視聴率下落が騒ぎ立てられている『ONE DAY~聖夜のから騒ぎ~』(フジテレビ系)。最大の問題は、ストーリーの核となる殺人事件の “引き” が弱いことではないだろうか。
嵐・二宮和也、中谷美紀、大沢たかおという大物たちによるトリプル主演作ということで、鳴り物入りでスタートした月9ドラマ。クリスマスイブのたった1日の出来事を1クールかけて描いていき、3人の主人公の物語が交錯していくという独特の構成も話題を集めていた。
二宮が演じるのは、記憶喪失で目覚めるとそこに銃殺死体が横たわっており、殺人容疑をかけられ、警察に追われる逃亡犯・勝呂寺誠司役。
中谷が演じるのは、自身で立ち上げた報道番組の終了を告げられ、最後に誠司の事件を特集しようと躍起になる地方テレビ局のキャスター・倉内桔梗役。
大沢が演じるのは、店に誠司が侵入して来たことで秘伝のデミグラスソースの寸胴鍋を倒してしまい、てんやわんやする老舗レストランのシェフ・立葵時生役。
誠司がかかわる殺人事件の真相が本作最大の謎となっており、この事件にあとの2人の主人公の物語もどんどん巻き込まれていくという構図になっている。
■被害者が裏社会の悪人で感情移入も同情もできない
だが現状、視聴者からは酷評の嵐で数字もついてきていない。
本作の世帯平均視聴率(ビデオリサーチ調べ/関東地区)は、第1話から先週放送の第6話まで7.8%、5.5%、5.3%、5.6%、4.8%、4.6%と推移。
初回から7%台とかんばしくなかったが、第2話で一気に5%台にまで急落し、その後、復調するどころかさらに下落して4%台。いくらリアルタイム視聴を計測する視聴率というデータが、絶対的な指標ではなくなっていると言っても、フジの看板枠でこの下落傾向に歯止めがかからないのはヤバすぎる。
TVerのお気に入り登録数も74.1万(11月18日現在)と大台の100万にはほど遠く、見逃し配信でも振るわない。
そのため、ネットニュースやSNSで、『ONE DAY』が大コケしている原因が分析されている。トリプル主人公のため場面転換が多く、テンポが悪くなったり話がわかりにくかったりする点や、ストーリーが遅々として進んでいないといった点など、納得できる意見も多いが、筆者は核となる殺人事件の “引き” が弱いことが最大の原因だと感じている。
誠司が容疑者となっている殺人事件の被害者は、「アネモネ」という犯罪組織のメンバーで、組織を裏切って警察に情報を流していたと目されている男。人命を軽視するわけではないが、殺されても仕方のないような設定のキャラだったわけだ。さらにいうと、その被害者を演じたのはほぼ無名の俳優だった。
裏社会の悪人なので多くの視聴者からすれば別世界の出来事すぎて、被害者に感情移入も同情もしづらい。誤解を恐れずに言うなら、視聴者からすると殺されようが生きていようがどっちでもいいキャラなのである。
このように、どうでもいいキャラが殺されたという事件を中心に物語が進んでいるので、いまいち引き込まれていかないのではないか。
■『VIVANT』や『マイファミリー』と比較すると
ここからは『ONE DAY』と類似点のあるドラマと比較し、原因を掘り下げていこう。
まず、今年1月期放送の井上真央と佐藤健の共演作『100万回 言えばよかった』(TBS系)。本作の舞台は『ONE DAY』と同じく横浜で、2人のラブストーリーと殺人事件を追うミステリー要素が絡み合った作品だった。
ただ、『100万回~』で殺されたのは佐藤演じる恋人。幽霊になって登場するのだが、殺される前の記憶がなくなっているため、井上演じる主人公が恋人の幽霊とともに、恋人が殺害された事件の真相に迫っていくストーリーというわけだ。
『ONE DAY』と『100万回~』、どちらも殺人事件が物語の核になっているが、雲泥の差で後者のほうが事件の真相が気になるのは言うまでもない。
昨年4月期に二宮主演で放送された『マイファミリー』(TBS系)は、核となるのは殺人事件ではなく誘拐事件なのだが、事件の真相を探るミステリー作品という点は同じ。
誘拐されるのは二宮演じる主人公の娘や親友の娘だったため、子を持つ大人世代の視聴者は感情移入して、劇中の娘たちの安否が気になってハラハラしたことだろう。『ONE DAY』のような裏社会の殺人事件よりも、家族が誘拐される展開のほうが没入しやすかったに違いない。
また、今年7月期放送で社会現象を巻き起こした『VIVANT』(TBS系)にも二宮は主要キャラで出演していたが、『VIVANT』とも『ONE DAY』は大きな違いがある。
『VIVANT』は物語の発端となった140億円の誤送金事件が第4話で解決。さらに第4話終盤で衝撃事実が明かされ、第5話以降はまったく予想のつかない次なるステージに進んだ。
しかし『ONE DAY』は、被害者に感情移入できない殺人事件の真相を引っ張り続け、“衝撃” と呼べるほどの想定外の展開や新事実もほとんどない。『VIVANT』は中盤回で特大のカタルシスを感じられたが、『ONE DAY』はだらだらと話を進めている印象は拭えない。
そろそろ『VIVANT』第4話級のオモシロ展開を持ってこないと、終盤での起死回生も不可能になってしまうだろう。今夜放送の『ONE DAY』第7話に期待したい。
堺屋大地
恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。『日刊SPA!』にて恋愛コラムを連載中。ほかに『現代ビジネス』『文春オンライン』『集英社オンライン』『女子SPA!』などにコラムを寄稿
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