大相撲の千秋楽で優勝候補の力士が3人以上残った場合
大相撲のどの段でも、千秋楽の本割終了時点でトップの成績の力士が複数並ぶ「相星」になることがあります。そんなときは「優勝決定戦」を行うことになりますが、時には優勝決定戦を行う力士が3人、4人、またはそれ以上になることがあります。
この場合は優勝決定戦を「巴戦(ともえせん)」という方式で行います。
普段の生活の中ではあまり耳にすることのない「巴戦」とは、いったいどのようなルールで行われるのでしょうか?
優勝決定巴戦のルールとは?
優勝決定巴戦には、2名での優勝決定戦を行うときとは少し違うルールが存在します。
3人の力士は取り組みの順番を決めるために、まず土俵下で「くじ」を引きます。
くじは紙に「東」「西」「〇」と書かれたものです。
「〇」と書かれた紙を引いた力士は最初の取り組みは休みとなり、「東」「西」と書かれた紙を引いた力士がそれぞれ東と西方から土俵に上がって対戦します。
ここで勝った方の力士は、次に「〇」を引いた力士と対戦し、勝てば優勝が決定しますが、負けた場合は「〇」を引いた力士と最初に負けた力士が対戦することになります。
つまり2連勝した力士が優勝ということで、3人のうちの誰かが2連勝するまで対戦が続けられます。
「東」「西」を引いた力士は、最初に負けても次の対戦で「〇」を引いた力士が勝った場合は再度対戦して優勝するチャンスが残されますが、「〇」を引いた力士は自分にとっての最初の対戦で負ければ、即優勝の可能性がなくなってしまいます。
そのため「〇」を引いた力士が若干不利になるといわれています。
ちなみにこれは、同点の力士が3人だった場合です。
同点力士が4人・7人・8人などの場合は、巴戦ではなくトーナメント戦となり、最終的に勝ち抜いた力士が優勝となります。
また同点力士が9~12人など大人数となった場合も、まず「予選」を行って5~6人→2~3人と絞り、最後に勝ち残った力士同士で決定戦または巴戦を行います。
実際に2020(令和2)年7月場所では、十両で5敗力士6人による優勝決定戦が行われ、明生が優勝しました。
また2001(平成13)年7月場所の十両では8人での優勝決定戦が行われていますが、これは優勝決定戦を行った中で史上最多の人数です。
幕内で優勝決定巴戦となるのは珍しい?
さて、優勝決定戦が巴戦や大人数での決定戦となる例の多くは十両以下で、幕内では決して多くありません。
なぜなら幕内は十両までと違って強い上位力士と対戦することが多く、千秋楽まで横綱や大関と相星で優勝決定戦まで進むことが簡単ではないからです。
また幕下以下は1場所に7日しか相撲を取らないため、必然的に相星となることが多くなります。
最近の幕内では、1996(平成8)年11月場所の若乃花・曙・貴ノ浪・武蔵丸・魁皇の5名が本割終了後に11勝4敗で並び、5人による優勝決定巴戦の結果、武蔵丸(当時大関)が優勝した例がありました。
しかしこれ以降、本場所での優勝決定巴戦は行われていません(2020(令和2)年10月現在)。
参考
- 十両は立浪部屋3人による優勝決定戦 その裏にあった「もうひとつ」のドラマ
- wikipedia「巴戦」
- 同上「優勝決定戦(相撲)」