吉本騒動があり。相変わらず、テレビではお笑い芸人たちが頑張っていますが、どこか素直に笑えなくなってしまった私もいました。
そんな中で「うわぁ〜、やっぱりお笑い芸人ってかっこいいわ!」と思わせてくれた一冊があります。それはヤホー漫才でお馴染み、最近はおぼん・こぼん師匠ドッキリと言えばという感じもしますが(笑)、ナイツの塙宣之さんの新刊『言い訳 関東芸人はなぜM-1で勝てないのか』(塙 宣之・著/集英社・刊)です。
この本では、自らを「お笑い脳」だと語る塙さんが、90個の質問に受け答えしながらこれまでのM-1グランプリを振り返り、関西・関東の漫才そして「お笑い芸人」を細かく解説していく内容になっています。最近の騒動で、素直に笑えなくなっているなぁ〜と思っているそこのあなたに届け〜!!
ナイツの塙さんがお笑いに目覚めた、小学4年生の話
みなさんは「お笑い芸人」と聞いて、どんな性格の人を思い浮かべますか? すごく明るくて楽しい性格と思うかもしれませんが、塙さんは幼少期にウンコを漏らしてしまったことを引きずって、人と会話することを避けていたそうです。でも『8時ダヨ!全員集合』でウンコをネタにして笑いを取っている姿をみて「ウンコで人気者になれるかもしれない」と思ったそうです。「いつか自作したウンコの歌を歌いたい」と思いながら、披露するタイミングを狙っていた時、クラスメイトからいつものようにイジられたタイミングで、塙さんは歌いだします。
「そうだせー、俺はウンコ野郎なんだぜー!」
そして立ち上がり、熱唱したのです。
〈そう〜、あれは五年前のある日〜、俺はウンコを漏らしたんだぜぇ〜、ベイベー〉
クラスは大爆笑。僕は恍惚としていました。最強の鎧を手に入れた気分でした。
(『言い訳 関東芸人はなぜM-1で勝てないのか』より引用)
すごい(笑)。
それからも少年・塙さんは転校した佐賀県でもウンコの歌で人気者になり、小学6年生の時にクイズ番組でボケ倒しているダウンタウンの松本人志さんを見て「ボケたい」と思い、2001年に大学時代の後輩である土屋伸之さんとコンビを結成。ナイツよりも先に、お兄さんがはなわとして『佐賀県』の歌でヒットをしても、それでもず〜っと変わらずにお笑いへの思いを貫けるって本当すごいことですよね。
私も小学生の卒業アルバムには「お笑い芸人になる!」と書いたくらい、吉本新喜劇に出るのが夢でした(笑)。社会人になってから、キングオブコントの予選にも出場し、NSCの資料も取り寄せましたが、結局それを仕事にすることはしませんでした。私は「お笑い芸人になりたい」と言っている自分にどこか酔っていたのかもしれない。本当になりたかったら、自然とその道に歩いていただろうと塙さんの本を読みながら思ったのでした。
M-1のこれまでとこれから
M-1は2001年に結成10年未満の漫才師を対象にスタートし、2010年で一旦区切りを迎え、2015年から結成15年未満の漫才師を対象とした大会として新たに幕を開けました。私も2001年から毎年12月はクリスマスよりM-1の方が楽しみで、大学時代はバイトを「M-1あるんで!」と早めに上がらせてもらったり、2015年から復活してからも敗者復活戦の予選から見るほどです(笑)。
ネタを見て笑いたい! というのはもちろんですが、「ここに全てをかけるんだ!」という思いが伝わってきて、M-1というお笑いの甲子園のような大会に感じてウルウルしてしまうんです(とろサーモンが優勝した時は号泣でしたw)。
そんなM-1は、お笑い芸人にとってどんな大会なのでしょうか? 実際に出場し、審査員も経験した塙さんは以下のように語られています。
落語界で新作が不当に貶められているのと同じように、M-1もナニワのしゃべくり漫才こそが漫才で、突飛な発想の関東言葉の話芸は漫才とは似て非になるものだという向きは当然あると思います。
ただ、繰り返しになりますが、言ってみれば、M-1は「吉本流」の大会です。したがって、他流派にも門戸は開きますが、ルールはうちの流儀のものでいきますというは当然だと思います。吉本はそう言っていませんが、むしろ、そう言ってもいいぐらいだと思います。
(『言い訳 関東芸人はなぜM-1で勝てないのか』より引用)
おぉ〜なるほど。アレもコレもと本文から紹介したいのですが、全てはお伝えできませんので、もっと深く読みたい方は是非『言い訳 関東芸人はなぜM-1で勝てないのか』を購入ください!!
私のようにM-1好きな方はもちろん、あの芸人さんはどうして優勝できたのかとか、この大会であの審査員はどこを見ているのかなど、M-1の解説書と言っていいくらい細かく解説されています。私は塙さんの考え方を読んでみて、これからのM-1が今まで以上に楽しみになったし、「審査員はどうしてこんな点数つけるの!?」と怒りにも似た感情も湧いてきたこともあったのですが(笑)、それも「そういうことか!」と思わせてくれるような解説もされています。あーー、もっと紹介したい! 語りたい!!(笑)
まっすぐに、ひたすらに、ネタを作り、発表するを繰り返す
そろそろまとめさせていただきますが、お笑い芸人だけでなく、自分自身にも大切にしたいなと思った部分をご紹介させていただきます。
どんなにおいしいプリンを作る知識と技術を持っていても、それを作って、食べてもらわないことには、誰もその才能に気づいてくれません。
僕はそれまで、プリンを作ったこともないのに「なんで俺がプリン作りの天才だってことに誰も気づかないのだろう」と思っていたんです。
愚かですよね。「若さは馬鹿さ」を地で行っていました。
先輩方は、なかなか芽が出ない若手に必ずと言っていいほどこうアドバイスします。とにかく一本でも多くのネタを書きなさい、と。その通りでした。
(『言い訳 関東芸人はなぜM-1で勝てないのか』より引用)
これはどんな仕事をしている人にも言えることだと思います。
文章にすると「当たり前じゃん」と思ってしまうかもしれないけど、胸に手を当てて自分が同じようにできているかと思うと「まだまだだな」なんて思うのです。
現在予選が繰り広げられているM-1ですが、12月には今年の優勝者が決まります。いろんな騒動があって、知りたくなかったテレビや業界の裏側を知ってしまいましたが、お笑い芸人の何かが変わってしまったわけではないので、素直に「お笑い」を貫きたい、笑わせたいという芸人さんのかっこよさをもう一度見たいと思います。やっぱりお笑い芸人が好きだぁ!
【書籍紹介】
言い訳 関東芸人はなぜM-1で勝てないのか
著者:塙 宣之
発行:集英社
二〇一八年、M-1審査員に抜擢された芸人が漫才を徹底解剖。M-1チャンピオンになれなかった塙だからこそ分かる歴代王者のストロングポイント、M-1必勝法とは? 「ツッコミ全盛時代」「関東芸人の強み」「フリートーク」などのトピックから「ヤホー漫才」誕生秘話まで、“絶対漫才感”の持ち主が存分に吠える。どうしてウケるのかだけを四〇年以上考え続けてきた、「笑い脳」に侵された男がたどり着いた現代漫才論とは? 漫才師の聖典とも呼ばれるDVD『紳竜の研究』に続く令和時代の漫才バイブル、ここに誕生!