毎年、5月の終わりごろから7月の半ばにかけて雨降りの日が続く梅雨(つゆ)。
じめじめと湿気が多く、洗濯物も乾きにくいし、あちこちカビが生えやすいので、夏が待ち遠しい方も多いはず。
ところで、なんで「つゆ」は梅雨と書くのでしょうか。あるいは梅の雨を「つゆ」と読んだのでしょうか。
何だか「卵が先か、鶏が先か」みたいな話ですが、今回は梅雨の語源について紹介します。
元々は「カビの雨」だった?
梅雨は「ばいう」とも読み、元々は「黴雨」という漢字が当てられたこともあるそうです。雨が多くてあちこちカビ(黴)が生えるからでしょうが、これじゃいくらなんでも季節の名前として呼びたくありません。
という事情なのかはともかく、同じ「ばい」でもより気分の爽やかな梅の字を当てて梅雨とした、という説があるようです。
梅の実が熟する季節に降る雨だから?
梅は地域によって1~3月ごろに開花し、結んだ実が熟するのがおよそ6月ごろ。
「降る音や 耳も酸(す)うなる 梅の雨」
松尾宗房(芭蕉)
【意訳】あまりに長く雨音を聞かされて、耳まで酸っぱくなってきちゃったよ。
雨の中より立ちのぼる梅の香りは、なかなか味わい深いものです。
しかし、梅雨なら文字通り「ばいう」と呼び慣わせばよさそうなものですが、どうして「つゆ」と読むのでしょうか。
熟しきった梅の実が……
普通「つゆ」と聞くと、多くの方が水滴の「露」か、蕎麦などの「汁」を連想するかと思います。
梅の実から滴る露が「梅雨≒つゆ」と呼ばれるようになったという説もありますが、もう一つ「潰(つ)ゆ」説も紹介します。
潰ゆとは「ついえる・ついゆ」の変化形で、やわらかく爛熟しきった梅の実が、枝から落ちて潰れてしまう様子を表わし、梅の収穫期(リミット)を意味するとも考えられます。
まとめ
こうして見ると、諸説あるもののどれが最初とも判然とせず、恐らく人それぞれに呼ばれていた雨の名前が、梅の時期にからめて後から理由づけされていったものと考えられます。
ちなみに芭蕉が詠んだ「……あつめて早し最上川」の五月雨(さみだれ)も梅雨の別名で、近世以前は旧暦だったため、昔の5月は現代のおよそ6月に該当していました。
同じ理由で「五月(さつき)晴れ」も、現代でいう鯉のぼりが泳いでいるような青空でなく、本来は梅雨の晴れ間を指す言葉でした。
雨ばかり続くと気分も沈みがちですが、雨なら雨の楽しみもありますから、なるべく明るく過ごしたいものです。