強化試合で湯浅京己と話すダルビッシュ(写真:アフロ)
侍ジャパンを大谷との二枚看板として引っ張るダルビッシュ有(36)。若手を引っ張るリーダーシップでも注目を集めている。
「MLB組では唯一キャンプから参加しました。スター軍団に気後れしていた宇田川優希投手を囲む会を開くなど、細かな気配りでチームをまとめています」(スポーツ紙記者)
面倒見のいい“アニキ”といった様子だが、もともとは人見知りだったと母の郁代さんは本誌に語っていた。
「有はハーフであることが理由で、ずいぶんつらい思いをしました」
イラン人の父と、日本人の母の間に生まれたダルビッシュは、周囲との違いに悩む少年だったのだ。
「野球を通して少しずつ友達を増やしていきましたが、いまでも知らない人の前に出ていくのは苦手だと思います」(郁代さん)
やがて野球の才能を開花させ、甲子園を沸かせるほどの選手となったダルビッシュ。だが自身の活躍と反比例するように悩みが大きくなっていったのが、弟・翔(33)のことだった。
「サッカーで挫折した翔さんは、たびたび警察のやっかいになってきました。ドラフトで巨人がダルビッシュ指名を見送った理由ともいわれています。兄が沢村賞を受賞するなど大活躍だった’07年にも強盗致傷で逮捕。大きく報じられました」(前出・スポーツ紙記者)
有名選手となった自分と常に比較される弟の気苦労を思ったダルビッシュ。オフには実家に帰り、弟と向き合ったという。
「兄弟で寝る前によく話し込んでいたそうです。あるとき、ダルビッシュが『俺が野球やめたらいいんか?』と涙ながらにつぶやいたことがありました。自分が引退したら更生してくれるのかという意味でしたが、弟の翔さんは『そんなこと言わんといてくれよ!』と初めて泣きながら謝ったそうです」(前出・スポーツ紙記者)
これまでに逮捕11回を数える翔だが、ダルビッシュの“血涙談判”もあり、ついには救われたのだ。兄の思いを受け止め更生した弟は、いまは大阪・西成でボランティアの炊き出しを続けている。
《この前、兄貴と久しぶりに長いLINEをやりとりしたんですけど、ちょっとジーンとしましたね。詳しくは言えませんが「どんなことになっても、俺が弟としてお前を見切ることはない。そこだけは勘違いするな」っていうことが書いてありました。本当に、愛ですよね》(’21年「アエラドット」ダルビッシュ翔インタビュー)
しかし、ダルビッシュ兄弟の苦難は続いている。もう一人の弟、賢太(31)が精巣がんを患ったのだ。ダルビッシュは抗がん剤治療を続ける賢太に、WBC壮行試合で特別席を用意。サムライたちの大きな背中を見せた。
成功と苦悩が常に同居するダルビッシュ。そんな男だからこそ、チームでも家族でも、アニキと慕われるのだろう。