10月11日に放送された、BS-TBSの『報道1930』の番組内容がいまだに波紋を呼んでいる。
この日の放送では、イスラエル軍と、パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム主義組織「ハマス」との戦闘状態を取り上げたが、そこにコメンテーターとして起用された人物が問題視されているのだ。
「登場したのは、重信メイ氏でした。レバノン・ベイルート生まれで、中東情勢に詳しいジャーナリストと番組内で紹介されました。 しかし、彼女の母親が2022年5月に出所した元日本赤軍のリーダー・重信房子氏であったことは、いっさいふれられなかったのです。
房子氏が率いた日本赤軍は、パレスチナ人グループとともに、イスラエルのテルアビブ国際空港で無差別テロ事件を起こしており、メイ氏の父もパレスチナ人活動家。
メイ氏のコメンテーター起用は、あまりにも偏りすぎているのではないかという意見が続出する事態になりました」(外交担当記者)
メイ氏がテロ事件を起こしたわけではないので、母と娘の人格を同一視することに疑問があがったのは事実だ。
しかし、11日の放送で、メイ氏は「パレスチナ人はなんで武器を持っていることがいけないの?」と冒頭から疑問を呈したうえで、「毎日のようにいじめられている子が初めてやり返したら、それに対して焦点が当たった状況」と、現在の戦闘状態について語り、「パレスチナの場合は “抵抗” ではなく、テロになってしまうことが問題」と話していた。
要は、コメントがパレスチナを全面擁護することに終始していたのだ。
「この番組がきっかけで、国際問題に発展しかねない動きが実際に起きてしまいました」と、前出の記者が語る。事態が動いたのは、10月13日のことだ。
イスラエルのギラッド・コーヘン駐日大使が、日本外国特派員協会で記者会見を開いた。コーヘン大使は、メイ氏が出演した『報道1930』の画面を印刷された紙を手にし、「これはなんだ! 彼女は50年前に27~28人のイスラエル人を殺害したことを非常に誇りに思っている殺人犯の娘だ」「日本のテレビで、彼女に発言する場を与えているのはひどい。本当に残念」と糾弾したのだ。
「コーヘン大使はかなりの剣幕で、激怒と呼んでいい状態でした。会見冒頭では、ハマスの殺戮行為を強く糾弾していましたが、それを上回っていたほどです」(前出・記者)
テロリスト側に加担してしまったTBSの不祥事として、思い出されるのは「TBSビデオ問題」だ。
1989年10月、ワイドショー『3時にあいましょう』が、「取材源秘匿」という原則を破り、オウム真理教批判の急先鋒だった坂本堤弁護士らのインタビュー映像を教団側に見せた。このことが、同年11月4日の「坂本弁護士一家殺害事件」につながったと批難された。
当初はこの問題を公表しなかったTBSだったが、1996年に発覚。 この直後、故・筑紫哲也氏が、メインキャスターを務めていた『筑紫哲也 NEWS23』の放送で、「TBSは今日、死んだに等しいと思います」と語り、こう諫言した。
「過ちを犯したということもさることながら、その過ちに対して、どこまで真っ正面から対応できるか。つまり、その後の処理の仕方というのが、ほとんど死活にかかわるということをこれまでも申し上げてきました。その点でもTBSは過ちを犯したと私は思います」
「自分たちがどういうことを考え、何をやっているのかということを、もう少し公開すると言いますか、きちんと説明することも、ひとつの勤めだろうと思います」
今回のイスラエル・パレスチナ情勢のコメンテーターとして、メイ氏を起用したことがあまりに偏っていると批難が相次いでいるTBS。
筑紫氏の言葉を借りるなら、「考え」を明らかにするのか、「処理」をしっかりするのか、いずれにせよ責任は果たさなければならないだろう。
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