ワイドショーや情報番組で欠かせない存在となっているコメンテーター。最近は専門分野だけでなく、一般の視聴者目線で、さまざまな問題について意見を求められることが多く、ときには上から目線や的外れの発言が「こいつ何様なの?」「素人が何、言ってるの」と、炎上することもある。そんなコメンテーターたちだが、あれは素顔なのか、テレビ用の“演技”なのか……。
今回、本誌は大手広告代理店が、民放各局のプロデューサーやディレクターなど、テレビ業界で働くスタッフ計200名に「本当に性格がいいコメンテーター」を尋ねたアンケート結果を入手。これを見ると、「なぜ、この人が起用されているの?」という視聴者の素朴な疑問が氷解するかもしれない。
■各局で語られている「じつはいい人伝説」
栄えある1位は、パトリック・ハーラン。『情報ライブ ミヤネ屋』(読売テレビ・日本テレビ系)をはじめ、多くの番組に出演する売れっ子コメンテーターだ。
選ばれた理由は「とにかく物知り。番組作りにもアドバイスしてくれるので、本当に助かります」「局内のエレベーターで、さりげなくレディファーストをしてくれます。アメリカ人らしいところがあって、すてきです」「単に『いい人』の発言だけでなく、ときには厳しいこともビシッと言ってくれる。番組には大事な存在」「アメリカの政治や社会問題までエキスパートなのはもちろん、ダジャレやジョークの質も高い」「ハーバード大卒のインテリな人ってだけでなく、芸人としてもコメントのオチが優秀」。各局から幅広く高ポイントを得て、文句なしの1位に。
2位は、元女子プロレスラーの“鬼嫁”北斗晶。「スタッフ思いで、いつも『顔色悪いぞ、ちゃんと飯食ってるか?』と声をかけてくれます。番組出演後には差し入れが届くことも」「徹夜続きで着替えてなかったとき『お前、きったない格好だな』と言われ、次の日『たまたま買ったんだけど、これ着なよ』と、服をいただきました」。ぶっきらぼうな物言いとは裏腹に「北斗晶いい人伝説」は、各局で語られているとか。
3位は松岡修造。「事前の打ち合わせはかなり真面目。それでいて本番では、きっちり弾けてくれる」「スポーツマンらしく、つねに礼儀正しい。年下のスタッフにも態度は変わらない」「初めて担当をさせてもらったとき、緊張でガチガチだったんですが『はい、深呼吸!』と優しく声をかけてくれた」。出演はテレビ朝日に偏っているのに、この高得点は「すごい」のひと言。
4位は『めざまし8』(フジテレビ系)などでおなじみのカズレーザー。「自己主張が強い人だと思っていたら、共演者やスタッフをすごく立ててくれる。ギャップがすごい」「私が収録中に先輩ディレクターに怒られていたら『そんな言い方はないんじゃない?』と助け船を出してくれた」。いまや番組の司会までこなすマルチぶり。「いい人」効果で、バラエティだけでなく、コメンテーターとしてさらなる活躍が期待される。
5位は池上彰。「以前ほど理屈っぽいところがなく、最近はよく冗談も言うようになりました」「かつては怖い感じでしたが、いまはスタッフともファミリー感のようなものが生まれています。とくに女性スタッフにはとことん優しい」。“堅物”との噂もあったが、実際に接すると、そのギャップに驚かされるようだ。
■あえて“炎上発言”のブレない姿勢に共感
6位は古市憲寿。「最初はかなり壁を感じましたが、必要以上の関係を求めなければ、意外とつき合いやすいし、だんだんおもしろさがわかるようになりました」「中居正広さんが病気になったとき、本気で心配していて、、人間味がある優しい人だと思った」。「嫌いなコメンテーター」の常連でもあるが、これだけ多くの番組に起用される理由は、いまのご時世にあった、近づきすぎない立ち居振舞いなのかも。
7位は八代英輝。数多い「弁護士コメンテーター」ではトップの評価だ。「テレビに出始めのころは堅物だったけど、いまではダジャレも連発するほどお茶目な人」「飛行機の話になった途端、子どもに戻った感じでしゃべりまくります。ギャップがおもしろい」。
8位はカンニング竹山。「これを言うと炎上するな、ということがわかっていて、それでも自分の役割を果たすところがすごい」「ほかの芸人ならギャグで逃げそうなところでも、真摯にコメントする姿勢は尊敬します」。『スッキリ』(日本テレビ系)で、オードリー・春日俊彰が批判を浴びた「ペンギン池騒動」でも「お笑いの古典芸能」と擁護して炎上したが、ブレない姿勢に共感するスタッフは多い。
9位は「A.B.C-Z」の河合郁人。『ゴゴスマ~GOGO!Smile!~」(CBC・TBS系)の金曜レギュラーだ。「ジャニーズだと身構えていたら、一般的な感覚を持っている人だとわかって安心しました」「失礼ながら、ジャニーズタレント的なオーラをあまり感じず、話しやすい」。ちなみに、関西や東海地区のローカル番組のレギュラーも多数、務めている。
10位は『ゴゴスマ』火曜レギュラーの岡田圭右。「堅苦しい話題でも、岡田さんのギャグで一気に場の空気が変わります」「正直いうと、本番よりも番組前のリハーサルがいちばんおもしろい。でも、そこが岡田さんらしくていい」。
11位はデーブ・スペクター。「長らくテレビに携わっているけど、スタッフから悪評を聞いたことがない」「生放送の本番前に、ぶっこむダジャレを先に言ってしまうから本番ではウケない(苦笑)」。
14位には、10代ながら鈴木福がランクイン。「すごく謙虚で勉強熱心。小さいときから超売れっ子なのに、スタジオの入りや出に、きちんと挨拶をしている」。
■謹慎後に丸くなって支持が不支持を上回る
15位には、元NHK解説委員の岩田明子。「『どんなことでも指摘してください』と、民放に慣れようとしている姿に感服しました」「番組終わりに『今日の私、どうだった?』と、茶目っ気たっぷりに聞いてきた(笑)」。最近は、やわらかい話題も意外にイケると評判で、まさに赤丸急上昇中だ。
20位には、元自民党衆院議員の金子恵美。「すらっとしていて衣装もすてき。よく話しかけてくれるし、同じ女性としてあこがれる」「お子さんの話をしているときの笑顔が本当にすてきです」。
21位には、慶應義塾大学卒業で、モデルとしても活躍するトラウデン直美。「一生懸命、番組になじもうとしている姿が健気」「打合せのとき、ファッションやグルメの話で盛り上がると、スマホの写真をいろいろ見せて教えてくれた」。
23位には、テレビ朝日社員の玉川徹。「番組復帰してから、スタッフへの当たりが気味悪いくらいに優しくなりました」「以前は見向きもしなかったスタッフの仕事も手伝ってくれます」。玉川に関しては、テレ朝関係者からの得票のみだが、国葬に関する発言で2022年秋に出勤停止処分を受けたことが影響して、丸くなったのか、今回は支持が不支持を上回る結果となった。
このアンケートに協力したプロデューサーは、最近の起用事情をこう語る。
「現在、コメンテーターに求められるものは、専門性よりも、一般視聴者の目線で語れる話術です。かつては、過激な発言がおもしろがられる時代もありましたが、いまは問題発言や誤認があれば、すぐにSNSで炎上、最悪の場合、スポンサーの降板ということまでありえます。
ただ、あまりに差しさわりのない発言ばかりでも、視聴者は物足りなさを感じてしまい、ときには鋭い発言も必要です。そういった意味で、パックンやカズレーザーさん、竹山さんのような“地頭がいい”芸人コメンテーターが必要とされるわけです。彼らはただ単に、性格がいいだけで使われているわけではないんです」
発言には気を遣いつつ、ときには炎上覚悟でビシッと言うことが求められる。コメンテーターは、誤解されやすい職業なのだ。
外部リンク