて湿布のように顔に貼り付ける「佐伯式ローションパック」は一躍ブームに。
チズさんはスキンケアの基本として普及するように、「ロ(6)ーションパ(8)ック」という語呂から毎年6月8日を「ローションパックの日」とも制定していた。
順風満帆なキャリアに見えるチズさんだが、過去には信頼してマネジメントを任せていた女性・Aさんに会社を乗っ取られかけたことも。そのため、個人資金2億円を使途不明のまま失ってしまったという。チズさんは17年11月、本誌にその事情を明かしていた。
「Aが勝手に、『佐伯は高齢ですから』と仕事の依頼を断っていたんです。私のあずかり知らないところで新製品の開発もしていました。新規事業は失敗し、経費ばかりがかさむ。縮小するかじ取りをしたときは、後の祭りでした。登録商標の大部分、顧客情報も奪われ、すべてを失いました」
だがチズさんは希望を捨てなかった。チズさんが42歳の時に、肺がんで亡くなった夫・有教さん(享年52)の“声”に励まされたという。生前に「がんばれ。きっと乗り切れる」と有教さんが励ましてくれたことを思い出したチズさんは、「前を向いて生きなければと思いました」と語っていた。
そんなチズさんは、美容家としての信念をこう明かしていた。
「私は、人さまをきれいにしてさしあげたい。その一心で施術をしてきました。お金のためでも、名前を売るためでもない。真心を尽くせば、それは必ず自分にも返ってくるんです」
チズさんの遺志はこの先も受け継がれていくのだろう。