特異な存在感を放ち、94年から4年間、『オリーブ』の専属モデルとして誌面を彩ってくれた市川実日子さん。いまや女優として大活躍。最近は若い世代から「古本屋で買って『オリーブ』読んでいます」と声をかけられることもあるとか。
『オリーブ』で蒔かれた種は、芽を出し、いまも育ち続けています。
実日子さんの『オリーブ』デビューは、中学2年生のとき。カットモデルとして初めて撮影現場を目の当たりにします。 「ものすごく緊張していたんですが、プロの人たちが懸命に力を注いで、ひとつのものを作る、その眼差しがすごくかっこいい!と思ったんです」
その衝撃は強く心に残り、16歳で専属モデルに。現場は楽しかったのだけれど、写真に撮られるのは苦手でつい不機嫌そうな顔になってしまったらしい。思い出のページをめくりながら、どの撮影も覚えている、と話す実日子さん。 「ARATA(現・井浦新)くんは、一昨年映画で一緒になって、『オリーブ』の話で盛り上がりました。安藤(政信)くんとのデート特集は緊張しました……。後ろからこうされて(抱きかかえるポーズ)、恥ずかしかったー。この間、当時の仕事ノートが出てきたんです(笑)。撮影テーマやスタッフ方のお名前の横に、『もっと頑張りたい…』とか書いてありました」
ものづくりの一員として役に立ちたいと、きっと一生懸命だったんですね。 「『オリーブ』ってほかの現場と空気が全然違いますよね。仕事……なんでしょうけど仕事と割り切っている方は一人もいらっしゃらなかったような。カメラの前に立つのは苦手だったんですが(笑)、でも、ゆっくりと大事に育てていただいた気がします。『オリーブ』の専属じゃなかったら、いまこの仕事をしていないと思う。前に取材で『みんなで〝オリーブ〟という光をつかもうとしていた気がします』と話したことがあるんです。絶対的な〝これがオリーブ〟というものはなくて、『オリーブ』ってこうじゃない? これがかわいいんじゃない? と、懸命に手探りで世界をつくり上げていたような」
後日、実日子さんは温かなメールを送ってくれました。『オリーブ』の4年間が濃密だったこと。スタッフや編集部の様子を鮮明に覚えていることに続けて、こう綴られていました。
「10代後半にオリーブでころころしながら、 知らないうちに自分の好きの種を たくさん蒔いてもらっていました。 そして、ものを作る時の眼差しを たくさん浴びました。(中略) オリーブを卒業してから今までの間、 いろんな振り返る機会があり、その度に、あの時に蒔かれていた種から芽が出て、少しずつ育っていたことを感じます。 部活のようだったのかもしれない。 学校のようだったのかもしれない。 オリーブって? オリーブ少女って? 私にはずーっとわからないことかもしれません。 それはしあわせなことだなぁと思います。 今のこの時期に、こうして また振り返る機会をいただけて、 最近ちょっと水不足だった芽の存在を 思い出すことができました。 ちゃんとお水をあげなくちゃ! 大切にします 実日子」
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実姉の実和子さんと。専属になる前の緊張したカット。(94年1月3・18日号)
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2万7000人の応募から専属モデルに選ばれた!(94年10月18日号)
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当時22歳のARATAさんと2人でヘアアレンジの提案。(97年4月18日号)
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荒木経惟さんが特別シューティング。表情も色っぽい。(98年3月3日号)
市川実日子
1978 年、東京都生まれ。10 代よりモデルとして活躍。雑誌「Olive」の専属モデルを経て、映画『タイムレスメロディ』(’00)で長編映画デビュー。『blue』(’03)では、モスクワ国際映画祭最優秀女優賞を受賞した。2016 年の『シン・ゴジラ』では、毎日映画コンクール女優助演賞、日本アカデミー賞優秀助演女優賞を獲得。映画、ドラマ、CMで活躍するほか、NHK「ドキュメント 72 時間」などでナレーション出演もしている。テレビドラマ『アンナチュラル』(TBS)2017年1月スタート、映画『羊の木』(監督 吉田大八)2018年2月3日(土)公開。
Top photo: カシュクールドレス ¥65,000(ヤエカ | ヤエカ アパートメント ストア)/中に着たヴィンテージのブラウス ¥28,056、ヴィンテージのデニム ¥15,000(共にジャンティーク)
Photo: Jun Kato , Emiko Tennichi
Styling: Tamao Iida
Hair&Make-up: Hiromi Chinone
Text: Tomoko Kurose