文章に「ひげ」と書く時、漢字変換すると三つの候補が出て来ます。
「髭」「鬚」「髯」
これらはいずれも人間(主に男性)の顔面下部より生じる体毛を表わす漢字ですが、それぞれ意味があるのは当然として、どのように使い分ければいいのでしょうか。(※人生において、あまりそんな必要に迫られることもないでしょうが)
今回は、その辺りについて調べたので、紹介したいと思います。
髭(ひげ、シ)
一般的に「ひげ」と書いて当てられることの多い漢字ですが、これは「口ひげ」つまり鼻の下から唇の上に生じるひげを指します。
チャップリンの「ちょびひげ」から中国人のステレオタイプである「泥鰌ひげ」、そして厳めしい「カイゼルひげ」まで、古今東西さまざまなアレンジがなされています。
鬚(ひげ、シュ)
こちらは「顎(あご)ひげ」つまり顎の先端に生じるひげを指します。
長く伸ばすと仙人や山羊のような風貌となるので「ヤギひげ」などと呼ばれることもあります。単独で伸ばしている方はあまり見かけませんが、口ひげとセットで伸ばすと貫禄が出ていい感じですね。
髯(ひげ、ゼン)
この漢字はあまり見慣れないかも知れませんが、これは「頬(ほお)ひげ」つまり顔の側面に生じるひげを指します。
髯と言えば、中国大陸における四大伝奇の一つ『三国志演義』で活躍した名将・関羽が「美髯公(びぜんこう)」として有名ですが、立派なひげの中でも殊更に髯(ほおひげ)がすぐれていたためそう呼ばれました。
まとめ
日本語ではこれらをまとめて「ひげ」と呼ぶことが多いですが、他の言語には口・顎・頬それぞれのひげを表わす言葉はあっても、日本語の「ひげ」に該当する言葉(総称)はないそうです。
諸外国ではひげに対するこだわりが強いのか、手っ取り早く「ひげ」と十把ひとからげに呼ぶなんてとんでもない!と(もしかしたら)思っているのかも知れません。
日本では江戸時代以降、あまりひげは一般的ではなくなりましたが、今でも男性らしさの象徴として、彼らの表情を魅力的に彩り続けています。
「髭」「鬚」「髯」……もし文章で書く機会があったら、ちょっと意識して使い分けてみるのも楽しいものです。