《村田雄浩さんと濱田マリさんのお二人が、(一部略)言葉ではなく、私たちはここにいるから大丈夫だよっていう空気を作ってくださいました。一気にお二人との関係をつくれたような、みんなで手を取り合えた気がして、とても大事なシーンだったなと思います》
深津絵里(49)がヒロイン・るいを演じるNHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』が1月25日に番組最高となる視聴率18.5%を記録した。そんな深津が深い感謝の意を示したのが、岡山から単身で大阪に出てきたるいを親のように温かく見守り支えた竹村クリーニング店の夫妻役を演じた村田雄浩(61)と濱田マリ(53)だ。実は今回の朝ドラで、深津の最初の撮影シーンだったという。
竹村平助&和子夫妻を演じた2人が本誌で、撮影の思い出を語り合ってくれた。
村田雄浩(以下村田):初日の撮影で岡山編から一気に『大阪やで〜』とドラマの色を変えてくれた深津さんと濱田さんに逆に感謝しています。僕はそれに乗っかって、おどおどしてただけなんで(笑)。
濱田マリ(以下濱田):つらかった岡山編から、うれしいアクシデントで大阪の私たちと出会う勢いを台本から感じ取りまして。「これは私の出番じゃ〜大阪のおばさん出動!」と始めました(笑)。子どものいない竹村夫妻の根本にあるのが「るいちゃんLove」&「るいちゃんファースト」なんです。
村田:そう、われわれ夫婦は人を見る目はあるんですよ(笑)。そこにこんなかわいいいい子が来てくれた。生きたいように生きて、幸せになってほしいとわれわれは願っていて、何があっても見守っているんです。
濱田:私たちにとって今作は、令和の『竹取物語』。るいちゃんはかぐや姫なんですよね。「おじいさん! こんなに美しい子が私たちのところにきてくれた。でも泣いてる、どうしましょう?」と。過去のことを探り出す野暮なことはしないし、適度な距離はとる。そして何があっても受け止める。
村田:そうそう。僕は、深津さんとるいちゃんがオーバーラップしているんです。芝居もうまいしかわいい深津さんだけど、メークをして衣装を着て本番に近づくにつれ、もうるいちゃんになっている。とても素敵で尊敬しています。
濱田:スタジオに入ると、村田さんがいつもクリーニングのアイロンがけの練習をされていました。実は私の実家もクリーニング屋で、祖母が和子と同じように、赤い糸で名前を刺しゅうしていたんです。
村田:僕もアイロンが好きになって。家族の服のアイロンがけするようになりましたね(笑)。
■「深津さんと芝居以外で話すのはおこがましい」(濱田)
濱田:撮影に入る前、私はまず深津さんの姿を探すんです。朝イチ、深津さんは気配を消しているんですけど、輝きが隠せなくて光り輝いてて。「おはようございます」と、朝の挨拶はするんですが、もうときめいてます(笑)。その愛があふれて我慢できなくなると、コソッと村田さんに「あの新しい衣装かわいいな」「あのマフラーの巻き方、ヤバない?」と言いに行くんです。
村田:(うなずいて)あの、お鍋持ってジョー(オダギリジョー)に会うときのマフラー姿、やばかったな〜(笑)。るいの存在、佇まいが美しいしいとしい……。
濱田:そう。泣いているるいちゃんを「よしよし」する場面があったんですけど、本当ならギュッと抱きしめたい。でも、何か違うな〜と思って。親のように接してくれているけど、やはり距離はあって。本当に“かぐや姫”なんです。すごく大好きだけど、お芝居以外で深津さんとお話しするのは、おこがましい感じがして無理なんです。
村田:わかる。僕も、深津さんは芝居以外の交流がなくても、存在してくれるだけでいい存在。以前なら皆で食事したりなどがありましたが、このコロナ禍、本番を全力で楽しもうという気持ちがあふれているこの素晴らしい現場で十分。
濱田:私も、るいと和子のままでいたい。そんな大切な存在です。
村田:最終的には大きな月(大月錠一郎)に、“かぐや姫”はお返ししたわけだからね、僕たちは。
るい=深津さんへの愛が止まらない2人の思い出に残る場面とは。
村田:僕はジョー君には申し訳ないけど(苦笑)るいちゃんが片桐(風間俊介)に初デートに誘われた場面。僕らと町内会長の笑福亭笑瓶さんが耳をダンボにして3人同時にコップの水を飲んで……。
濱田:そうそう。私もそこ好き。
村田:コップを置くのもあうんの呼吸で同時で。るいちゃんを見守る僕たちと常連さんの優しく温かい気持ちが見えた気がして大好き。
■「プロポーズの場面、どこで正座するか話し合いを」(村田)
視聴者が涙ぐんだのが、錠一郎が竹村夫妻に「サッチモちゃんを僕にください」とプロポーズしたシーン。戸惑うるいに竹村夫妻は“温かい親心”で、るいの幸せへと背中を押した名場面だ。
村田:『いつまでもおられても困るわ』と切り出した和子さんの言葉を要約すると「私たちは、あなた(るい)が通り過ぎていく1つのオアシスでいいんだよと。自由に好きに、私たちから巣立っていってね」なんです。このせりふに僕は、感情がグワ〜ッと来てしまった。
濱田:そう言わないと私たちに恩を感じて、るいがためらってしまうから。和子が優しく突き放し、平助さんにバシッときめてもらう。
村田:ジョー君が正座して「僕にください」と言う場所は話し合いました。部屋の畳ではないし、土間に座ると土下座になり意味が違う。そこで畳から店の土間に下りる縁側のような狭い所しかないねとなって。平助もジョーと同じで、そこそこ大きな男2人が狭いところに正座して「娘をよろしく」と応じることにしたんです。
濱田:みんながみんなを思い合う気持ちがあふれていましたね。るいちゃんのことが大好きやし、るいちゃんを好きでいてくれる大月君のことも好きやし。寂しいけど幸せなシーンでした。
村田:結婚して京都へ旅立ったるいには、つらいことがあったら戻っておいで、部屋はそのままにしておくからと伝えたい。そして深津さんには、ほかの作品でもいいお芝居をされて賞を受賞されても、これから“父”としてずっと見守っていきたいです。
ネット上では《竹村夫妻ロス》と惜しまれるほど大阪編を彩ったお2人。再出演を期待したい!