◆フジテレビの処分はこれだけではない
フジテレビとNPB(日本野球機構)とのトラブルは収まるどころか、ますます大きくなりそうな勢いである──。
NPBが、フジテレビから日本シリーズの取材パスを没収していたと一般紙が報じたのは10月30日のことだった。記事によれば、フジテレビは、MLB(米メジャーリーグ)のワールドシリーズ「ドジャース対ヤンキース」の独占放映権を取得。日本時間午前に生中継したが、さらに同日夜、『DeNA対ソフトバンク』の日本シリーズ生放送の時間帯に、ダイジェスト番組を放送した。これにNPBは激怒し、フジテレビの日本シリーズの取材パスを回収。事実上の出入り禁止処分を行ったという。
「日本のプロ野球中継の中で一番の人気コンテンツである日本シリーズと同時間帯に、フジテレビは再放送的な番組をぶつけたわけです。『フジテレビはNPBに喧嘩を売るつもりなのか』と、幹部は感じたようです。その報復として、今回のフジテレビに対する“日本シリーズ出禁”を決定したのだといわれています」(在京テレビ局スポーツディレクター)
ただ、騒動はこれだけで終わりとはならなかったようだ。
「NPBの怒りは収まるどころか、ますます大きくなっています。出禁処分は日本シリーズだけでは済まず、来シーズンまで続くのではないかとささやかれています。フジテレビは11月14日に行われる『プロ野球12球団合同トライアウト』を有料チャンネルで生放送する予定です。しかし、トライアウトは日本シリーズと同様に主催が球団ではなくNPBなので、こちらのパスも没収したという話があり、予定通りに放映できるかは不透明です」(スポーツ紙記者)
『合同トライアウト』とは、主にプロ野球12球団で戦力外となり、他球団での現役続行をのぞむ選手たちが、自分たちの実力をアピールする機会。’01年からNPB主催で開催されてきた。ここで他球団の目にとまれば現役続行の道が開かれるため、崖っぷちに追い込まれた選手にとって最後の生き残りをかけた場である。そこには選手だけでなく、家族の物語も存在し、その部分に特化した密着番組もあるほどだ。
◆フジテレビの回答は……
ただし、開催は今年が最後となる。近年は各球団のスカウトがファームの試合も全試合を視察しており、トライアウトでの一投一打が選手のセカンドキャリアを左右するケースはほとんどない。一定の役割を終えたとの理由で、今年限りで廃止されることが決まっている。
フジテレビはこれまでもCS放送などで生中継を行ってきた。果たして、これは事実なのか。事実だとした場合、放送は行われないのだろうか。フジテレビ広報に問い合わせたところ、
「制作の詳細についてはお答えしておりません」
との回答だった。前出のスポーツ紙記者は、「フジテレビへの処分はこれだけでは収まりそうもありません」と言うのだ。
「今年のプロ野球を締めくくる年間表彰式『NPB AWARDS』が11月26日に開催されます。新人賞や最優秀選手賞(MVP)、野球界の発展に貢献した人々の功績が発表されますが、この会場にもフジテレビは出禁となりそうなのです。
それだけではありません。年明けのキャンプ取材まで、出禁にすべきという声がNPB内で高まっていると聞きました。こうなると、フジテレビだけの問題ではなくなります。NPBとメディアの関係も問われる事態になりかねません」
ではなぜ、ここまでこじれてしまったのだろう。ある球団関係者は匿名を理由に次のように語ってくれた。
◆見せしめとして1年間くらいのスパンで
「プロ野球のテレビ放送について、NPBが、地上波の試合放送が減少したことや、大谷フィーバーなどでストレスを溜めていたことは間違いありません。今回のフジテレビの問題は1ペナルティですが、それに対して1ペナルティだけを与えるのではまた同じことを繰り返してしまう。
今後、メディアの統制をしっかり取るためにも『見せしめとして1ペナルティに対して1年間くらいのスパンでペナルティを与えるべき』という声も上がっていると聞きました。とはいえ、大手メディアを締め出してしまうのは、NPBにとっても大きなマイナス。どこかで手打ちをするとは思いますが、年明けまで引っ張る可能性は極めて高いでしょう」
来季はドジャースとカブスが来日して、東京ドームで開幕戦を行う。ド軍が東京ドームで試合をするのはセ・パ開幕戦より10日早く、3月18、19日だが、アメリカに戻ってからの本土開幕戦(日本時間)はくしくも日米同日の3月28日。フジテレビに限らず、各局が大谷一辺倒になり、セ・パ開幕戦を取り扱う時間が少なくなるのは目に見えている。
NPBとフジテレビの騒動は、果たしてそれまでに収まるのだろうか──。