1965年12月9日、午後5時少し前、アメリカ北部の上空にオレンジ色に発光する正体不明の飛行物体が出現、警察や消防に、「空を火の玉のような物体が通過した」との情報が相次いだ。
物体は、北から南にゆっくりと横切ったかと思うと、途中で南東へと進路を変えて、ペンシルバニア州ピッツバーグ南東の町ケクスバーグの森の中へと落下した。これを見た近隣住民を中心とする野次馬、地元の消防団員や新聞記者などが、いっせいに現場に駆けつけた。だが、時すでに遅く、現場は州警察や軍によって厳重に封鎖されてしまっていた。
当日の午後9時、地元ラジオ局は、「現在、公式機関による予備調査で、航空機やミサイルではなく、隕石または人工衛星が大気圏に再突入したものと推測されています。あと30分ほどで地元の軍基地から声明が出されるので、情報をお待ちください」と報じたが、続報はなかった。
しかし翌日、事態は一転する。
アメリカ政府と地元の軍当局は「ケクスバーグには何も落下していない」と声明を発表し、その後、いっさいの説明を拒否してしまったのだ。
地中に埋まったドングリ形の物体 だが、声明とは裏腹に州警察や軍にまぎれて墜落現場に分け入った者たちがいた。彼らは異様な光景を目撃し、見たままを証言している。
そのひとり自警消防団のジム・ロマンスキーは、地中に埋まった形で墜落している機体を見つけていた。それはくすんだ金色をしており、底部の直径は約3〜4メートル、長さ約5メートルで、ドングリのような形をしていた。物体の底部には金色のバンパーのようなものが取りつけられ、表面には点、四角形、または円のような模様とも文字とも見えるものが線刻されていた。ロマンスキーには、それらが古代エジプトの象形文字のようにも見えた。
後に、この目撃証言から、ロシア文字が象形文字に似ていることもあって、機体がソ連(現ロシア)製だという可能性が指摘された。というのも、同日午前3時ごろ、ロシアの人工衛星「コスモス96」が大気圏に突入しているからだ。
しかし、米空軍のUFO調査機関「プロジェクト・ブルーブック」は、この時間帯に件の衛星がケクスバーグへ墜落するのはありえない、と報告。事実、アメリカ宇宙司令部とロシア宇宙局から提供されたデータから、同衛星が同日午前3時18分にペンシルベニア州から遠く離れたカナダの大気圏に再突入したことが判明している。この事実から衛星落下説は否定されている。
また、地元に住むビル・ウィーバーも、同じく現場に先乗りしていて、『NASA』の記章をつけた白い作業服姿の男が数名、巨大な白い箱を現場から運び出すのを見ていた。さらに、翌日10日の午前1時すぎにも防水シートに覆われた積荷を載せたトラックが、森の中から猛スピードで出ていくのを近くの住民たちが目撃していたのだ。だが、トラックが走り去ると、州警察や軍も撤退し、森は何事もなかったかのように静寂を取りもどした。結局、事件は何の解決もみないまま、やがて人々の記憶から薄れていった。
事件を隠蔽した政府とNASA 時は流れて2003年10月、アメリカのケーブル・エンターテイメントグループNBCユニバーサルの会長ボニー・ハマーが記者会見で「ケクスバーグに墜落した物体がUFOと関係あるなしにかかわらず国民はすべてを知る権利がある」と主張。情報開示を求め政府機関に対して起訴する構えを表明した。
メディアにも取り上げられて論争となったが、その後も、「多くの目撃証言が報告されているにもかかわらず、NASAとアメリカ政府はいっさいの情報を公開していない」という、ハマーの痛烈な批判を受け、NASAは事件に関する36件の文書を公開した。だが真相につながるものはなく、一方のアメリカ国防総省=ペンタゴンと空軍は、かたくなに沈黙を守ったままだった。
2005年にNASAは、現場からコスモス96の部品が回収されたと再度発表したが、前述したように、これは欺瞞でしかなく焼け石に水だった。批判を浴びたNASAは、2007年10月までに再調査を約束したが、その後に〝記録文書を紛失した〟と回答し事件を隠蔽したのだ。
しかし、こうした隠蔽工作をよそに、事件の真相を追うリサーチャーたちによって新たな目撃証人たちの存在が明らかになってきた。
彼らの口から語られた、〝驚くべき新事実〟を紹介しよう。
森から聞こえた奇怪な叫び声 地元で「未解明現象調査会」を主宰しているスタン・ゴードンは、事件当初から真相を摑むべく追跡調査を続けているリサーチャーのひとりだ。彼は調査の過程で「人間のものではない奇怪な叫び声を聞いた!!」という人物の証言を報告している。
ケクスバーグから約60キロ離れた小さな町ジョンズタウンに住んでいたドン・セバスチャンは事件当日の夕方、友人とドライブ中にラジオ番組でケクスバーグの森の中に正体不明の物体が墜落したというニュースを耳にした。
好奇心旺盛なセバスチャンは「どうせ州警察に止められるだけだ」という友人を説き伏せ、ケクスバーグの森へと向かった。彼らがケクスバーグへ到着したころにはもう夜になっていたが、謎の物体が落下した現場はすぐに判明した。なぜなら周辺一帯は武装した州警察によって厳重に封鎖されていたからだ。
あまりの厳戒態勢に「これは単なる墜落事故ではない」と直感したセバスチャンは、封鎖された道路の脇からこっそりと森の中へ入った。が、数百メートルほど進んだところで足を止めることとなった。100を優に超える軍人が腰の位置にライフルを構えながら、隊列を組んで森の奥へと進んでいたからだ。
この重々しい空気にセバスチャンは、軍事訓練をしているのかとさえ錯覚したが、軍隊が森の奥へ入っていったとき、突然、恐ろしい声が森の中にこだました。突如、〝何か〟の動物のような大きな叫び声が聞こえてきたのである。
「とても人間が発したとは思えないほどの大きな叫び声でした。その声を思い出すだけで、鳥肌が立ちます。これまで一度も聞いたことがない恐ろしい声で、今でもその声が耳から離れません」
とセバスチャンは語っている。
機体内部に搭乗者がいた!! ゴードンは、UFO墜落現場で機体回収に携わった兵士のひとり、ジョエルと名乗る人物ともコンタクトしている。ジョエルもまた、驚くべき証言をしているのだ。
事件当時、現場の軍隊にさまざまな指示を出しているスーツ姿の人物がいたという。陸軍将校が、その人物に「奇妙な金属の物体が空中を飛んでいた」と報告しているのを聞き、この人物の所属や正体がとても気になったという。
仮名でゴードンの取材に応じたジョエルだったが、インタビューの途中から徐々に表情が曇り、自身の目の前で起きた、信じられないような出来事を、どのように話したらいいか深く思案している様子だった。
「スーツ姿の人物の指示で、陸軍将校がハッチを右から左に回しました。すると、中から〝シュルルル〟という何かが渦巻いているような奇妙な音が聞こえました。もしかしたらハッチは内側から開いたのかもしれません。
将校がハッチを開くと、中にゴムのような異常に長い腕が見えたんです。しかも指は2本でした。私が〝内部にもっと何かあるかもしれない〟と叫ぶと、突然、金属同士がぶつかりあうような大きな音を立てて扉が閉まってしまったのです」
ジョエルは、他にもう1本腕があったように見えたが、それ以上内部を見ることはできなかったという。彼の証言によって、墜落した機体に生きた乗組員がいたことが明らかになった。ただし、それは〝人間のものとは異なる腕〟をもつ生物だった。
(ムー2018年6月号より抜粋)
文=並木伸一郎+遠野そら
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