歯の間に詰まった食べかすを取る道具として用いられる「つまようじ」。英語では、“ Tooth pick ”と呼ばれ、世界中で使われています。その素材はたいていは木ですが、なかには合成樹脂や竹など木以外の素材の製品も見られます。
日本のつまようじは、古代インドを経て中国から伝えられたものですが、現在のつまようじの先端の反対側、お尻の部分に小さいミゾがいくつも施されています。
このミゾ、一体誰が何のためにつけ始めたものなのでしょうか。
このいくつもつけられたミゾ、実は「こけし」が施されたもので、装飾の一種なのです。なぜつまようじに装飾?しかも、なぜこけしなのでしょうか?
つまようじは、もともとノコギリで切断して生産されていました。ところが、このような作り方だと精度が悪く、切断面が必ずざらざらした状態になってしまい、ケバだってしまいました。
そこで今度はグラインダー(砥石)で切断するようになりましたが、そうするとケバ立たなくなったものの、摩擦で黒く焦げてしまうようになりました。そこで、この黒い焦げ目を逆手に取り、ごまかすために、オマケのみぞをつけて「こけし」に見立てて装飾したのがそのはじまりだったようです。
切断のついでにミゾをつけるので、特別なコストはかからず、しかも綺麗に仕上がるため業者としては、都合がよく、以後日本のつまようじにはこけしが装飾されるようになりました。
ちなみに、このみぞについて、「適当なところで折って、箸置きのように使う」なんていう話もあるようですが、これは目的ありきで後付けされた全くのでたらめ(一説には落語家の柳家金語楼が考案したともいわれています)。そのような目的でつまようじのみぞが作られるようになったわけではありません。
もしもお近くにつまようじがある方は、そのお尻の部分をよく確認してみてください。
ちなみに、つまようじの生産量全国一は、大阪府河内長野市。そのことにちなんで、同市には、「つまようじ資料室」が開設されています。
参考:株式会社広栄社「つまようじ資料室」