「これまで1年に数本ペースで映画やドラマに出演していた山崎さんですが、ここ2年は全く出演作がない状態です。コロナ禍もあるとは思いますが出演オファーを受けていないといい、一部では体調不良を心配する声もあります」
こう語るのは、かつて一緒に仕事をしたという映画関係者。黒澤明監督の映画『天国と地獄』('63年)で注目を浴び、半世紀近くにわたって第一線で活躍し続けてきた名優・山崎努(84)。
そんな山崎だが、'19年5月公開の映画『長いお別れ』への出演を最後に表舞台から遠ざかってしまっているのだ。
事実上の俳優休業状態となっている山崎は、昨年9月に大きな喪失も経験している。『長いお別れ』で共演した竹内結子さん(享年40)が急逝したのだ。
「映画で山崎さんはアルツハイマー型認知症に侵される父を、竹内さんは戸惑いながらも父と向き合っていく娘を演じました。リハーサルでの山崎さんの演技に涙するなど、竹内さんは彼をとても尊敬し、本番以外でも山崎さんのことをとても気遣っていたそうです。
5年前にも別の映画で共演しており、竹内さんを実の娘のようにかわいがっていた山崎さんだけに突然の死には大きなショックを受けていたと聞いています」(前出・映画関係者)
山崎は共演時を振り返りながら、竹内さんをこうしのんでいる。
《クランクアップを迎えたとき、先に撮影を終えた彼女(竹内)が僕のところまでわざわざ来て『お世話になりました』と言ってくれたのを昨日のことのように思い出します(中略)不幸な出来事が続いていますが、もしかしたら誰もが追い詰められ、紙一重の状況にあるのかもしれないね》(『週刊文春』'20年10月8日)
■山崎の自宅を尋ねると訪問介護の自転車が…
'18年9月には同年5月公開の映画『モリのいる場所』で初共演した樹木希林さん(享年75)、そして“娘”が。相次ぐ名女優たちの死は山崎に多大な心痛を与えたことだろう。
果たして、山崎はこのまま俳優業をフェードアウトしてしまうのだろうか。真相を確かめるべく、都内にある山崎の自宅を訪れた。
築約30年の、石段を積み重ねた豪邸の玄関前に停まっていたのは、訪問介護ステーションの自転車。やはり介護が必要なほど体調を崩しているのか――。
しかし、山崎をよく知る近隣住民の女性に話を聞くと意外な答えが返ってきた。
「実は昨年、山崎さんの奥さまが自宅の階段で足を踏み外して、骨折してしまったんです。今までどおりに家事ができなくなったこともあり、訪問介護を頼んで、身の回りの世話をしてもらうようになったそうです。これまでは家事を任せることが多かった山崎さんも骨折後は積極的にするようになったといいます。結婚して離れて暮らす2人の娘さんも定期的に両親の様子を見に来ていると聞いています」
介護を受けていたのは、山崎ではなく妻の黛ひかるさん(82)だというのだ。2人の出会いは約60年前にさかのぼる。
「'62年のドラマでの共演をきっかけに山崎さんは当時タカラジェンヌだったひかるさんとの交際を始め、翌年に結婚。結婚式では、共演したドラマの脚本を務めた石原慎太郎さんが仲人を務めました。山崎さんが公の場でひかるさんについて話すことはほとんどありませんが、友人には『百点満点の奥さんです』とよく自慢していたそうです」(テレビ局関係者)
本誌は山崎のひかるさんへの“老老介助”の現場を目撃した。雨上がりの晴天に包まれた6月下旬の夕暮れ。自宅近くで、訪問介護のヘルパーと思しき女性に付き添われながらゆっくりと歩くひかるさん。
そして、そのすぐ後ろには、つえをつきながら優しく妻を見守る山崎の姿があった――。夫の介助のかいもあって、ひかるさんは、元気な姿を取り戻しつつあるという。
■老老介助の陰にあった妻との“約束”
「ひかるさんもかなり回復し、最近では山崎さんと早朝に散歩している姿をよく見かけますよ。この前会ったときは『毎日元気にしています』と話していました」(別の近隣住民)
バラエティ番組などに出演することなく、演じることを生きがいにしてきた山崎。そんな彼が俳優を休業してまで妻を介助する陰にはかつて交わした2人の“約束”があるという。結婚の翌年、ひかるさんはインタビューでこう語っている。
《二人の約束は、
一、ムリなことを言わない。
二、相手のコンディションを考えて助け合う。
この二つを、その場、その問題で解決して行けばいいのではないでしょうか》(『週刊女性』’64年9月16日号)
山崎の知人は言う。
「ひかるさんは交際中に宝塚歌劇団を退団し、結婚後しばらくは不遇の時代が続いた山崎さんを懸命に支えました。山崎さんはそのことを今でも感謝しているそうです。ひかるさんの一大事を受けて“今度は自分が約束を果たす番”という思いでいるのでしょう」
そして、山崎は決して引退するわけではなさそうだ。
「コロナ禍とひかるさんの骨折があって今は休業状態ですが、よきオファーがあればまた仕事をする心づもりでいると聞いています」(前出・知人)
半世紀以上連れ添った妻の介助を経験している山崎の演技は、より円熟味を増すことだろう。