ドロドロした人間関係を描くのにうってつけの、面白そうな設定なのに……もったいない。守りに入ったキャスティングと意外性のない展開が裏目に出ているように感じる。
先週、第2話が放送された土屋太鳳主演の『やんごとなき一族』(フジテレビ系)。庶民である主人公が上流社会の超セレブ一族に嫁ぐことになり、骨肉の争いに身を投じていく「アフター・シンデレラ・ストーリー」だ。
大衆食堂の看板娘である佐都(土屋)は、江戸時代から400年以上続く由緒正しき名家・深山家の次男である健太(松下洸平)と結婚。
しかし、格差違いの結婚を猛反対する深山家当主である義父から追い出しを画策されたり、次期女主人の座を奪われた長男の嫁から執拗なイジメを受けたりと、深山家はまさに現代の伏魔殿だった――。
世帯平均視聴率(※ビデオリサーチ調べ/関東地区)は、先々週放送の第1話が7.3%と低調スタートで、しかもそこから離脱者が出たようで、先週放送の第2話では6.1%に下がっている。
■役者が従来のイメージどおりすぎて食傷気味
いまいち視聴者を獲得できてない理由はいくつか考えられる。
まず、キャスティングがその役者のパブリックイメージどおりすぎて保守的だからではないだろうか。
主人公の佐都は明るくハツラツとした女性で、芯が強く曲がったことが嫌いという聖人キャラ。タレントとして清廉潔白なブランディングをしてきた土屋が、いかにもやりそうな役どころだ。
夫の健太は性格がひん曲がった家族ばかりの超セレブ家庭で育ったものの、真の優しさを持っており、愛する佐都を必死に守ってくれる常識人キャラ。こちらも松下がタレントとして築き上げてきた誠実、純朴、ジェントルマンといった従来のイメージを損なわない。
また、選民意識が強く独裁的で、時代錯誤なパワハラ、モラハラ三昧の深山家当主を演じているのは石橋凌。彼がこれまで主人公に敵対する首領(ドン)、フィクサー、ボスといった役どころを演じてきたのを何度観たことか。
ほかに、奔放かつ楽天家な性格の深山家三男を演じているのはイケメン俳優・渡邊圭祐。彼はちょうど1年前に放送されていた『恋はDeepに』(日本テレビ系)でも、超セレブ家族の楽天的な三男という今作とめちゃくちゃ似た役柄を演じていた。
ちなみに第2話に登場した義父の愛人役は小沢真珠だったが、お約束の昼ドラ的演技で高慢かつ不遜なキャラを作り上げていた。
このように主要キャラたちが既視感だらけのキャスティングなので、始まったばかりの新ドラマなのに食傷気味な雰囲気が漂っているのである。
■聖人キャラのストレートな正義感はひねりがない
このドラマは庶民のヒロインが金持ち一族のなかに飛び込んで、自らの存在を認めさせていく物語とも言える。
つまり、その認めさせていくプロセスが見どころであり、視聴者に爽快感などを味わわせる大事なシーンというわけだ。だがその展開があまりに安直なのである。
たとえば第1話で、健太の祖母の先代女主人(倍賞美津子)に佐都が初対面するシーン。佐都は池で溺れていた子供を助けていたため出迎えに遅れてしまい、祖母にびしょ濡れで挨拶することに。
祖母からの「英雄気取りかしら?」と威圧的な問いかけに、佐都は屈せずに子供を助けるのは当然のことと反論する。その佐都の気丈な態度を見て、「おもしろい子が来たもんだわ」とボソッとつぶやく。まだまだ全面的に認められたわけではないが、祖母から一目置かれる存在となったのだ。
第2話では、一家公認となっている義父の愛人の存在を許せない佐都が、義母(木村多江)が悲しんでいるのを察し、家族の前で義父に「愛人のところへは行かないでください!」と嘆願。
また深山家のパーティーに平然と現れる愛人に、「今日という日にあなたはふさわしくありません。どうぞお引き取りください」と追い返す。義母はそんな佐都の行動を表向きはとがめるものの、小声で「彼女(愛人)のあの顔、胸がすぅ~っとした」と伝え、仲間意識が芽生えるのだった。
……と、このような展開で少しずつ深山家のなかで認められていく佐都。
けれどこの第1話と第2話の振る舞い、うがった見方をすると、聖人キャラのストレートな正義感からの行動でしかなく、ひねりがない。正論ゴリ押しなだけで意外性が希薄なため、膝を打つような面白さを感じなかったのだ。
直面した問題を正論や根性論だけで乗り越えていくのではなく、多少のズル賢さがあっても独創的な方法で解決していくほうが、エンタメ性が増すと思うのだが……。
今夜放送の第3話では、驚きと爽快感のある問題解決に期待したい。
●堺屋大地
恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。これまで『女子SPA!』『スゴ得』『IN LIFE』などで恋愛コラムを連載。現在は『文春オンライン』『週刊女性PRIME』『日刊SPA!』などに寄稿中
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