KUZUHA MALLもT–SITEもなかった平成2年(1990)。
枚方市駅周辺の再開発で開業するも、時代の波に呑まれ倒産し「もう終わった」と皆が思ったビオルネ。
新たな運営会社による“脱商業施設”が始まって約10年。
ものすごいスピードで『事業の多角化』を進め、見事に逆襲を果たしたビオルネの知られざる裏側に迫る。
第一回
ビオルネヒストリー〜前編〜
第二回
ビオルネヒストリー〜後編〜
第三回
コロナ禍でも140%成長する人気店「KURAWANKA」〜前編〜
第四回
コロナ禍でも140%成長する人気店「KURAWANKA」〜後編〜
第五回
会員数250人超え!関西トップクラスのコワーキングスペース「ビィーゴ」
第六回
なんでドローン!?ビオルネの次なる一手
パブリックモールへと突き進んできた社長の岡部氏。
10年が経ち、意外な一手を打ち出した。
2021年3月に、ドローンスクール事業をスタート。
ビオルネをきっかけに、枚方に新たな産業を起こしたいという岡部の思いが込められている。
開校から半年で卒業生は50人を超えた。
手応えは十分だ。
第6回は、なぜビオルネでドローンスクールなのか。
ドローンをきっかけに枚方をどう変えようとしているのかに迫る。
きっかけは廃墟!?
枚方では初めてのドローンスクールとなるJUAVACドローンエキスパートアカデミー大阪枚方校。
2021年3月にビオルネにオープンし、スタッフの事務所や講座の教室は「ビィーゴ」を使用している。
岡部はなぜ、ビオルネでドローンスクールをやろうと思ったのか。
そのきっかけは、意外なところで生まれた。
新たなビジネスチャンスを探るため、岡部と佐阪が、滋賀県の膳所焼を見に行った時のことだ。
その“ついで”に、「廃墟」に立ち寄った。
「廃墟」とは、一時期閉店が相次ぎ、ネットで「明るい廃墟」などと話題になった守山市の商業施設「ピエリ守山」のことだ。
何度も失敗したのに見事に復活を遂げた商業施設から何か学び取るものはないかと立ち寄ったのだった。
そこで目に飛び込んできたのが、ドローンスクールだった。
佐阪
「片手間でやってる感じじゃなくて、衝撃を受けた。
中には、人工芝が敷いてあるフットサル場のような操縦場があって、モニターもあって。
なんかソフトバンクショップみたいな感じでバチコーンってキマっていた」
と、その時の驚きを教えてくれた。
さらにドローンの販売も行われていて、
「ドローン買いたいって言ったら買えるんですか?」と佐阪が聞くと、
スタッフから
「今売れすぎてて在庫が切れちゃってて・・・」と言われ、
売り切れるほどドローンの需要が高まっていることにさらに衝撃を受けたという。
佐阪は枚方に帰るとすぐに、そのお店が加盟する「JUAVAC」という団体に問い合わせた。
すると、
佐阪
「『ドローン産業はこれから右肩上がりに広がっていくから、すごいことになりますよ』と説明を受けて、
もう洗脳されました(笑)
商業施設とは何の関係もないけど、これはやらなあかんのちゃうかと、決めました」
と即決したことを明かしてくれた。
佐阪
「地域産業として、枚方を中心に周りに広めていけるっていうのはすごい影響力があること。
街やその街の産業を変える。
それをビオルネがお手伝いできるんじゃないか。
『よしやろう!』みたいな感じで始まりました」
ドローンをビジネスに
ドローンスクールの教官である北村尚登さん(以下、敬称略)に話を聞いた。
スクールには現在、6つのコースがある。
座学はビィーゴで、航空法などの法律、気象、電波、ドローンの構造、安全対策などを学び、
実技は別の場所にある実技会場で、飛行技術を学ぶ。
受講料は、ドローンの基本技術が学べる「フライト基本技術コース」の場合、4日間で275,000円(税込)。
北村
「ドローンって、実際は飛ばしちゃダメな場所の方が多いんです。
関わってくる法律がたくさんあって、ドローンを飛行させる『場所』や『飛行方法』によっては、各関係機関へ飛行許可申請を提出し、許可・承認を得なければならない。
スクールではその申請に必要な条件の『知識』と『技術』と『10時間以上の飛行経験』が得られます。
受講料は決して安くはないですけど、十二分の価値があると思います」
開校から1年。
予想を上回るほど好評だ。
受講生の年齢層は40代前後が多く、ビジネス目的で学びに来る人が多いという。
枚方だけでなく、交野、寝屋川、四條畷、京都の八幡あたりからも来ている。
春休みには中学生が親子で参加した例もある。
北村
「例えば建築関係の方や、点検業務に使いたい方とかが多いですね。
みなさん、ニュースなどでドローンというのがこれからどんどん使われていくってことは知ってるけれども、じゃあ実際どうなの?と。
いち早く技術を導入して仕事に生かしていこうという意識で来ている方が多いから皆さんすごく熱心です」
実際にドローンを触ってみた反応については、
北村
「皆さん大体ラジコンみたいなもんだろうと思ってこられるんですけど、
『こんな難しいモノなのか』というのプラス、『こんなことできるんだ、すごいねドローン』
っていう形で感動されて卒業されている。
だから、受講者には有益なものを伝えられているという手応えはあります」
と胸を張る。
さらに、北村自身が感じているドローンの凄さを教えてもらった。
北村
「例えば土木や建設現場では、ドローンの導入・活用が拡がっています。
建設現場の上空からドローンで撮影した写真を解析し、地形の形状を測定できます。
実際に人の手でやると2〜3日かかるものが、ドローンを使うと1日で終わってしまう。
だから効率化と省人化が図れる。
建設現場が魅力のある働きがいのある場所になるということで、国が推し進めようとしているんです。
あと、エンターテインメント系で空撮がやりたいというニーズも多いです。
フォトグラファーさんとか、映像クリエイターさんとか。
俯瞰で撮る映像ってドローンじゃないと撮れないので、そういうのを撮りたいっていう人も学びに来てくれています」
スクールには女性の受講者もいるそう。
最近では女性だけのドローンサークルなどもあり、多方面で活躍する人も多いのだとか。
大人の習い事のような感じで、新たな趣味として、自分の幅を広げるために受講した人もいるそうだ。
2022年度にはライセンス制度導入
実は、今年度(2022年度)ドローンは大きな節目を迎える。
「空の産業革命」としてドローンが秘める新たな可能性に注目が集まっている中、国は操縦ライセンス制度を導入。
飛行の方法によっては、自動車免許のようにドローンの免許が必要になるのだ。
北村
「今年度から、加速度的にいろんなものが進むんじゃないかと思っています。
これまでいろんな自治体や企業などが組んでドローンを使った実証実験が行われてきました。
そういった点と点が繋がっていって、ドローンを使った世の中に変わっていくことが期待されています。
だから今のうちにドローンを知っておくのは絶対にいいと思います」
ドローンの活用は、災害現場、医療、物流などさまざまな分野で期待されていて、ビジネスチャンスがあちこちに広がっているというわけだ。
枚方から“空の産業革命”を
岡部は、卒業生と地元の企業などがドローンを使った新たな仕事のネットワークを広げていってくれることを期待している。
ドローンが荷物の配送に使われたり、医療関係の物資を配送したり、災害時に調査や救助のために使われていく。
そんな時代がもうすぐ訪れようとしている。
ビオルネ発、枚方発で新たな産業を起こしたい。
岡部たちの逆襲はまだまだ続く。
枚方ビオルネ
■営業時間
地下食品売場:午前9時~午後11時
1~5階:午前10時~午後8時
■住所:大阪府枚方市岡本町7-1
■駐車場:あり
※店舗情報、記事内に掲載している商品、価格等は取材時点のものです。