日本の妖怪には、おどろおどろしい妖怪から愛嬌のある憎めない妖怪まで、さまざまな姿の妖怪がいます。なかでも猫の妖怪「猫又」や「化け猫」は人気の高い妖怪のひとつとも言えるでしょう。
ちなみに猫又とは、人とともに暮らしていた猫が、年老いた果に化けた妖怪とも、もともと山中に住む妖怪とも言われています。尻尾が2本に別れているのが特徴。
今回は、江戸時代〜明治時代の絵師たちが描いた猫又や化け猫にスポットをあててみたいと思います。昔から日本人の暮らしの中でつながりの強かった”猫”の妖怪ということで、実に多くの絵師が作品に登場させています。
佐脇嵩之による猫又(百怪図巻より)
江戸時代の絵師・佐脇 嵩之(さわき すうし)による猫又。人間の女性のように長い髪に着物、そして三味線を弾きながら化けて出ます。
歌川国芳による猫又(荷宝蔵壁のむだ書)
猫好きだったことで知られる江戸時代の人気絵師・歌川国芳による猫又。まるでニャロメのような容姿はファン多し。
「荷宝蔵壁のむだ書」の中に描かれています。
出典:江戸時代の「贅沢禁止令」に反骨精神むき出しで挑んだ浮世絵師たち
鳥山石燕による猫又( 画図百鬼夜行より)
江戸時代後期に活躍した、妖怪を中心に描いていた珍しい絵師・鳥山 石燕(とりやま せきえん)による猫又。
この猫又が描かれた「画図百鬼夜行(がずひゃっきやこう)」は現在でもとても人気の高い書物です。
出典:水木しげるも参考にした、江戸時代 鳥山石燕による妖怪図鑑「画図百鬼夜行」
鍋田玉英による猫又(妖怪画本より)
江戸時代〜明治時代の浮世絵師 楊洲 周延(ようしゅう ちかのぶ)に師事していた、鍋田 玉英(なべた ぎょくえい)という明治時代の浮世絵師。
先に紹介した浮世絵師・鳥山 石燕が描いた「図百鬼夜行」の中で描いた猫又を模写したと思われます。
出典:ちょっぴり可愛い妖怪絵!明治時代の浮世絵師 鍋田玉英による「妖怪画本」
歌川国芳による猫又(見立東海道五拾三次岡部 猫石の由来より)
歌川国芳による猫又。手ぬぐいを頭に乗せて踊る可愛らしい猫又の姿には、国芳の猫に対する愛が溢れている?
出典:The Metropolitan Museum of Art
河鍋暁斎による猫又
幕末〜明治時代にかけて活躍した絵師・河鍋暁斎による猫又。睨みをきかせた猫又の表情がとっても印象的。
河鍋暁斎による化け猫
同じく河鍋暁斎による、こちらは化け猫。化け猫に驚く男のポージングにも暁斎のセンスが光ります。
歌川国貞による猫又
三代目豊国である歌川国貞の猫又。「江戸乃花名勝会 氷川下」より。
歌川国貞による化け猫
役者絵ではありますが、一応、化け猫。こちらも歌川国貞による作品。「東海道五十三次之内 白須賀 猫塚」
歌川芳藤による「化け猫」
歌川国芳の門人だった歌川芳藤による化け猫。化け猫の姿を寄せ絵(だまし絵)で描くとはさすが国芳の門人。
出典:猫や人が入り乱れる!浮世絵の寄せ絵(だまし絵)まとめ
いかがだったでしょうか?妖怪でありながらどこか親しみを感じてしまう、可愛らしさが伺える作品が多いように思えますね。