「接して漏らさず」。この言葉、聞いた事がある方もいるかもしれません。江戸1番の健康オタク、貝原益軒(かいばらえきけん)が述べた交接(こうせつ)=SEXの極意です。
今回は江戸時代のベストセラー健康本「養生訓」に記されたその極意について読み解きます。※なお、現代の西洋医学では必ずしも養生訓の内容が支持されているわけではありません。ご了承下さい。
年齢別に交接回数コントロール
「養生訓」において、益軒はあくまでも「健康で長生きする」ため、真剣に人間の性に向き合って男女の交接について言及しました。つまり、夜の営み技術指南書ではないという事です。
東洋医学に学んだ益軒によると「腎は五臓の本(もと)」。すなわち精力を体内に温存し、腎機能を保つ事が長寿の秘訣だと説きます。その上で、腎機能を健全に保つための男女の理想的な交接回数を年齢別に書いています。
それによると「20代では4日に1度、30代では8日に1度、40代では16日に1度、50代では20日に1度、そして60代では行わないか、もし体力が盛んならば1月に1度」。この回数は中国の古書「千金万」を参考にしたようです。
益軒によると、「そうはいっても40歳以上の人はまだ血気盛んで情欲もおとろえていない。だから上記の交接回数を守る事も難しい。しかし多く交接し精気を排出する事は大いに元気を消耗する。」そこで出てくるのが、この極意。「接して漏らさず」です。
「接して漏らさず」
はて、現代人には何のことやら分かりません。有り体に言うと、「パートナーの体には触れて愛し合ってもいいが、射精しない」という事です。それこそ至難の業な気もしますが、これは益軒が思いついた考えではなく、古代中国から伝わる房中術の1つで東洋医学の考え方なのだそうです。
作者不明春画(江戸期) 出典:パブリックドメイン美術館
「精気を排出すると気の消耗になる」・・・精というのは人間の全身をめぐるエネルギーの事で、老年になってこれを盛んに外に出してしまうと大きな消耗になるので、コントロールしましょうというわけ。
反対に、「接する」つまり男女が体に触れ合う事に関しては益軒は奨励しています。東洋医学的には男女の身体の触れ合いは互いの気のエネルギーを保つのに良い事だそうです。