KUZUHA MALLもT–SITEもなかった平成2年(1990)。
枚方市駅周辺の再開発で開業するも、時代の波に呑まれ倒産し「もう終わった」と皆が思ったビオルネ。
新たな運営会社による“脱商業施設”が始まって約10年。
ものすごいスピードで『事業の多角化』を進め、見事に逆襲を果たしたビオルネの知られざる裏側に迫る。
第一回
ビオルネヒストリー〜前編〜
第二回
ビオルネヒストリー〜後編〜
第三回
コロナ禍でも140%成長する人気店「KURAWANKA」〜前編〜
第四回
コロナ禍でも140%成長する人気店「KURAWANKA」〜後編〜
第五回
会員数250人超え!関西トップクラスのコワーキングスペース「ビィーゴ」
第六回
なんでドローン!?ビオルネの次なる一手
パブリックモールへと進化するためのコワーキング
ビオルネの再生を担う社長の岡部氏が目指す“パブリックモール”への進化。
地域に根ざした施設に生まれ変わるために必要だと考えたのが、コワーキング・レンタルスペース事業「ビィーゴ」だ。
2019年9月、ビオルネ5階にオープン。
仕事や勉強ができるコワーキングスペース、個室で仕事ができるシェアオフィス、セミナーなどが開催できるレンタルスペースなどを整備している。
翌年、4階に増床。
約1600㎡もある大型コワーキングスペースは、日々フリーランスやテレワークの人たち、オンライン授業の学生らで賑わい、26室あるシェアオフィスも満床だ。
事業開始から2年。
コロナ禍でのニーズ急増の追い風もあり、今では会員数250人を超える関西トップクラスのコワーキングスペースへと成長した。
「ビィーゴ」には、
今ある自分=『Be』 を一歩先へ=『GO』
という意味が込められている。
第5回はビオルネをまさに、一歩先へ進めたビィーゴの魅力に迫る。
「仕事場=会社」からの劇的変化
立ち上げに携わったビィーゴ事業部長の平岩愛理さんと、ビィーゴ枚方本店店長の本田武志さんに話を聞いた。(以下、敬称略)
オープンした2年前、まだ世間では「コワーキング」という言葉自体が認知されていなかった。
フリーランスや起業家たちの利用が中心で、一般的にはやはり「仕事場=会社」というイメージがすごく強かったと振り返る。
しかしオープンから半年後には、新型コロナウイルスが猛威を振るい、働き方が一変。
テレワークが一気に進み、コワーキングスペースへの需要が急増したという。
平岩
「例えば、会社には週に2回までしか出勤できないといった規制がされたところも多いそうで。
自宅で仕事するにしても、マンションのWi-Fiが遅かったり、共働きだと同時にテレビ会議もしにくかったり・・・。
そういった方が仕事場として使いたいというニーズが一気に増えました」
さらに、枚方は学生の街でもある。
市内には大学が6つ、枚方市駅周辺には高校もたくさんある。
平岩
「コロナの影響で図書館の自習スペースが閉まったり、学校に行けなくなったり。
カフェなどにも行きづらく、『枚方 Wi-Fi 勉強できる場所』などと検索して、ビィーゴを見つけて来てくれた学生さんが多かったですね」
ビィーゴの利用方法は、月額会員(月10,780円〜)と、一時利用(終日1,000円)がある。
いずれも予約なしで利用できる。時間は、最大で朝8時半〜夜23時まで。
オープン当初、1日の利用者数は10人ほどだったが、今では100人近く、10倍に増えた。
月額会員は250人を超え、当初の目標を大きく上回るペースで伸びているという。
コワーキングの最大の魅力は「コミュニティ」
平岩は、ビィーゴの最大の魅力は「コミュニティ」だと語る。
平岩
「やはり、ただの自習室とは違いますね。
コワーキングという言葉には『一緒に場所を共有して働く』といった意味があって、黙々と勉強や仕事に向き合うのではなく、他の人と関われますよっていうところが特徴です。
例えば自分がWEBのプログラマーだとして、デザイナーさんを探している時に、ふと隣を見るとデザイナーさんが座っている。
その縁で一緒に仕事ができるとか、そういうのが実際に起きるのがコワーキングの最大の魅力なんです」
実は平岩自身も別のコワーキングの利用者で、その魅力を実感していた。
平岩は大学で建築を学び、卒業後はゼネコンで働いていた。
しかしWEB関係の仕事がやりたいと退職し、市内にあった別のコワーキングを利用。
そこに通ううちに他のフリーランスの人との交流が生まれ、新たな仕事のチャンスを掴んだ実体験があったのだ。
コワーキングの可能性を体感していた平岩だからこそ、岡部の思いを具現化する魂のこもったコワーキングを作れたのかもしれない。
コミュニティを作る部活動は10種類以上
コミュニティを生み出すヒミツは、いくつも仕掛けられている。
まず、ビィーゴの廊下には、利用者の自己紹介カードがたくさん貼られている。
希望者は自分の名前、仕事、趣味、ビィーゴでやりたいことを写真付きで掲示。
これを見て、声をかけるきっかけにつながる。
コロナ禍になって制限している部分もあるが、オープン当初からは月に一回、交流会を開催。
また利用者なら誰でも参加でき、一緒に食事をして話をしているうちに、自然発生的に「部活動」ができたという。
現在10種類以上の部活動がある。
例えば、Among Usオンラインゲームなどを楽しむ「ゲーム部」。
美味しいものを食べに行く「お食事部」。
「早寝早起き部」は、各自が目標にする起きる時間と寝る時間をグループLINEに投稿し、達成できたらその都度LINEで報告し、褒め合うなど、活動内容はさまざま。
店長の本田は、ジョギング部に所属。
定期的に会員たちと一緒に夜の河川敷を5kmほど走っている。
ガチで走るのではなく、走れる人も走れない人も関係なく楽しく走ろうというのがコンセプトだそうだ。
こうした部活動の情報は、コワーキングスペースの中央に設置された掲示板で共有され、興味があれば誰でも参加できる。
学生が多いのも深みに
もう一つのビィーゴの特徴は、学生の利用者が多いことだと平岩は話す。
社会人と学生の割合は半々くらいで、他のコワーキングと比較しても珍しいという。
意識の高い学生たちが、社会人から直接学べる貴重な機会にもつながっている。
店長の本田は毎日受付にいるため、よく顔を合わせているうちに会員たちと自然に話すようになるそうだ。
そのうちに進路相談を受けることも珍しくない。
例えば「プログラミングに興味がある」「建築をやりたい」などの話を学生から聞くと、「今度の交流会にその道のプロが来るから紹介しようか?」と本田がつなぎ役になる。
気付いたら、もうコミュニティが出来上がっている。
ビィーゴという場所をきっかけに、人と人が出会ったり、新たな一歩を踏み出したりするのを実感できることが運営者としても喜びだと本田は話す。
平岩
「朝8時半に来て夜23時まで勉強していた浪人生が『京都大学に合格しました!』とか、
ここで資格の勉強をしていた社会人が
『この場所があったおかげで宅建に合格しました!次はマンション管理士の資格を取るのでまたお世話になります!』とか、
報告してくれたこともあって、家族みたいな気持ちになります笑」
ビィーゴを頻繁に利用していた学生で、就職を機に東京に行ったが、里帰りの際に立ち寄ってくれたこともあるという。
会員のスキルを活かす「スクール事業」で一歩先へ
オープンから2年、利用者に愛される場所となったビィーゴだが、平岩と本田は「また一歩先へ」と進めようとしている。
それは、スクール事業だ。
その名も「ビィーゴ大学」。
豊富な経験やスキルを持つビィーゴの会員たちが先生となり、ビジネスに直接生かせるノウハウなどを伝えていくものだ。
講座は参加無料で、2021年の春から不定期で開催している。
例えば、転職経験のある会員がどうキャリアアップしたかなどを語ったり、LGBTQについてゼロから解説する講座を開いたり、テーマはさまざま。
平岩はこうした講座を開くことで、枚方の人たちの学びの広がりにつながると考えている。
平岩
「ビィーゴの会員さんってすごく高いスキルを持っているけど、それを他の人に教えるところまでは経験していない人が多いんです。
教えられるくらいのスキルがあるのに、教え方がわからないとか、集客もできないというのがあって。
だからビィーゴが講座の場所を提供し、告知や集客もして、オンラインでも同時配信するスタイルで、会員さんたちを支援したい。
それによってさらに会員さんたちもビィーゴもパワーアップしていきたいと思っています」
岡部の一歩先は、ビィーゴのフランチャイズ化
ビィーゴの好調ぶりに、手応えを感じた社長の岡部も一歩先を見つめていた。
ビィーゴの2号店を2021年6月、心斎橋にオープン。
心斎橋駅徒歩3分という都心の立地の良さを活かし、コワーキングスペースの他にもアパレル系の展示会ができるレンタルスペースも設けた。
立ち上げは平岩たちが手伝い、運営は別の株式会社が担うフランチャイズだ。
月額会員であれば枚方との相互利用も可能で、より利便性を高め、新たなつながりも生まれそうだ。
岡部は他にもフランチャイズ化を進め、枚方を起点に新たなつながりやビジネスチャンスが生まれることを期待している。
「枚方でビィーゴが成功して、マーケットに手応えを感じたので、これを単なるブームで終わらせたくない。
普通はうまくいけばそれを独り占めしようとする企業がほとんどだけど、私はビィーゴという名前でどんどん作っていきたい。100か所くらい。
そのうち、『ビィーゴ=枚方』として有名になるくらいに。
これだけテレワークの人たちが増えた今、ビィーゴがあることで住みやすい街だと感じてもらえたら嬉しい。
この枚方をきっかけに各地で人脈ができて、新しいビジネスが生まれる、そういうことを目指していきたい」
働き方やライフスタイルが大きく変化した今、ビィーゴが関西のあちこちに生まれる日もそう遠くないのかもしれない。
次回はいよいよ最終回。
ビオルネの次なる一手「ドローンスクール事業」に迫る。
枚方ビオルネ
■営業時間
地下食品売場:午前9時~午後11時
1~5階:午前10時~午後8時
■住所:大阪府枚方市岡本町7-1
■駐車場:あり
※店舗情報、記事内に掲載している商品、価格等は取材時点のものです。